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非日常はすぐそこ

夏真っ盛りの8月、土曜日の昼。
ある人に会いに、赤坂へ。

私にとっては、大人の街。
1人で来るのは、これが初めて。

緊張しつつも浮き足立った気持ちで
教えてもらったお店に着くと、closedの文字。

なぜだろう?約束の時間、約束の場所のはずなのに..
相手とも、連絡がつかない。

まさかとは思いつつ、改めて確認すると
約束の日を1日間違えていた。

物語ではありがちな展開かもしれないけど
単純な失敗をした自分に呆気にとられ、
酷暑の中、費やした労力を思うと悲しくなる。

きちんと身だしなみも整えて、
馴染みのない場所まで来た。
何かを達成したい気分になって
数駅先のカフェに行こうと思い立ち、
つい先ほどまでいた駅の同じホームから
また、電車に乗る。

そこは銀座。
ますます身の丈に合わないと感じつつも
勢いに任せて目的地を目指すうちに、
景色がいつもと違って見えてきた。

モダンなデザインの地下鉄に、整った街並み、
肩を並べるインポートのブランドショップ。

休日の昼下がり、歩行者天国になったその街では
これから催されるらしい盆踊りに参加するのか、
浴衣姿で歩くひとたちも多い。

ああ、なんかいいな。

そのカフェは、とても賑わっていた。
親切な店員さんに相談に乗ってもらいながら
選んだ冷たいコーヒーは
柑橘やお花のような味がして
その時のわたしが欲しかった味だった。

そういえば、自分のためだけに電車に乗って、
自分のためだけにコーヒーを淹れてもらうなんて
あまりなかったということに、ふと気づく。

そこにあるのは自分と周りの社会だけで、
好きだと実感したものが目の前にあり、
それを自信を持ってずっと好きでいたい、
もっともっと、深く知りたい。
そんな気持ちがふくれあがって、
満ち足りた気分でいっぱいになる。

好きなものを全力で好きでいられる幸せ。
思い立てば、どこへだって行ける。なんだってできる。

偶然過ごせた、1人の時間。
非日常は、けっこうすぐ近くにあった。

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