見出し画像

独裁国家 "The President"

音が印象に残る映画だった 非民主国家におぼえる漠然とした感情の波
イデオロギーの消失 上がる炎と啼く羊
剥ぎ取った衣服が温める皮膚の温度 国家の転覆により国外逃亡を図って

圧倒的多数が激情に流され 暴動も無理のない状況下で
それでもどこかで負の連鎖を断ち切らなければ 何の意味もない
復讐の上に成り立つ民主国家に どれほどの価値があるか
残虐極まりないことを思い付くのも 正道に戻そうと声を上げるのも
やはり人間なのだ どんなところにも愛の視点や魂が存在している

人はそんなに強くない 愛により耐えられた過酷な歳月
待つ身のつらさ 個々人や状況次第で月日の伸び縮みは起こり得る
責め立てられもしない 音楽が 歌が 踊りが
どうしようもない時にも 領域を超える瞬間にもあるよう

全てを波がさらってゆき 焚き火は燃え続ける 生命の火も
私たちは よく知らない主義や思想を持つ国家や民族に対し
固定化した視点を持つ傾向にあるけれど 多数派の中にあって対話を続け
考えをぶつけ合い 融和を図ろうとする少数派の姿が常にあることは
大いなる希望 自由や平等の根幹 魂の信じるところに正直であること
あらゆるものへの懐疑的な眼差し 批判精神を絶やしてはならない
自由や公平さも 視点を変えれば違って映る 
一点の曇りなき真実などありはしなくても 暴力は何の解決にもなり得ない

人から尊厳や生きる意味 未来を奪い去る行為が
直接的にも関節的にもあって 冒頭のふたりの余りにシンボリックな行動に
言葉や感情が 付き従うことを只々拒む
息子をもつひとが懐かしく眺めるだろう 幼い頬に伝う涙が
あってはならないこと おこしてしまった事態の深さを幾度も蘇らせる
首に掛けられた輪が 永遠に繰り返されることのないよう
抱えてくれる存在の尊さが 耳に入り骨に染み込んでゆく音のすべてが
平和に満ちたものへと変わりゆくよう 海鳥の羽ばたきに託して
私も動く あなたも皆も 求め続ける限り前進は止まない

"独裁者と小さな孫(The President)"('14・ジョージア、英、仏、独)

Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛