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オペオペ


オペラのオペをした。


 コレが言いたいが為に頼まれてもいないのにやった。という訳では無いが、実際オペラのオペ(PAのことだよ)なんかやれる機会もそう無いし、非常に楽しかった。それに僅か2メートル先で聞くオペラ歌手の歌声の凄まじさたるや。マイク要らねえ。
 オペラという単語だけで思い出すのは黒い背景に白い仮面、すぐ側には深紅の薔薇が描かれたジャケット。ご存知ミュージカル『オペラ座の怪人』のサウンドトラックだ。小学生の頃、母親の車で良く聞いた。どんな話かもわからず、そもそもミュージカルというモノも知らず、ただの音楽としてそれを享受していた。



母親の車に乗るのが好きだった。


 色んな音楽が真っ赤なコルトのカーオーディオから流れてきた。70年代ハードロック、80年代アメリカポップス、ミュージカル、JPOP、映画のサウンドトラック。
 今思えば当たり前の様に母親ドンピシャ世代の音楽が流れていただけだが、ガキ時分の僕にとってはよく分からない異国の言語の歌がとても新鮮に思えた。
 歳を重ねるに連れて音楽は自分で選んで聴く様になる。浜松に住んでいた当時、実家から一人暮らしの家までの道中約2時間を母親が車を出してくれていた。僕がフジファブリックを聴けば母親はそれ良いねなんて気に入ったり、やかましい音楽を聴けば煩いからラジオにさせてなんて嫌がられたりした。親が僕の影響で聴くモノが変わっていくのは、なんか面白かった。1人で富士宮へ帰る母親は何を聴いていたのか。何を思っていただろうか。


 今では真っ赤なコルトから、深緑のハスラーに乗り換えた母親。久々に乗ったその車からはオペラ座の怪人でもなく70年代ハードロックでも無くフジファブリックでも無く、マントラミュージックがずっと流れていた。


僕は退屈すぎて寝た。おやすみママ。


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