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2021.6.26(土)J3第13節 カマタマーレ讃岐vsロアッソ熊本 マッチレビュー

こんにちは!第11節福島戦以来のレビュー記事となります。
観戦された方が感じた印象と同じように渋めの内容となってしまいました。
今回は、両監督の狙いと両チームのビルドアップに注目しました!

1.スタメン/両監督の狙い

 讃岐は、前節の宮崎戦と同じメンバーで挑みます。ベンチには前節ベンチ外となっていた中村(駿)が復活しました。

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 まずは両監督の狙いを紹介します。

讃岐/ゼムノビッチ監督
・熊本はアイディアを持った選手がいっぱいいる。パスを繋いでの得点も多い。
相手の短いパスやポジションチェンジにしっかりと対応したい。
熊本/大木監督
・讃岐は長いボール、背後を狙うボールが多い印象。セカンドボールを取るために、競るポジション取りを心がけたい。
・簡単にボールを失わないようにしたい。

 熊本の「セカンドボールを取る」ためには、ボールの近くに人を集めることが必要になります。すなわち、この狙いを実現するためには、「相手よりも多く走ること」が求められます。

2.試合開始/いきなりのPK

 試合開始直後から、熊本はボール非保持の場面において、前線から積極的に讃岐のボールホルダーにプレスを掛けます。逆に讃岐はというと、熊本がボールを持ったときのプレスが連動せず、スピード感も全体的に熊本に劣る印象です。

 そうしたなか前半7分、熊本が、讃岐の左サイドの深い位置でFKを獲得。ゴール前に上がったクロスを岩本がクリアしようとしたところ、振り上げた手にボールが当たってPKになってしまいます。
 熊本のキッカーは高橋、守る讃岐もキーパーは高橋です。高橋同士の対決は、事前のスカウティングで蹴る方向を予測できたという讃岐の高橋に軍配があがり、ピンチをしのぎました。

3.狙われた西本の両脇のスペース

 一般的にビルドアップで狙いのスペースと言われるのは、ボランチの両脇のスペースです。ボランチが1枚の場合は、1人で両脇の広大なスペースをカバーしなければならず、攻撃側としては狙い目となる場所です。
 この試合の前半は、まさにこの方法で熊本に数多くのチャンスを作られてしまいました。

 前半で特に目立ったのは、ボランチ西本の両脇のスペースに対して出される熊本の中央CB菅田からの鋭い縦パスでした。このパスの受け手になったのは最前線から降りてきたFW伊藤です。
 例えば15分55秒からのシーン。菅田から西本の左脇に降りてきた伊藤に鋭いパスが通されて一気に前線まで攻め込むきっかけを作られます。

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 また、24分15秒からのシーンにおいては、西本の右脇のスペースを利用され同じパターンでチャンスを作られます。
 いずれのシーンも決定機にまでは至らないものの、熊本の狙いは明確なものでした。

4.讃岐のビルドアップ

 項目を立ててまで振り返る必要があるのか分かりませんが、讃岐のビルドアップはまだ未完成のようです。
 36分45秒のシーンを見ていただければそれが分かります。自陣でボールを奪った讃岐は一旦GK高橋までボールを戻し、ビルドアップを試みます。
 讃岐の両WBは、GKから始まるビルドアップには関与せず、どちらかと言えば最前列でボールを待っていることが多いです。そのため、熊本FW陣から受ける最初のプレスは、GKとCB3人の計4人(あるいは西本を加えた5人)で超えて行かなければなりません。
 ところが、このシーンでの熊本は前線に残った4人が西本を含めたボールの受け手全員をマークします。

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 すると、ボールを持っているGK高橋としてはショートパスの出しどころがなく、いつもどおりのロングボールを蹴り出すしか選択肢が無くなってしまいます。しかし、前半の讃岐はセカンドボールへの詰めが甘く、熊本に回収されて再び守備に回る、といったことを延々に繰り返すことになりました。

5.ハーフタイムでの交代/修正

 讃岐は、ハーフタイム明けから高木に変えて中村(駿)を投入します。
 すると、46分にいきなり試合が動きます。前線で積極的にボールを引き出す動きを繰り返す中村(駿)熊本の守備陣が対応を模索しているところにスキが生まれます。空いたスペースを左WBの薩川が一気にドリブル突破し、クロス!これをエリア内の栗田が頭で合わせて同点(1−1)に追いつきます。
 第13節にして讃岐の9番に初ゴールが生まれます。

 また、讃岐は後半から岩本の位置を後方に下げ西本とのダブルボランチを形成します。これにより、前半のように熊本にボランチの両脇のスペースを使って攻め込まれることが少なくなり、試合展開が落ち着きました。
 さらに、ハーフタイムに発破を掛けられたのか、讃岐の全体の運動量が増えボールを収めることが増えました。

6.決勝点

 交代選手の運動量やポジショニングの修正などで互角の戦いを繰り広げていた讃岐ですが、83分に決勝点を奪わてしまいました。
 讃岐の左サイド深い位置で熊本にスローイングを与えます。熊本は、そのボールを細かいショートパスを繰り返し、マンマークで守備に当たっていた讃岐の選手を剥がしていきます。そして、フリーになったところからゴール前に浮き球を送られ、再びFW高橋に頭で合わされて失点(1−2)してしまいました。
 これは讃岐陣営からすれば、終了間際の失点ということ以上に「分かっていたのに」という意味で悔しい失点になったのではないでしょうか。この試合においてゼムノビッチ監督は
 相手の短いパスやポジションチェンジにしっかりと対応したい。
と熊本を分析していましたが、そのとおりにやられてしまいました。

7.さいごに/次節への希望

 最終的には敗れてしまいましたが、次への収穫は大きかったと感じます。
 まずは栗田の今季初得点です。これまで抜け出してキーパーと1対1になった場面でも決めきれず、結果が出ない試合が続いていましたが、このゴールを機に自信を持って得点の量産を期待したいです。
 そして、後半からの修正により、前半とは全く違った試合展開を作ることができました。ゼムノビッチ体制になって数試合戦ってきた中で、柔軟性も生まれてきたのではないかと感じました。

(2021.6.27DAZN観戦)

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