【読書感想文・日本国紀 上(百田尚樹 著)】自虐史観に対するカウンターパートでできるだけニュートラルに

Audibleで「日本国紀 上」を聴きました。

本書のいいところは、初等教育で習ういわゆる自虐史観に対するカウンターパートとして、いい機能を示すと思えるところです。

百田尚樹氏は「永遠のゼロ」、「海賊と呼ばれた男」などで非常に有名な作家で、自分もこれらを読んで胸が熱くなりました。その経緯から、氏が愛国の心を持っておられることは知っているのですが、本書は、その視点は維持しつつも、自虐史観の元となる目線や幾分かニュートラルな視点も紹介しながら日本の歴史の大きな流れを追っています。

本書の個人的な見方としては、学校で覚える暗記項目が「年表」だとしたら、その年表に、その時代の政治、経済的視点からの追記をしているような感じでした。要は、点と点を結ぶ線のような説明をしてくれていて、著者の考え方と言うのもありますが、非常に歴史をわかりやすく説明してくれています。

著者の考え方で非常に参考になった考え方が、資料から情報を抜き取る際に、内容だけを見るのではなく、書かれた順番にも着目している点です。具体的には、聖徳太子が書いた17条の憲法の解説の中で、「天皇を元首とする項目を3番目に持ってきている」という記述です。1は和を尊ぶこと、2は仏教を敬うこと、3に君主(天皇)の命令をきくこと、となっています。(下記Wikipediaより)

この順番から、日本が古来から自分の欲を第1にしなかったということを説明していました。こういうところから、情報に対する見方を改めて学びました。

また、「自分の国に自信を持てる」情報を持つことはやはりいいと思います。また、偏った情報だけを持つのは危ういとも改めて感じました。色々な考えがあるのは承知していますが、自分が学生だったことを思い出すと、自虐史観にどっぷり浸かった感じがします。その反動として、インターネットを知りそれを使って真逆の情報を得たときの心の動揺がすごかったのを思い出します。

学校の教科書と、インターネットの情報の共通点は、「都合の良い情報しか載せない」ことだと思います。それを取捨選択できる状況になって初めて自分の意見が決まるのかな、と思いました。個人的に、新井白石、田沼意次、松平貞信の評価は教科書と極めて異なっていて、テストのための勉強からはわからないものなのだな、と思いました。

その意味で、著者の立ち位置をはっきりさせつつも、本書は、「中立的〜肯定的な日本史」を比較的マイルドに教えてくれる良書と思います。

最初に書いた、点と点を結ぶという役割も非常に大きいと思うので、受験生にもおすすめできる一冊です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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