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契約締結 「成果報酬型インキュベーションでの蒸留所づくりプロジェクト」

こんにちは。有限会社グリップ代表の高橋です。

空き家/空き地を活用した成果報酬型インキュベーションの、当社の第一号案件として実施している、伊豆・下田市白浜での蒸留所づくりを目指したプロジェクトについてお伝えしています。
様々な課題をどのようにクリアしてプロジェクトを進めていったのか、少しでも参考になれば幸いです。

空き家/空き地を活用した成果報酬型インキュベーションとは何かをまだご存知ない方は、はじめにこちらの記事をご覧いただけると嬉しいです。


契約書案の作成

前回の記事では、契約書を作るための事前情報として、事業計画書の説明をしてもらったところまでお伝えしました。

契約書案を作成はインキュベーターである当社が作成しますが、チャレンジャーが計画している事業の内容と、計画している売上、原価、経費、利益などを理解した上で、次のポイントを決めて行く事が重要です。

何に対する成果報酬にするのか

成果報酬とは収益を分ける事ですが、契約をする上では収益とは何かを明確にしておく必要が有ります。
例えば、売上を収益とするのか、売上から原価を引いた売上総利益を収益とするのか、粗利からさらに経費なども引いた営業利益を収益とするのか、あるいは発注額や入金額などの別の基準を設けるケースも有るかも知れません。
どれが正解という事ではありませんので、事業の内容やインキュベーターとチャレンジャーの考え方によって、そのプロジェクトに適した収益を定義する事が重要です。
 
今回のプロジェクトにおいては、成果報酬の対象となる収益を対象利益という言葉で定義し、対象利益の計算方法を具体的に契約書に明記しました。

成果報酬の割合をどうするのか

成果報酬の対象となる収益が明確になったら、次に成果報酬の割合を決める必要が有ります。
これも決まった正解は有りませんので、プロジェクトの状況によってインキュベーターとチャレンジャーが納得の行く割合を決める事が重要です。
 
チャレンジャーが作成した事業計画書は、必ずしも計画通りに行くとは限りません。
事業が安定する前から成果報酬の金額が高くなり過ぎてしまい、肝心な事業を圧迫してしまっては長期的な成長に影響が出てしまいます。
ここで、インキュベーターは、短期的に利益を出す事に囚われ過ぎずに、中長期的な視点で考える事が大切になります。
 
例えば、仮に収益を売上と定義し、成果報酬の割合を30%と定義して場合。
売上が50万円の月の成果報酬の金額は15万円になります。
チャレンジャーは50万円から15万円を引いた35万円の中で、原価や人件費などの経費をやりくりした上で、利益を出す必要が出てきます。
原価や人件費などの経費が月に35万円掛かる場合、利益はゼロになってしまいます。
 
一方で、収益を営業利益と定義し、成果報酬の割合を50%と定義した場合にはどうでしょうか。
売上が50万円、原価や人件費などの経費が35万円であれば、営業利益は15万円になります。
この15万円の50%である7万5千円が成果報酬の金額になります。
インキュベーターの収入は半分になってしまいますが、チャレンジャーにも7万5千円の利益が残ります。
中長期的な視点で考えた場合、後者の条件の方がチャレンジャーの事業の成長にも有利で有り、結果的にインキュベーターに取っても良い条件だと言えるのでは無いでしょうか?
 
この例はあくまで紙上のシミュレーションですが、実際の契約条件を決める際にも、良くシミュレーションをした上で、インキュベーターとチャレンジャーがお互い納得の行く条件にする事が大切です。
また、一度決めた条件を永遠に継続しなければならないという事もありません。
当初の条件は、あくまで事業計画を元に決めたものですので、毎年実績の数字を見ながら条件を変更していくという前提の契約でも問題ありません。

成果報酬の計算の元となる数字は何を根拠とするのか

もう一つ決めておく重要なポイントがあります、成果報酬の計算は毎月行うケースが多いと思います。
年に一度という契約も考えられますが、基本的には毎月行う契約が多くなると思います。
つまり、毎月成果報酬の対象となる収益の金額を確定し、その金額に成果報酬の割合を乗じた金額を成果報酬の金額として決定する必要が有ります。
成果報酬の対象となる収益の金額をどうやって確定するのかが、重要なポイントになります。
 
例えば、毎月の売上高を収益とする場合には、チャレンジャーが毎月の売上高を集計すれば比較的容易に収益を確定する事が可能です。
しかし、毎月の営業利益を収益とする場合には、チャレンジャーが月次決算を行い、営業利益を確定する必要が出てきます。
大企業であれば月次決算を行う事は当たり前ですが、個人事業や中小企業の場合には期末にまとめて作業するというケースも多いと思います。
現実的に運用可能な契約にしておかなければ意味がありませんので、チャレンジャーが起業後に毎月の作業として対応可能な条件にしておく必要が有ります。
 
例えば、前述の例で収益を営業利益と定義し、成果報酬の割合を50%と定義した場合、売上が50万円、原価や人件費などの経費が35万円であれば、営業利益は15万円になります。
この15万円の50%である7万5千円が成果報酬の金額になりました。
しかし、この契約条件の場合には、毎月決算を行い営業利益を計算する必要が有ります。
現実的に月次決算は難しいという場合には、次の様なやり方も考えられます。
 
考え方としては収益を営業利益と定義し、成果報酬の割合を50%と定義するが、毎月の運用上は売上に対する成果報酬の割合として計算をするというやり方です。
前述の例で具体的に説明すると、売上50万円に対して、成果報酬の金額は7万5千円でした。
これは売上に対して15%の金額になります。
そこで、みなし成果報酬割合として売上に対して15%という定義をしておくのです。
毎月の運用では、売上だけを確定し、その金額に15%を乗じた金額を成果報酬の金額として確定します。
この運用であれば、チャレンジャーの作業は大幅に削減出来ます。
 
そして、例えば一年に一度決算を行い、実際の営業利益が確定した際に、一年間を振り返って見直してみるのです。
見直した結果、売上の15%として計算していた成果報酬の金額が、多過ぎた場合や逆に少な過ぎたという事が起こり得ます。
その差額を年に一度精算し、合わせて翌年以降のみなし成果報酬割合も変更して行くのです。

契約締結

何度かやり取りをしながら契約条件を確定し、作成した契約書の案をチャレンジャーに提示しました。
やはりお互い初めての成果報酬型の契約でしたので、土地賃貸借契約の条件部分は何度か修正を行う事となりました。
 
このプロジェクトの場合、チャレンジする事業が蒸留所の設立という事もあり、事業がスタートした際には酒税の申告手続を毎月行う事になります。
これと合わせて月次決算もする事になりますので、月次決算の数字を根拠として成果報酬の金額を確定する事が可能となりました。
この決定プロセスには、両社の会計事務所にも相談に乗ってもらいましたが、実はチャレンジャーの会計事務所は、インキュベーターである当社が紹介させてもらいました。
 
少し話が逸れますが、インキュベーターの役割としては、チャレンジャーの事業を支援する事ですが、インキュベーターが持つ人脈を使ってチャレンジャーに専門家を紹介したり、チャレンジャーの事業の成長に繋がりそうな企業を紹介するなどは、積極的に行うべきだと思っています。
多くの場合、インキュベーターの方が年齢的にも上で、社会人経験も多い事が想定されます。
これまでの経験をチャレンジャーの支援に活かせる事自体が、インキュベーターに取ってのやりがいにもなると思います。
 
ただし、良かれと思うばかり押し付けになってしまったり、チャレンジャーが断りずらくなってしまっては本末転倒です。
あくまで決めるのはチャレンジャーという前提を忘れずに、可能な支援をするというスタンスが重要だと考えます。
 
今回のプロジェクトの場合、結果的にインキュベーターとチャレンジャーの会計事務所は同じという事になり、プロジェクトの全体を把握してもらいながら、様々な相談に乗ってもらえるという良い環境が構築出来ました。
契約書の内容も両社の視点で確認して頂き、アドバイスも頂きました。
 
チャレンジャー側は、このタイミングで株式会社化する事となり、法人登記を待って無事契約を締結する事が出来ました。

空き家/空き地を活用した、成果報酬型インキュベーションをサポートします。

当社では空き家/空き地を活用した成果報酬型インキュベーション事業を推進しています。
弊社自身がインキュベーターとなり成果報酬インキュベーション事業を推進するとともに、この取り組みを世の中に広めて行くためのサービスを提供します。
ホームページからお気軽にお問い合わせください。

そして、インキュベーターをお勧めする本をKindleで出版しました。
成果報酬型インキュベーションは、第二の人生の生き甲斐にもなるとてもやりがいのある取り組みです。
実際に自分自身で体験した事を元に書きました。
是非ご購読頂けると幸いです。
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次回は、蒸留所の工事についてお伝えします。


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