「体験的に死ぬ」参加者インタビュー 〜「死」を日常に取り込む〜
3,770人。
これは、日本で1日に亡くなる人の数です。
(『令和元年(2019)人口動態統計の年間推計』をもとに計算)
誰かの死は、ある人にとっては衝撃的な出来事だけれど、他の誰かにとってはテレビやスマホに流れてくる日常で、また他の誰かにとっては知りもしないまま過ぎ去っていくことで。
しかし、避けることのできない「死」に対して、どんな姿勢を持つかは、「日々をどう生きるか」に直結します。
年明け早々ですが、「死」を日常に取り込むにはどうすればいいか?を一緒に考えてみませんか?
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2019年11月25日、inclueはイベント「体験的に死ぬ」を開催しました。
「体験的に死ぬ」は、自分が死ぬ過程をストーリー形式で想像し、大切なものへの向き合い方を考えるワークショップです。
本記事では、そんな「体験的に死ぬ」の参加者に行ったインタビューをご紹介します。第一弾は、山崎由佳さんです。
(インタビュアー:きのぴー)
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–––まず、「体験的に死ぬ」に参加した理由やきっかけをお聞かせください。
山崎さん:Facebookで知り合いの方が「興味あり」を押していたのが、流れてきたんです。「体験的に死ぬ」という名前が印象的でした。
「死」って、黒色とか重い感じで表現されることが多いと思うんですけど、「体験的に死ぬ」は前向きに考えてみようという風に受け取れて、おもしろそうだと感じました。
–––「死」に興味を持つようになった背景には、どんなことがあるんですか?
山崎さん:今年の夏に平和について考えるイベントで広島を訪れてから、死に対して強い関心を抱くようになりました。それで、完璧でなくとも亡くなる人の気持ちを体験できる場所を求めていました。ちなみに、「死 疑似体験」とググってた時期もありました笑
夏に訪れた、広島県の原爆ドーム
山崎さん:また、私は高校一年生の時に交通事故で兄を亡くしているので、同世代の人たちよりは死を身近に感じているところはあると思います。
兄の死を経験した時、家族や日常を大切にしないといけないと思いましたが、その感情は長続きせず、いろんな感情が日常の中で消えていってしまうんです。それで、日常へ兄の死を取り込めないことに、後ろめたさを感じていました。
イベントの最後にきのぴーさんが仰ったように、死に向き合った時の気持ちを大切にしたいけど、それができなくてもどかしいんです。
広島に行ったのも、「兄の死を取り込めているかな?」と考えてみたかったからなんです。
–––山崎さんは、どんな時に「お兄さんの死を取り込めている」と感じるのでしょうか?
山崎さん:全然そりが合わない友人と関わっているときに、本当になぜだかわからないんですけど、ふと兄の存在を感じて、「この人は、悪意があって私と接しているわけじゃない。その人なりに優しくしようとした結果として衝突が起きているんだ」と、大切な友人との関係を諦めたくない気持ちが湧き上がってきたんです。
それで、「もう一回がんばってみよう」と思って、手紙を書いたり、電話をかけたりしました。
–––そんなお兄さんは、山崎さんにとってどんな存在ですか?
山崎さん:・・・勇気づけてくれる存在です!いつも「本当にそれで良いの?」と問いかけて、奮い立たせてくれるんです。
たとえば、疲れていて誰かからの質問に、心の底から思ってることじゃなくて表面的なことを返してしまいそうな時でも、兄のことが頭によぎって、「この人と会うのが最後だとして、その答えでいいの?」と思い、もっと誠実に返そうという気持ちになります。
山崎さんのお兄さんの趣味を表現したミニチュア。お兄さんの友達からいただいたそうです。
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–––先ほどから写真を載せていますが、「体験的に死ぬ」では、人や物、考え方、思い出の場所といった「自分の大切なもの」を書いた20枚のカードを使います。
自分の死が近づいていく度に、カードを1~3枚捨てて、最後の1枚を捨てて「死」を迎えるのです。
山崎さんはイベント終了後から、20枚のカードの写真をロック画面にして、忘れないようにしてくれています。
本インタビューでは、そんなワークの感想についてもお伺いしました。
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–––まずは、20枚のカードを捨てていった流れを簡単に教えてください。
山崎さん:「人」「物」「考え方」「思い出の場所」の4種類のカードがあったと思うんですけど、はじめのうちは「思い出の場所」と「物」のカードがどんどん消えていきました。そして後半になるにつれ、「人」と「考え方」のカードを捨てていくようになりました。
カードに書いた「大切なもの」の紙と鉛筆。絵を習っているそうです。
私にとっては、人や、人と関わる中で得た価値観が最も大切で、物や場所はそれを得る手段でしかないんです。人や価値観が根や幹なら、物や場所は枝葉だと思います。
–––次に、20枚のカードの中で、終盤はなにが残りましたか?
山崎さん:最後のカードは「家族」で、最後から2枚目は「その日の幸せをきちんと受け止めること」でした。
正直いまの私にとって、悩みを打ち明けて共感してもらえたり、一番サポートしてくれるのは友達です。北海道出身で東京の大学に通っているので、家族とは年に2回くらいしか会えませんし、電話やSNSでのやり取りも頻繁にはしていません。
それでも感覚として、家族は自分の一部なんです。友達は私と別の存在として関わっていますが、父と母、兄や姉は、一人の人間として愛情を持って色んなものを与えてくれる存在です。
北海道の実家から見える夕焼け
友達とは数えきれないくらい幸せなことも辛いことも経験してきましたが、心から私を愛してくれている家族は、自分と切り離せないと感じています。
私はこの家族の一員として生きてきたから、恩返しするのは前提で、自分の定めだと思っています。それくらい切り離せないし、逆に切り離せないのが心地いいんです。
–––では、最後から2番目の「その日の幸せをきちんと受け止めること」は、どうして残ったと思いますか?
山崎さん:兄を亡くす前までは、いろんな人が亡くなったニュースを見ていても、現実味がなかったんですけど、兄の死後は「実際に誰かの身に起きていて、自分の身にも起きることなんだ」と捉えています。
人生どんなことが起きるかわからないし、自分が傷つける側にも、傷つけられる側にもなるかもしれないですよね。
広島に行った時もそれを感じたのですが、同時にこういう非日常的なことを日常の中に強く残しておくのは難しい、とも感じています。
「どうしたら残せるんだろう?」と考えるのですが、人に「人間はつらい出来事を忘れようとするもの」と言われて、それはそうだなと思ったり。
ただ、自分や広島の人たちにとっては、忘れられやすいけど、見過ごしてはいけない大切な想いで。見えたり見えなくなったりしてもいいけど、日常のどこかに留めておきたいですね。
また以前、小林麻央さんが亡くなる前、最後のブログを読んで、「絞りたてのオレンジジュースがおいしい」と書いてあるのが印象的だったんです。
山崎さん:彼女がどういう気持ちだったかはわかりませんが、最後まで自暴自棄にならず、死を受け入れ、自分らしく最後を迎えるために、「今日はこれが幸せだった」「苦しいけどこれができた」と、小さなことでもうれしいなと思ったり、感謝の気持ちを持つことが大事なんだと思いました。
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最後までご覧いただき、ありがとうございました。
興味を持っていただいた方は、第2弾もぜひご覧ください。
- - - - - お知らせ(2020.09.26追記) - - - - -
inclueでは毎月「体験的に死ぬ」をオンラインで開催しています。
次回の日程は、10月4日(日)19:00〜21:15 です。
下記URLよりお申し込みいただけます。ご興味ありましたら、こちらからご覧ください。
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