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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.290 読書 ジョージ・オーウェル「一九八四年」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は読書 ジョージ・オーウェルの「一九八四年」についてです。


今わずと知れた名著「一九八四年」。

デストピアの世界を描くSF小説の元祖。

ここからいろいろな小説や映画や音楽が生まれた。

普段読書は娯楽暇つぶしだと思っているので、こういう名著は年に数冊しか読まない。

けどこの本は翻訳がいいのか(新訳版とある)、今の近代小説やSF並みに面白く読みやすかった。

そしてこれは1949年に刊行した作品と知り驚き。1945年に第二次世界大戦が終わってすぐに、こんなSFを書けるとは、いったいどれだけ想像力と科学技術についての知識があるんですか!

今の中国や北朝鮮、昔のソ連を彷彿させるような、全体主義国家による監視社会を描いている。

トリュフォーの「華氏451」、ルーカスの「THX 1138」、「リベリオン」
「時計じかけのオレンジ」、伊藤計劃の「ハーモニー」など。

やはり元祖の今作「一九八四年」が一番怖い。

単に行動だけでなく、思想まで監視される世界。

ある意味、ナチスやソ連の時代からより進んで、防犯カメラやネット監視も進み
より今の時代の方が、この「一九八四年」に近づいているのでは。



物語は、1950年代に核戦争による第三次世界大戦が起こり、1984年の現在は世界は3つの超大国に分割されていた。

その三国による紛争はずっと続き、この物語の舞台のオセアニアは、行動、思想、結婚、仕事もあらゆる全て統制され、市民はテレスクリーンから行動を指示されて、朝から晩まで全ての行動を当局に管理されていた。

オセアニアの最大都市のロンドンに主人公は住んでいる。

当局の下級役人として、日々歴史の改ざん作業をしていた。

歴史は日々変えられ、昔のことはもう存在していたかどうかもわからなくなっている。

ただ機械のような毎日を送っている。

ただ主人公は古道具屋で買ったノートに自分の考えを書くという禁止されている行為を誰にもバレないようにひっそりとやっていた。

ある日毎日のように歴史を改ざんしていたら、抹殺された人物が載っている新聞記事を見つけた。

次第に当局への不信感が彼に芽生える。

そして、同僚の若い女性から、手紙を受け取るようになり、次第に彼女の話を聞くようになり、惹かれるようになる。

古道具屋の隠れ家で彼女と頻繁に会うようになり、さらに当局内の高級官僚に会い今の体制に疑問を持っていることを告白し、禁書を渡されて今の体制の裏側を知ることになる。

しかし、その古道具屋の密告から主人公と女性は思想警察に捕まり、

尋問と拷問を受ける。

主人公は徹底的に思想を打ち砕かれ、党を愛するようになり死刑の日を待つことになる。



もう物語はシンプルだが、まさに原典。

日記で体制に疑問を持ち、愛によって自由を知り、密告で捕まり、拷問でまた洗脳されてしまう。

世界観も全く古びていなく、テレビ電話などまさに今の時代でも十分通用する。

なんなんでしょう、この圧倒的なリアリティは。

日本の終戦時代にこんなことを書ける人、いや想像する人さえいなかったと思います。

確かにナチスに支配され、ソ連が台頭してきて、ものすごい全体主義への危機感があったからだと思います。

けど時代の流れや危機感はわかりますが、それでもこんなすごい作品を作ったのは奇跡としか言いようがありません。

今後どんなに影響を受けたたくさんのデストピア作品ができても、この原典の「一九八四年」の輝きは失われないでしょう。

本当に怖い作品。けど読むべき作品。

今日はここまで。



「思考を表現する言葉がなければ、考えることもなくなる」
「すなわち『思考犯罪』の撲滅につながる」
/「一九八四年」より


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