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怒りの末路

怒りの火にかけられた心が泡を立てて、悲しみの雫を飛ばし、濃度の高い憤怒と少しの復讐心が残る。そうして煮詰められできた苦の産物は、まるで鉛の味をした餅。口内に広がる嫌な臭いと、喉につかえて窒息しそうなほどに苦しく攻撃的である様。吐き出せるのならどんなに楽だろうか。ようやくのみ込めたと思った矢先、お腹にたまる不快の個物はベートーヴェンの「熱情」をお供に踊り出す。はやく分解されてこの身体からいなくなってくれ、と強く思う。しかし、この不快な味は人間の味を知った熊のように心芯に深く浸透し、酸素に、そして水となる。哀しき日常の完成である。

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