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【大相撲の不思議】 書評#50

みなさん、いつもお世話になっております!
本日は、私の投稿の軸とする一つ「本」「読書」に関して書かせていただきます。

自己紹介に書いたマイルールを守りながら、私の大好きな本について書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!

今回は、日本の「国技」と表現される「相撲」についてです。
最近は落語・歌舞伎など、日本の文化・伝統みたいなところに興味を持つ私です。

※ヘッダーは、デザイナー杉江慎介さんの作品を使わせていただきました!とてもかわいくて使いたくなりました!ありがとうございます!


基本情報

内館 牧子(著)
潮出版 出版
2018年9月30日 第1刷発行

全213ページ
読書所要期間4日

私が本書に出会うきっかけ

私は、近年相撲に関心を寄せている。

稀勢の里(きせのさと)をご存じだろうか?
2017年、日本人としては19年ぶりに横綱になった力士である。
私は、彼が好きで相撲を見るようになった。

きっかけは、2017年1月のテレビ中継を義父が我が家で見ていたことである。この月に彼が初優勝を果たす。
いよいよ若乃花以来の日本人横綱が誕生するか?という瞬間だと言う、とても興奮した義父の姿があった。
それを目の当たりにし、私も何だか気持ちが高揚した。

この優勝が評価され、彼が横綱となって迎えた3月、再び優勝!
この瞬間、家族全員で大歓声をあげて見ていた記憶がある。

これ以降、土日だけではあるが、すっかり相撲を見ることが定着しつつある。
とはいえ、全ての取り組みを毎日見るわけでなく、ましてや競技経験もないため、知識としては「ド」が付くほど素人。
そんな状況から一歩踏み出そうと頼ったのが本書である。

積読してあったのだが、5月14日から夏場所が始まったタイミングで、相撲に対する気持ちを高めようと手に取った。

私の著者に対するイメージは、完全に「横審」。
著者の作品は初めてである。

この本の本質

これまたみなさん、記憶に残っているだろうか?

かつて、女子が土俵へ上がろうとしたことを、相撲協会側が静止するという出来事が、マスコミに大々的に報じられたことがあった。

この事件から”まえがき”が始まるのだが、なぜこれがダメだったのかということを一例として、その背景にあることと、それらが醸し出す大相撲の摩訶不思議な部分を紐解いていこうとするものである。

著者はかつて、横綱審議委員をされていた方。
その著者が、このためだけという訳ではないだろうが、東北大学の大学院で学び直すという腰の入れようである。
このこと自体とても興味深く、心から尊敬する。

私が感じたこと

1点目 〜女子が土俵に上がって良いか?

上述したこの事件の本質は、伝統文化国際的趨勢2項対立であったと考えられる。
私は正直、本書を読むまでは後者を支持していた。
しかし、どちらも間違っていない、少なくとも今の私にはどちらが良いと判断できないと感じている。

一緒にしたらどちらの業界にも怒られるかもしれないが、歌舞伎の世界にも舞台上に生物学的な女性はいないのではないだろうか。

私は決して、男女平等・男女共同参画を否定する者ではない。
むしろ、家庭には妻と娘が4人いることから、ジェンダーを含め強く関心を寄せる分野である。

相撲は、古くから伝わる「神事」へのリスペクトを込めて、いったんこれまでの私の考え方を積極的・前向きに保留しようとするものである。

なぜ保留しようと考えたのか?
この理由については、著者の明確な一言(一文)が強く残っているためである。
そして、著者も単純に、男女平等に賛成しないというわけではない。
ましてや、著者は女性である。

2点目 〜横綱白鵬を変えた”万歳事件”

P101にこのタイトルがある。
とある取組がきっかけになって、白鵬のその後の取組に変化が起きたとの著者の分析がある。
確かに、いつの日からか取組や、取組後の所作が荒くなったと、私自身も素人ながら感じていた。
だんだんと歳をとることで体力が低下した危機感と、長らく横綱に君臨することへの慣れみたいなものがそうさせているのではと考えていたのだ。

しかしこの分析を見るに、私の考え方・見方が誤っていた。
要するに、客側が白鵬を変えてしまったというのが著者の結論である。
それも、外国人力士に対する差別的振る舞いであった可能性を示唆している。

これが事実だとすれば、本当に申し訳ないことだ。

外国としての日本文化を尊重しつつ、自己を鍛錬し責任を背負って取り組んできた、いわば、日本のために尽くしてきてくれた方に対する敬意が足りなかった可能性がある。

改めて、外国人力士には、
『他国を自国と同様に愛し、他国の文化を尊重して日々を過ごしていただいていること』
に、感謝と敬意を表したい。

むすびに

最後の一段落、わずか2行に、ものすごいインパクトを感じた。
要するに、次のことを読み取ることができるだろう。
・神事としての相撲への尊敬と畏怖
・著者の相撲のあり方に対する強い決意

著者の相撲、そして力士の方々に対する並々ならぬリスペクトを感じる。


以上です。
#45でも書きましたが、林家たい平さんが「変えて良いもの・悪いもの」について言及されていました。

時代の変化に伴い、変えるべきものは変える必要が、どのジャンルでもあるのかもしれません。
そして、当然に変えてはいけないものもあるのだと思います。

この辺の見定めが、過渡期としての現代において、特に伝統のジャンルでテーマとなっているのだと感じました。

一方で、伝統とは一般に「不思議」が魅力になっているということも言えるのかもしれませんね。

大変興味深い内容・テーマでした!!

本日も、誠にありがとうございました!

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