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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.251 読書 伊坂幸太郎「SOSの猿」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 伊坂幸太郎さんの「SOSの猿」についてです。


伊坂さんの中で中期あたりの作品。

いつものように違う話が並行して語られ、最後に伏線回収が素晴らしく面白いが、今作はちょっと今までの作品とちょっと毛色が違う部分がある。

死神が出てきたり、確かにちょっと現実的じゃない話もあるけど、伊坂さんは基本割と現実的なキャラクターの話が多い気がする。

ただものすごいリアリティを追求する作家ではなく、物語がどんどん進んでいくところが魅力。

今回ちょっと違和感があったのは、孫悟空の猿が出てくるところ。

ファンタジーかというわけでもなく、唐突に出てくることの違和感が面白い。

まあもちろん伏線回収の魔術師の伊坂さんなので、その部分も含めて最後には上手く収めてしまいますが、違和感は残ったまま。

この辺り「あるキング」など伊坂さんの作品の中でモヤモヤ期と呼ばれいるらしいが、なんでも上手く伏線回収してしまいこれぞ伊坂幸太郎と呼ばれるのが嫌で、違和感を作品の中に入れたのではと想像します。

こういう作家さんで新しいことに挑戦する時期の作品って面白いですね。



物語は、主人公は家電量販店の店員、副業でエクソシストをしている。

ある日、知り合いのお姉さんから引きこもりになった息子に会ってくれないかとお願いされる。

その引きこもりの息子に悪魔がついているのではと思っているらしい。

主人公は人が困っていると放っておけない性格でした。

ファミレスでお婆さんが男から取り立てにあっているのを見ます。

もう一つの別の話、証券会社の総務の男性。物事を客観的に考え効率的に行動する性分。

女性プログラマーと話し合っていると、その女性が話を切り上げたくてイライラしてサソリに変身します。

別に気にもせず、話し合っていることについて追求します。

そこへ会社から連絡があり、証券会社のシステムの不具合で大量の誤発注をしてしまったと。

何百億も損失が出て、原因究明を依頼される。

また話は悪魔祓いに戻ります。

彼はコンビニの駐車場で歌うおばさんに出逢います。コンビニの店長と歌の仲間でした。

そのコンビニは引きこもりの息子がよく行っていたお店でした。

そんコンビニでは店員が交通事故で亡くなっており、轢いたのが先ほどのお婆さんだと気がつきます。

引きこもりの息子と、コンビニの歌グループが交流を持っていたことがわかります。

引きこもりの息子の部屋へ行くと、本棚が倒され、西遊記の本が床に散らばり、息子は気を失っていました。

意識を回復した息子は自分を孫悟空だと名乗りました。

証拠に外を歩いている男(証券会社の総務の男性)の未来を予言すると言います。

悪魔祓いは証券会社の男に突然声をかけ、株のご発注の事を言います。

話を聞くと、引きこもりと証券会社の男はコンビニで面識があり、そこから予言が生まれたと考えます。

誤発注をした社員の部屋の隣に死体があり、それが原因だと言われ、歌仲間も皆で見に行きます。

しかし死体はなく、その部屋には首輪があり虐待が行われていたことがわかります。

そこへ猿の化身が現れ、引きこもりの息子が虐待する男を襲い子供を助けているところを教えます。

虐待していた男は逮捕され、家電量販店で働く主人公も、証券会社の総務の男も、依頼したお姉さんも、引きこもりの息子も、それぞれ前向きに生きていきました。



物語は2つの話がどんどん進んで、ある地点で合流して、まあ面白いです。

ただ孫悟空が突然出てきたり、訳がわかりません。

ファンタジーならまあそれでおさまりますが、割と現実のお話がメインなので
どうもファンタジーではありません。

悪魔祓いと孫悟空という一致点のないお題を、そこを手練れの伊坂さんが強引に物語にしたような感じがします。

ある漫画家と悪魔祓いと孫悟空を掛け合わせるアイディアをもとに、それぞれ漫画と小説を作るという企画で生まれたので、そこが今までの伊坂さんと違うかもしれません。

もう伊坂さんなら、バナナと織田信長でも、火星人とレコードでも、なんでも小説にしてしまうでしょうね。

違和感はあるけど、やはり物語をどんどん転がして、どんどん広げていき、色々な人が連鎖して、それを魔法のように伏線回収する伊坂ワールドは健在でした。

もうどんな内容でも、その伊坂ワールドを堪能できれば良いのでは。

今日はここまで。




「子供のことが分からないけど、分かりたい」そう思っているくらいがちょうどいいんじゃないか」
/「SOSの猿」より













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