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災害はいつでもやってくるー携帯トイレ、福祉避難所、外国人の防災など、区議会での議論について

能登半島地震を受けて、防災についての意識が高まっています。
地域防災計画というものがあり、各自治体で災害対策基本法に基づき計画を作ります。
東京都は、首都直下地震などの想定を見直し、昨年5月に東京都地域防災計画の震災編を修正しました。そのため、新宿区でもこの都の修正をふまえて見直しをすることになりました。
ただし、この新宿区地域防災計画は、昨年末の時点でほぼ修正案がかたまってしまい、能登半島地震で浮き彫りになったことが反映されていません。

能登半島地震では、水道や道路といったインフラへの影響が大きく、避難所の立ち上げ、トイレなど生活用水の問題が生じました。東京23区での発災した場合は、もちろん能登半島の地域とは人口密度も異なるため、また別の問題も生じます。
今回の新宿区議会定例会では、こうした災害対応について、様々な議論がでました。
会派を代表して質問を行う代表質問では、志田区議が登壇したため、私は質問を提供したのですが災害対応の部分を担当しました。また、予算特別委員会でも、防災についてさらに取り組みました。

能登半島地震の課題から携帯トイレの問題

多くの会派で質問した点が、トイレの問題です。
水洗トイレが使用できなくなり、被災直後から劣悪なトイレ環境にさらされていたことが報道され、携帯トイレの必要性が議論となりました。
新宿区では、避難所が学校に作られますが自宅での生活継続ができなくなった方が対象となります(区内51か所)。
避難所には仮設トイレが設置されますが、自宅で断水して水洗トイレが使用できなくなった場合、携帯トイレがあれば使用後、凝固剤でもえるごみに出すことができます。
そこで、他自治体ではすでに携帯トイレの配布を行っていたところもあり(例:港区)、新宿区でも配布すべきとの議論がありました。

私の会派でも、携帯トイレの配布について賛成ですが、配布の方法については区で他の自治体の配布状況を見ながらよく検討してほしいという立場です。
一人が携帯トイレを1日に使う数は5個だそうです。そうすると、3人家族で1日15個。水道の復旧に時間がかかれば5日間で75個も必要となります。区で全戸配布とすると、何個がいいのかがまず問題となります。東日本大震災の当時、液状化現象が起きた浦安市では水道の復旧まで約1カ月かかったとのこと。
また、もえるごみに出せるといっても、ごみとなれば何百という個数を収集しなければなりません。場合によっては、1回使用という使用方法ではなく数回使っていること、ごみ置き場で他のごみと混ぜると、ごみ収集車の中で漏れてしまうこともあり得ることなど、様々な問題が想定できます。

そのため、今回の予算特別委員会ではこの携帯トイレの配布をするとしても、使い方と、ごみの出し方についても説明をすることを提案しました。
また、ごみ収集の場合の注意点として、衛生管理上の問題が懸念されるので別のごみ収集場とすることなど研究することも問題提起しました。区の担当課からは、他区の状況など研究していくという前向きな答弁を得ました。

配慮が必要な人たちへどう対応していくか

いろいろな状況にある人たちに対し、発災からすぐに対応をすることができるのか、また過ごしやすい避難所とすることができるのでしょうか。
能登半島地震では、福祉避難所(二次避難所)が設営できないという問題がありました。福祉避難所とは、避難所での生活に支障が生じる高齢者や障がい者、その他の特別な配慮を必要とされる避難者を対象に開設するものです。道路の分断で職員がたどり着けなかったことや、断水で避難所の運営が困難となったことで、避難所の設置ができない事態に陥りました。

福祉避難所の課題は、以前から続いています。
例えば、戸山にある新宿区立障害者福祉センターは福祉避難所になることが予定されています。通所されている障がいが比較的重い方であっても、過ごすことができるよう、準備をしており食料・水などの備蓄をしっかり行っています。
しかし、実際に災害が起きた場合は近くには戸山ハイツなど高齢者が多く住む地域であって、予定していない方々が避難を希望する場合もあります。また、障がい者の家族は一緒に避難することを想定しておらず、そうすると備蓄はすぐに尽きてしまうおそれもあります。
あくまで二次避難所として、一次避難所にとどまることが難しい方が対象とになるといっても、立ち上げ当初は相当難しい対応に迫られると考えられます。そんな中でも、職員の大半は区内に住んでいるわけではなく、区の対応として十分なのか、問われています。

外国人の防災に関しても課題です。「外国人」とひとまとめにすることはできず、区内には多くの観光客、留学生、永住者というように様々な在留資格を持つ人たちがいます。
観光客の場合は、日本語も分からない方が多く、情報を求めてまず駅などに殺到することが予想されます。また、大使館などの連絡も入ってくることから、都の窓口だけでなく区の対応も必要となります。
区では、災害時には専用の多言語ウェブサイトに切り替え、駅周辺でも情報を流すことができるよう対応を進めているとのことです。
さらに、日本語ができる留学生には、そうした情報を必要な外国人との間に入ってもらいたいと考えます。区ではいま、外国人対象に避難訓練などを始めていますが、受け身になるだけでなく、留学生がいる学校、大学、専門学校などに情報提供をして、連携していくことを提案しました。

多言語防災啓発パネル

女性に対しての防災は、これまでも区はワークショップを開催し、シンポジウムでも取り組みの報告がありました。
しかし、性暴力についてはあまり対策が進んでいません。女性だけでなく、男性も含まれますが、性暴力については話しにくい事であって、今ようやく東日本大震災の経験を語り始めた方もいます。
避難所で着替えや授乳をしやすいよう、テントや間仕切りを高くするといった物理的な対応で性暴力を防ぐ取り組みがあります。
予算特別委員会では、さらに進めて被害の対応として、ワンストップセンターの窓口など、避難所で何かあった時に相談できるということを掲示するなど、注意喚起をすることを提案しました。

増え続ける高層マンションでの防災は

マンション防災、という言葉が聞かれるようになりました。
エレベーターが停止してしまう、給水設備が止まってしまうといった事が懸念されています。
マンションにお住まいのみなさんの中には、町会に入られる方も多くないため地域の防災の情報が行き届かないことがあります。
マンションでの自主防災組織を作り、防災訓練などを行うことを推奨しています。
住民の約7割がマンション住民という品川区では、今年度予算でエレベーター内に設置できる防災チェアを無償提供することにしたそうです。
マンション防災の充実を求める声が多い中で、私たちの会派一押しの提案は、上層階へ物資運搬が可能な電動階段運搬車の配備です。これもすでに港区は今年度予算にあげたそうですが、エレベーターが不調であったり、混雑していても荷物だけは別に運ぶことが可能です。より多くの方のために利用できます。

困っている事や、これからの対策について、ぜひお声をお寄せください。

【りっけん新宿/GW学習会】
新宿区の地域防災計画など、地域の防災についての学習会を開催します。
日時:2024年4月28日(日)14時~
場所:落合第一地域センター第一集会室
会費:500円(資料代)申込不要

【山口かおる区政報告会】
防災等、定例会で質疑した課題についての区政報告会を開催します。
 日時:2024年4月17日(水)18時30分~
 場所:戸塚地域センター(高田馬場駅すぐ)
 申し込み不要・参加費無料


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