見出し画像

雨水獺祭

水の音を聴く 春の胎動 深くから湧き上がる鼓動に
動き出せば廻る舞台 みずの辿る足跡
 
蝋梅が匂ひ来て白もほころび ごつごつと頑なさを纏った先に紅がふふむ
南方の緋寒桜のあでやかさ 樹下より仰ぐ人々の歓声
雪をあそぶ子らと犬 順に舞ひ落ちはらはらと瞬間を濡らして
はっはと先を急ぐ眼は一層輝きをる 水の温み
背筋の伸び うつろひの確かなリズム

新年が明け 長らく忘れていた感覚が燻り
火種は残らなかった筈 ちいさく慎ましくの文化圏
環境により 知らず知らずのうちにはたらく抑圧
春の呼び声に 出たがっているものが勢力を増して

大きなものなしに此処まで来てゐた 強力な磁場に彷徨う標
狂える魂もすこやかなる眠りも 奥へ奥へと追いやり導き出した理由
覆い隠せぬ渇きは 最早うしろめたさを必要とはしない
飼い馴らされることに怯えず甘んじず 牙を剥け
空が ひらいた  覗く光が捉える中へ

(210212 大潮)


Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛