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自由は可能性

自由は少なかったけど、右も左も分からない私に進むべき道をはっきりと提示してくれていたあの頃が恋しい。今では何もかもが自分次第で、山を登ることも、谷を下ることもできる。何だってできてしまう。無限の広がりをもった自由の海で、ただただ溺れている。それは苦手だからではなく、きっと泳ぎ方を知らないから。自由を味方につけると、道はいくつでも見えてくる。それに道をつくることだって出来るだろう。自由万歳!

    • 怒りの末路

      怒りの火にかけられた心が泡を立てて、悲しみの雫を飛ばし、濃度の高い憤怒と少しの復讐心が残る。そうして煮詰められできた苦の産物は、まるで鉛の味をした餅。口内に広がる嫌な臭いと、喉につかえて窒息しそうなほどに苦しく攻撃的である様。吐き出せるのならどんなに楽だろうか。ようやくのみ込めたと思った矢先、お腹にたまる不快の個物はベートーヴェンの「熱情」をお供に踊り出す。はやく分解されてこの身体からいなくなってくれ、と強く思う。しかし、この不快な味は人間の味を知った熊のように心芯に深く浸透

      • 雫と露

        「りかちゃんはほんと可愛いねぇ」 愛猫家が飼い猫をみるような眼で、私と対角線の位置に座る男の子が言った。その上座に座っている女の子が、今流行りのy2kファッションを身に纏っていることから、きっと私と同じくらいの歳なんだろう。盗み聞き(というほどではないが)に若干の後ろめたさを感じて、「座席数はざっと数えて13、席間は横向きで通るのがやっとな40cmのこじんまりとした喫茶店だ、仕方ないじゃないか。」と脳内裁判官に正当化してみせる。気だるげに相槌を打つ様子から、「可愛い」という言

        • 最近忙しなく日常を過ごしているからか、今年の始めに「一緒に走ろうね」と約束したカレンダーくんに完全に置いていかれてしまっていたことに、今気がついた。私はまだ、人々が色めき立つはじまりと終わりの季節に身を置いていたいのに、もう5月半ばが鼻の先に見えている。あっという間に紫陽花の見頃を迎えて、いざのんびりくつろごうと思った頃には耳をつんざく蝉の求愛活動とかいう叫びが...時は待ってくれないらしい。

        自由は可能性