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障害の出口

限られた集団にあっては 遅かれ早かれ行き詰まりを感じるであろうこと
広く拠点を持った団体で働くことが 移動を伴い合うのかなと思った職選び
勤め出すと閉鎖空間に息が詰まり 休憩に入ると戸外へ出た
何故だか出口を探すよう 機材を着けて海に潜った時の感覚に近いか
アルバイトの頃も近くの水辺や神社まで歩き 横溢するエネルギーに触れ
体と心をフレッシュにして 午後の闘いに備える
建物自体に隙間があるところは快適 一歩外に出ればすぐに光は届き
海が見えるオフィスは 魔法にかかったような幸福
もうすこし時がゆったり流れる場であったなら 尚素晴らしかったろう

身体や知的障害を持つ人 高齢者や障害のある子ない子と交わっていた頃
近しい先輩はよく おじいちゃんおばあちゃんが可愛くてねぇと
女神のようやさしく微笑んだ 普段から物腰柔らかく周囲を和らげる存在
自分にその感覚は常にはないなと気付いたのが 福祉には進まず
ボランティアベースでの関わりを求めた ひとつの理由かもしれない
おおきな愛で見守り添うことが 最も必要だと感じてきた
そしてどうしたら 彼らのスペシャルな力をいかんなく発揮できる場が
獲得できるか 当時は考えてもぼわっと広がるだけに留まり
障害を持つひとと関わるうち 言葉での線引きはどんどんあやふやになった
もともと人の間に境界などなく 知らぬ内に引いてしまったものなのだろう

診断がついているわけでなく 分類されることのないひとたち
日常生活に他者の手を必要とせず 何か抱えていても「健常」で通り
気を掛ける対象は あらゆる場所にあると感じたから
会社組織の立場から働きかけようと思った 正当や平等を謳っても
どこかへの配慮はあり 不都合さや説明の付かないものを
覆い隠す動きはどこにも生ずる トータルのバランスを維持するような
波や歪みを見たかったのかもしれない たとえ自分に見抜く眼などなくとも

やまゆり園事件に接するたびに感じる 抉られるような痛み
先頃の新聞インタヴュー記事に掲載された 施設職員の声は
誰もが そうなる可能性のあった余地に思い至らせ
被告の行動理解に至らぬまま判決は下されたが 感情の移ろいを想起させて
施設で営まれているのもひとの暮らし どこの組織も変わらない
穏やかで朗らかな時ばかりではなく ドラスティックな急転直下も
ドロドロも 皆が笑顔の渦に包まれる瞬間もある
輝けるドラマはいづこにも 熱量は等しい

支援学級で学ぶ子どもさんの絵に はっと心を摑まれた昨夏
当時自分が考えていたことが すべて目の前の一枚に凝縮されていた
一語すら介さず ぱっと意志を伝え惹きつける力
色彩も手触りもとても素敵だった 木工作品や染物など彼らが作ったものが
語りかけてくる波動の大きさに 感じ入ることは多く
アール・ブリュット等アートを通して にんげん同士のつながりが深まれば
より理解し合える平和な世の中になっていくだろうなと 思い続けている

暫く前に デザイナーの友人たちが講師として来てくれたワークショップ
利用者さんのアート活動を支えたい 広げたい思いを持つ人々が集まり
「業務に埋没すると社会が見えなくなる」「地域からの理解不足や偏見」
といった多くの面々が抱く思いも 昇華できる方向性が拓けた

   “「福祉×デザイン」とは、
     人々(みんな)が幸せでいられることを計画すること”
                         ――HUMORABO

継続型就労支援作業所も A型B型と名称がむずかしい
利用者さんの素朴さやぴかっとした笑顔は 出逢う人々に一つずつ種を蒔く
レバーだと押してしまうが 紐を付けることで引っ張れるようになったりと
ちょっとした工夫が “できない”から“できる”への変容を促す
誰かの笑顔が増えると 周囲の表情や対応にも変化が生まれ
“福祉施設が、社会にとってどういう場所でありたいか”
“障害を持つ人々と何をしたいか”探り続け 地域と関わり合っていく環境を
応援したい 自分ができることと福祉との融合の活発化を追いたい

*HUMORABO(ユーモラボ)(shop)→ https://humorabo.base.ec/
 RINNE bar(リンネ・バー)→ https://www.rinne.earth/
 ドリンクとお喋りとアップサイクル手作業を楽しめる集い場。
 布マスク(鼻や喉の湿度を保てる)作りにもトライできます🍂
*Photo: NOZOMI PAPER Factory → http://www.nozomipaperfactory.com/

Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛