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元経営者のじさまから学ぶ山菜採りと、ばさまのもてなし力①


「あれえぇ、よく来たなぃ」


母屋の台所に顔を出すと、ばさまが

驚きの混じった笑みで私を出迎えた。


まだ朝夕肌寒い時期にもかかわらず、

日に焼けシワの刻まれた、

それでいてどこか若々しさの

感じられるハリのある笑顔だ。


「今日はじさまの山菜採りに

連れて行ってもらうから、

居間でしばらく待たせてな、、、

いやあ!うまそうな特大おにぎりだなあ!」


本日何度目かのやり取りをしながら、

弁当箱代わりのパック

(スーパーでコロッケとかが入ってるやつ)

を指差す。


じさまから、

「まちくたびっちゃぁ(待ちくたびれた)!、

ばあちゃんに、弁当の催促して来ぉ!」


との指令を受け、台所の

様子を見にやってきたのだ。


今日のメニューは自家製の

梅干し入りのおにぎりと、

塩(愛情)たっぷりの卵焼きのようだ。


「やんだおら、じさまに弁当作れって

言わっちゃけんじょ、

おめぇの分も足りっかま?

もっと作っかよ?」


じさまから弁当作りのミッションを

与えられていたことを思い出し、

照れ隠しなのか何なのか、

さらに愛情(塩)たっぷりの弁当を

量産しようとするばさま。


孫をいつまでも高校生の食欲の

ままだと思ってもらっては困る。


「いやあ、これだけありゃあたくさんだ、

うまそうだなぁ。じゃあ山に

出かけっからなぁ。念のため

玄関の鍵はかけといてくれな。」


ばさまは孫と顔を合わせて早々に

送り出すことになって

名残惜しそうな顔をしながらも

(実際早朝から顔を合わせていたのだが)、

じさまと協力してテキパキと

採りものの準備を進めていく。


最低限の言葉を交わすだけで仕事を

こなしていくさまは、熟練の、

身に染み付いた夫婦の

役割分担の歴史を見るようだ。


夫婦で木工所を経営していた時から、

変わらないのだろう。


祖父母と言っても、気安く踏み込めない部分というのは、ある。



積み込みを終えて、作業用のボロ軽4に乗り込む。


ところで、今日のじさまは、

いつにも増してやる気に満ちている。


なんせ、2週間ほど前に

いつものポイントに足を運んだところ、

谷川に大水が出た直後だったようで、

綺麗さっぱり(?)泥水に

洗い流されてしまっていたのだ。


それでも、これから芽が出てきそうな

株を確認し、ちょうど伸びてくる頃を

見計らって今日、

再アタックするというわけだ。


「・・・ばあちゃんは、

おめぇの顔見てよろこんでたべ、」


孫にこれから行く道の指示を飛ばし、

ついでに山菜採りの手順についての

講義を挟みながら、助手席で

ふと思い出したようにつぶやく。


ん?


らしくない雰囲気を感じながら

次の言葉を待つが、バツが悪くなったのか、

いつもの調子に戻る。


「いやぁ本当に、ばあちゃんには困っちまぁ!

弁当作んのにも悠長にしてっがら!」


そうだねぇ、まあ年取ったら

いろいろあるさと返しながら、


帰ってからばさまに「どんなもんだ」と

言わんばかりに籠いっぱいの山菜を

見せるであろうツンデレなじさまと、


大喜びで孫に料理を振る舞って

くれるであろうばさまのことを

考えるのだった。



続く。

いなかま とっきー

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