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自由研究とは戦争である。(中編)


☆初めてこちらを読む方へ。まず先に前編をお読みください。


③テーマが決まっても油断はできない

さて、我が息子、一生懸命インターネットを駆使して自由研究のテーマを探すものの、探す行為に満足してすぐゲームに走ることで2日過ぎる。
どうもまだ時間に余裕があると思っているらしい。私も自分の経験を元に息子に急ぐよう諭すが、右から左に筒抜けのようだ。
だんだんしつこく注意するのも疲れてきた、そんなとき。
「プラネタリウム作る!おれ星すきだし」
と、作り方が載っているサイトのページを笑顔で見せてきた。
どれどれ…記事によると中身はアクリル板、豆電球、電池ボックスを使って
光る仕掛けを作り、外側は黒い厚紙で五角形の正多面体を作って覆うようなことが書いてあるが…なんだか息子には難しいような。
「材料はどこで買うつもりなの?」
「100均とか…?わかんない」
さすがに豆電球とかは売ってないと思うわ……
よくよく話を聞いてみると、この作り方だと、学校で習っていない事が半分以上でよくわからない。でもなんとなくかっこよさそうだからというのが決め手になったようだ。あーこれは両親に手伝ってもらう前提のやつだね……。
「材料のこととか、作り方とかおとうさんのほうが機械には詳しいんだからしっかり相談しなさい。一緒にやらなきゃだめだよ」
案の定息子は夫から材料はどうするのかとかツッコミをされ、口下手なので説明できずにしどろもどろ。近所にも売っているお店がないから遠出しなければ無理そうだが、子連れで気軽に外出できる状況ではないので夫はAmazonで色々と注文していた。
まあそれが一番手っ取り早いよね…。

注文した品物が届くまで2~3日かかったが、届くまでの間に息子は外側の箱の試作品を何個かコツコツと作っていた。これそのまま使えるかな!?と聞いてきたので実際の中身のサイズとか調べてからね、と返す。
夢中で色々やっているが、どんなに声かけても結局この状態ってこっちの声全く耳に入ってないんだよなあ…いわゆる過集中モードというやつである。
それでも何もやらないでゲームやってるよりはだいぶマシなので、暖かく見守りつつ様子をみていた。これも経験だしな。うん。

荷物が届いた日の夕方。
息子は大喜びで荷物を開けて部品などを調べていたが、夫はリモートワークでの仕事が立て込んでいて、手伝う時間がうまく作れなかった。
私は夕食つくりを始めていたが気になってちょこちょこリビングへ。

息子はどうも自分でやってみたくなったらしく、材料を自室に持っていこうとし、
「できるところまでおれひとりでやってみる!いいでしょ!?」
と自信まんまんで私に聞いてきた。
「いくら作り方書いてあっても一人じゃ大変だからお父さんと一緒に相談しながらやりなさい」
「だいじょうぶ!きくからー」
再三の忠告も聞かずに、息子は自室へ行ってしまった。
まあとなりの部屋で夫が仕事してるからわからなくなったら聞くかな…?

と今思えば、そうかんたんに考えて夕食作りに戻った私も悪かったと思う。
息子が「人に相談をする」という当たり前の事をちゃんと理解していれば、私の考えでよかったと思うからだ。よかったはずだった。

ちなみに現時点で8月20日。2学期開始まであと5日である。


④相談事は夕食のあとで

さて夕食を食べる時間になった。
あのときの記憶が正しければ私は確か和食を出したのだったと思う。めかぶのパックをひとり1個ずつつけて。
息子は偏食も多い。見た目だけでおいしいかおいしくないかを判断してしまう事があり、嫌いなものが出た時はとにかく食べる速度が下がってしまう。私は毎日の献立をつくるのに悩み、結構苦労していた。

今回は特に嫌いなネバネバ系だったので一口でも食べてもらえれば自分の中ではゴールのつもりでいた。
最初から全部食べてもらおうとすると食事どころではなくなってしまうからだ。

自室から戻った息子はめかぶを見てちょっと嫌そうな顔をするが、何も言わずに食べ始めた。
「いただきますくらいちゃんと言いなさい」
「…いただきます」

食べてはいるものの進みが遅い。夫が聞いても
蚊の鳴いたような小さな声でしか答えない。
まるで通夜のような雰囲気の中、時間だけが進む。

自信がなくなったり困ったことが起きたり、とにかく自分に良くないことが起きたときの息子はいつもだいたいこのような状態になる。
自分で自分の感情を処理できなくなり、一種のパニック状態に近くなるのだ。
「せめてめかぶだけは一口でもいいから食べてね」
なるべく怒った言い方にならないように気をつけつつ話したが、
息子は何も答えない。むすっとしたままご飯粒をひと粒ずつゆっくり口に入れている。

さすがに食事をする時の態度ではないので夫がちゃんと食べろと注意をしたのだが、途端にぐずり始めた。

「うわああああん!!」
息子はそのうち声を上げて泣き出し、机を叩き始めた。
そんなにめかぶが食べたくないのか…納豆は好きで食べるくせに本当意味がわからん。
こうなると私がどんなに叱ったところで本人には全く届かないので、とにかく無視して食べてしまうのが一番だが、食卓の雰囲気は最悪な状態である。ああ、ごはんがまずい…。
夫は息子に、ちゃんと食べるまで寝かさないと一言だけきつめに告げて、さっさと食べ終えてしまった。

果たして、息子が夕食を食べ終えたのはそれからなんと1時間も後であった。
一家は最悪の空気で無言のまま、その日を終えることになったのだが、
なぜ息子がこんなにテンションが低く、まるで八つ当たりのような行為をしてしまったのかは次の日の朝に判明することとなるのだが…

まさか自由研究に関係があるなんて思わないじゃないか…

後編に続く。後編はこちら




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