レビュー『独立記念日』 原田マハ 著
先日、有給をいただいて10日間ほど西へ出向きました。
そのお供にとブックオフでジャケ買いしたのが、原田マハさんの「独立記念日」。
その時の私を褒めてあげたくなるくらい、素敵な本との出会いになりました。
原田マハさんの著書を読むのはまだ一冊めですが、すでに大好き!
読んだ時に感じた驚きや清々しさ、温かさ、いろんな気持ちが混ざった感情を忘れたくなくて、僭越ながらレビューさせていただくことにしました。
どんな作品?
収録されている24編はすべて、10分あれば読み終わるくらいの短編。
主人公は、さまざまなバックグラウンドをもつ幅広い年代の女性たち。
彼女たちが人生のリスタートをきる瞬間が描かれています。
どれも深く温かで、ときどき清々しさとともに涙を流すような物語。
例えるなら、心の中の暗い場所に蛍が1匹ずつやってきて、小さく明かりを灯してくれるような感覚です。
この作品が伝えてくれたこと
この本が教えてくれるいちばんのメッセージは、
「自由とは、いかに独立するか」だということ。
日々のなかで、漠然と不自由さや閉塞感を覚えることはありませんか?
でも、それは当たり前だと認めてしまっているから、敢えてその原因を取り除こうという考えには至らなかったり...
自由と独立が、イコール。
そう考えると、漠然とした「自由」を探すよりも、生活を自分のものにするために具体的にできることがあるような気がしてきました。
独立と言っても、一人暮らしを始めるとか会社を立ち上げるとか、大きくて物理的なものではなく
例えば会話の中の小さなフレーズから、「あ、そうだよな」と気づきを得るだけでも心持ちは大きく変化するのではないでしょうか。
当たり前だと思っていることや、なんとなくスルーしてきたことを再認識することが、肩の荷を下ろすための近道かもしれない..と
この短編小説を読んで気付くことができました。
日々、わたしたちは、再スタートを繰り返しているのですね。
その瞬間は気づかないけど、あとから振り返ってみると、
あの時のあの瞬間が、わたしにとってターニングポイントだったな、と心当たることがあると思うのです。
そういう小さなポイントを繰り返すことで、わたしたちは日々変化して、ときに寂しさを感じるくらい、おとなになっていくんだろうな..と思います。
いつもわたしは自分の中の悩みと目の前の日々に精一杯ですが、自分みたいな人たちが世界には沢山いて、
この瞬間にだって、だれかにとってささやかな、後から思い返せば運命的な出来事が起こっている。
そうして実感するのは、
この広い世界をつくるのは、人と人との繋がりだということです。
大自然の中で満点の星空を見上げたときみたいに、自分のことがちっぽけに思えて解放された気もちが湧いてきます。
まとめ
「楽しみじゃない?一から始められるなんて。すごいじゃない?誰にも頼らないなんて」
「空っぽの時間」という一編で、
それまで自慢だった会社が破たんし、間一髪で解雇を免れた主人公が、似た境遇の元同期に伝えた言葉です。
独立、のかたちはひとりひとり違うし、正解はありません。
でも、自分にとっていちばん心地よい答えを、つくりあげることはできる。
凛々しく、たくましくて、ゆるやかに自分と共存していく、自分らしい独立のかたちを、日々紡いでいけたらと思います。
終わりに
12月も折り返しましたね。
来年はどんな世界でどんな自分になれるんだろう?
みんなで笑える年になりますように。
最後に、はっとさせられた一節を引用してこのレビューを終わりにします。
「ひなたの道を歩かなくちゃ、なんだか人生もったいない。」
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