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【ライフハック】社会保険料率の見直し【協会けんぽから健保組合へ】

経営戦略コンサルタントのちょーすです。

もし現在勤めている企業の社会保険が協会けんぽであれば、従業員の可処分所得を増やすことが出来ます。

国民皆保険制度

大前提として、日本には「国民皆保険制度」という制度があります。

この制度は、全ての日本国民が公的医療保険に加入し、保険料を負担し合うことで個人にかかる医療費を軽減することを目的としています。

国民皆保険制度を支えているのが「社会保険(健康保険)」と「国民健康保険」の2つの保険制度です。

社会保険(健康保険)は、企業に勤めている会社員や条件を満たしている短時間労働者(アルバイトやパートなど)が加入する保険で、国民健康保険は、フリーランス・自営業者や年金受給者等が加入する保険を指します。

今回はこの社会保険について解説します。

社会保険

社会保険(健康保険)の運営主体は、「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の2種類あります。

健康保険の運営主体は「保険者」と呼ばれます。

この2つは行なっている活動は概ね同じですが、加入の特性もあり、大きく4つに違いがあります。

保険料率
従業員の保険料負担割合
付加給付
福利厚生・保健事業

健康保険組合(健保組合)

健康保険組合は企業単位または業界単位という小集団のメリットを生かした自主的な運営により、効果的な事業を展開しています。

自主的に保険料率を設定できる
従業員の保険料負担割合を折半より低くできる
付加給付を実施することで、従業員や家族の窓口負担などを軽減できる
企業の福利厚生を代行して人間ドックの助成や運動奨励事業といった疾病予防につながる保健事業などを任意に実施できる

大きく企業が単独で設立する単一健保組合と、2以上の事業所または2以上の事業主が共同して設立する総合健保組合があります。

単一健保組合

単一健保組合は大企業が設立している健保組合で、上場企業や大規模医療法人が主な対象です。

設立の要件は事業所で働いている被保険者が常時700人以上となります。

1 単一組合等の認可基準
(1)単一組合(1事業所の事業主が単独で設立する健康保険組合をいう。)を設立する場合には、次に掲げる要件に該当しなければならない。
ア 健康保険組合(以下「組合」という。)設立の際の被保険者数が概ね700人以上であり、今後もその数を維持することが確実であると見込まれること。
イ 組合設立の際の保険料収入に対する法定給付費(老人保健拠出金、退職者給付拠出金等の拠出金を含む。)の割合が75%程度にとどまり、将来にわたって健全な組合財政が維持できると認められること。ただし、被保険者数が相当多い等、将来にわたって安定した事業運営が見込まれるものについては、当該割合を超える場合であっても差し支えないこと。
ウ 組合の規模等を勘案して、適正に組合事務を遂行するため必要な事務処理体制が確保されること。
エ 過去における健康保険に関する実績が良好であること。
オ 当該組合を設立しようとする事業所の事業運営が将来にわたって良好に行われること等により、公法人としての組合の円滑な事業運営が期待されること。
(2)中心となっている事業所の事業主との間に資本関係等において密接な関係を有する2以上の事業所の事業主が共同して設立する組合及び中心となっている事業所の事業主を除く他の事業所の事業主のみが連合して設立する組合については、単一組合と同様とし単一組合の基準を適用する。

健康保険組合設立認可基準

企業単独で保険料率の改定や福利厚生等の意思決定が身軽に出来るのが特徴です。

総合健保組合

総合健保組合は単独では設立が難しくても、業界団体等で集まって規模を大きくすることで設立できる建墓です。

設立の要件は2以上の事業所で働いている被保険者が常時合計で3,000人以上となります。

2 総合組合の認可基準
総合組合(同種の事業を行う2以上の事業所の事業主が共同して設立する組合又は一定の地域に所在する業種を異にする2以上の事業所の事業主が共同して設立する組合(1の(2)に該当する組合を除く。)をいう。)を設立する場合には、1の(1)のイからオまでの要件の他次に掲げる要件に該当しなければならない。
(1)同種の事業を行う2以上の事業所の事業主が共同して設立する組合
ア 組合を設立しようとする事業所の事業主相互間の協調が十分であり、かつ、各事業所間の共同意識が旺盛であること。
イ 各事業所の事業主に対し、工業会、協会等事業運営の合理化、事業活動の共同化等に関して指導統制力を有する組織が存在し、設立後の組合の事業運営が円滑に行われると認められること。
ウ 組合設立の際の被保険者数が概ね3,000人以上であり、今後もその数を維持することが確実であると見込まれること。ただし、各事業所の被保険者数の規模、平均標準報酬月額、平均年齢、扶養率等を総合的に勘案し、将来にわたつて組合の保険財政が健全に維持できると認められる場合にあっては、その数を下廻って差し支えないこと。
(2)一定の地域に所在する業種を異にする2以上の事業所の事業主が共同して設立する組合
ア 組合を設立しようとする事業所間に卸商業団地、流通センター等の共同事業を行う協同組合等が組織され、かつ、当該協同組合等が各事業主に対し適切な指導統制力を有し、設立後の組合の事業運営が円滑に行われると認められること。
イ 2の(1)のア及びウは同様であること。

健康保険組合設立認可基準

単一健保組合と比べると、複数の企業が集まって運営されるので、運営の意思決定の身軽さは劣ります。

また業種は同様なので、給与水準としてはそこまでの大きな格差はないと思いますが、扶養人数や医療費の額で健保組合の運営という点で足を引っ張ってしまう企業がいるのは間違いないです。

単一健保組合を設立できる程の規模が無い場合、もちろん親しい企業等と独自で総合健保組合を設立することも出来ますが、既に設立されている業界系や地域系の総合健保組合に加入する方がメリットを早くに教授できると思います。

既に設立されている健保組合は公表されているので、こちらで確認して該当の総合健保組合に直接加入出来るかの問い合わせをしてみるのが良いと思います。

全国健康保険協会(協会けんぽ)

協会けんぽは、2008年10月に設立された医療保険者で、健康保険組合に加入していない被保険者を対象としており、中小企業の多くは協会けんぽに加入しています。

前身は社会保険庁が運営していた政府管掌健康保険であり、協会けんぽ設立時に健康保険事業が引き継がれました。

保険料率は元々は全国一律でしたが、2009年から地域毎の医療費の実態に合わせて、都道府県毎に異なります。

2022年度の山口県では10.15%となっており、介護保険第2号被保険者(40歳から64歳までの方)は、これに全国一律の介護保険料率(1.64%)が加わります。

基本的には保険料の負担は企業と従業員で折半です。

具体的な例

私は社会人になるまでは協会けんぽ、社会人になってからしばらくは協会けんぽでしたが、数年後に単一健保組合が設立されました。

その後、転職した先で総合健保組合と、気が付いたら3形態それぞれを渡り歩いていました。

協会けんぽは全て詳らかとなっているので、詳細は割愛します。

単一健保組合は2022年度の保険料率は%で、その後転職して、関東ITソフトウェア健康保険組合になり、保険料率は8.5%となりました。

たまに健康診断等で利用したら、付属のレストランを利用するくらいですが、都内に立派なビルも所有しています。

私は山口県で暮らしていますが、山口県の協会けんぽだと10.15%ですが、健保組合のお陰で8.5%の保険料率となり、額面給与は同じとしても1.65%ほど可処分所得が増えている状況です。

この総合健保組合はIT企業やベンチャー企業が多いため、所得が高く、医療費が掛かっていない従業員が多いため、総合健保組合の中でも安定した運営をしている健康保険組合です。

そのため、福利厚生のメニューが充実しており、保養施設として提携しているホテルも多く、スポーツ施設やゴルフ場も多く提携しているため、従業員は特別価格で利用することができます。

更にこの健保組合は東京都総合健保保健施設振興協会にも属しているため、このサービスも受けることが出来ます。

主に関東周辺の保養施設やイベントばかりですが、インフルエンザの予防接種は契約医療機関であれば、利用券を発行して、組合からの補助が受けられるので、安価になります。

この契約医療機関は全国各地にあり、山口県で私の近くにもあったので、メリットを享受することが出来ます。

これとは別で独自に企業の補助がある場合はそれも受けることが出来ます。

まとめ

単独で健康保険組合を設立できる程の規模がある企業は単独で設立するのが良いですが、小さい企業でも協会けんぽから脱退し、どこかの総合健保組合に加入する方法を検討されてみては如何でしょうか。

審査等があるとは思いますが、もし加入出来ればそれだけで、従業員の可処分所得が増え、更には福利厚生のメニューを充実させることが出来るかも知れません。

単一健保組合の設立については、もちろん独力でも出来ると思いますが、初めてのことばかりだと思いますので、設立支援をするコンサルティングファームや社会保険労務士事務所があるので、興味があれば相談されてみてもいいかと思います。

健保組合の運営的には「所得が高い」「医療費が安い(年齢が若い・扶養家族が少ない)」が当てはまる従業員が多いとメリットが出やすく、スポーツチームや興行団体のような企業が1番良くなります。

実際、宝塚歌劇団は阪急電鉄のグループですが、本体とは切り離して、健保組合を運営しています。