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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.365 読書 郷内心瞳「拝み屋怪談 怪談始末」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 郷内心瞳さんの「拝み屋怪談 怪談始末」についてです。


実話風怪談短編集。

実話なのか、創作なのか本当のところはわかりませんが、

作者は宮城県で”拝み屋”を営んでいる郷内 心瞳さん。

拝み屋は祈祷師、霊媒師、霊能力者、霊媒を生業としているもの。

現役の拝み屋さんなので実体験や人から聞いた話をとても上手く怪談にしている。

それも1ページから数ページの短い怪談ばかりで、割と淡々と語られている。

多分実話ベースなので、その怪談にオチや理由がなく、ただ怪異を体験する話が多い。68話ある。

その不思議な出来事がリアリティを持っているので、じわじわと怖くなってくる。

ただ郷内さんの体験談と、聞いた怪異が語られるだけなら、あまり記憶に残らなかったかもしれませんが、

”桐島加奈江”という女の子の話が入ってきてから急展開する。

郷内さんは中学生の頃、いじめに遭い、クラスメイトから集団無視されていた。

そんな中唯一夢の中で桐島加奈江という女の子と仲良くなり、熱帯魚屋さんに行ったり、友達を紹介してもらえたり、ずっと遊び続けた。

現実ではずっと無視が続き、夢の中へ逃避行するように眠り続けた。

食事とトイレと金魚の世話以外は寝続けるようになった。

ある日起きている間用事を頼まれ、街へ行くと夢の中と同じ金魚屋さんがあり
妙なデジャブ感を味わう。

そして街の中で、夢の中でしか会っていない桐島加奈江に現実に会った。

しかし彼女の両目は見開かれ、口は耳まで裂けていて、笑っていた。

それが初めて現実に会った桐島加奈江だった。

それから拝み屋になった郷内さんは、会社のパワハラで鬱になり自殺しようとしてビルの屋上から下を見ると桐島加奈江をいておいでおいでと手招きをする。
郷内さんは急いでビルを後に逃げ出す。

それから妻とショッピングセンターへメガネの修理へ行った時のこと、
また桐島加奈江に会う。彼女が人にぶつかったりして、単なる自分の幻覚とは違い実存していることに気が付く。
すれ違う時耳元で「しにぞこない」とささやかれる。

自宅の電話に女性から電話があり、相談を受ける予約をする。
名前を聞くと「桐島加奈江」と。
当日約束の時間になっても来ない。
実は3時にと言っていたが昼間ではなく夜の3時だった。
真夜中すりガラスの向こうに桐島加奈江の姿が見え、郷内さんは気絶する。

旅行へ行ったとき妻の前に桐島加奈江が現れ、今まで妻に心配かけまいと内緒にしていた桐島加奈江の話をする。

という感じ。

最初夢の中で出会い、その後じわじわと現実の中でも会うようになる。
化け物のような存在、絶対付き合ってはいけない存在と言っている。

そう、妙に桐島加奈江の話だけ別格に存在感を放っている。

今作では六話だけ書かれているが、今後もいろいろと関わっていきそうで楽しみです。

他にもいろいろなお話があるが奇妙な石を巡る原因不明の病気にかかる話は壮絶過ぎて怖かった。

お味噌汁の中に金魚がいる話は怖い話の中で唯一可愛くホッとする話だった。

まあとにかくショートショートの怪談話だが、実話風なので今まで読んできた怪談とはまた違う楽しみがありました。

シリーズ化されているので今後の展開が楽しみです。特に桐島加奈江との因縁がどのようになるのか。

今日はここまで。




けれども恐ろしく現実感のある夢だった。たとえば夢の中で「これは夢だ」と言われても、即座に「嘘だ」と否定してしまえるような、ひたすら生々しく写実的な夢である。
/P.121 「拝み屋怪談 怪談始末」より









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