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趣味は「映画と読書と音楽」と言っても良いですか? vol.250 映画 ジョン・エリック・ドゥードル「クーデター」

こんにちは、カメラマンの稲垣です。

今日は映画 ジョン・エリック・ドゥードルの「クーデター」(2015/米)についてです。


アジアでクーデターが起こり、標的は外国人。海外赴任でやってきたアメリカ人家族は脱出できるか。想像を絶するパニックスリラー。

もうめちゃくちゃ怖かったです。

下手なホラー映画より、妙にリアリティがあって。

主人公の家族の父親を演じるのがコメディ俳優のオーウェン・ウィルソンがまたなんとも良い。

これが筋肉ムキムキの俳優さんだったら単なるアクションムービーになってしまうところ、戦い方なんてわからない普通の一般人だからこそ、恐怖が倍増する。
配役が素晴らしい。

その家族を助けてくれる人物に007の俳優ピアース・ブロスナン。
まあプロフェッショナルな彼のおかげで家族は助かるのですが。
歳を取ってもかっこいい。

監督ジョン・エリック・ドゥードゥルがホラー出身なのがまた、このリアルで恐ろしい物語の演出にピッタリです。最初からずっとドキドキ感が続く演出は凄い。
もちろんその恐怖の中に緩急をつけて全く飽きさせない。

まあこの映画あまり大ヒットというイメージはないが、なかなか印象に残る作品でした。

リアリティのある恐怖こそ一番怖い。



物語は、東南アジアの某国、ここでクーデターが起こる。

その国に支援事業のために家族を連れてアメリカ人技師の主人公(オーウェン・ウィルソン)が赴任してくる。

空港で初めてきた国の習慣に戸惑っているところに、その国に何度も来ている西洋人(ピアース・ブロスナン)と知り合い、ホテルまで連れて行ってもらう。

翌日街へ出かけると、暴徒化したデモ隊と警察隊との衝突に巻き込まれる。

命からがらその場を逃げ出せた主人公は、この国でクーデターが起こったことを知る。

クーデターを起こしたデモ隊は政府だけでなくこの国を食い物にした外国人も標的にして次々と処刑していく。

主人公は急いでホテルに戻り、家族と共に脱出しようとする。

目の前でホテルに滞在している外国人が虐殺され、主人公の家族は寸前のところで
ホテルから逃げ出す。

ただ街中でもそこらじゅうで虐殺が行われ、絶体絶命の時、空港で会い仲良くなった西洋人(ピアース・ブロスナン)が助けてくれる。

彼はイギリスの国の機関の人間でこの国でいろいろな活動をしていた。もちろん単なる支援だけでなく、グレーなことや政治的なことも。

彼や彼の仲間と共に、隣の国へ逃げるルートを教えてもらう。

束の間の休憩で主人公と彼は語り合う。

突然デモ隊が襲ってきて、命からがら隣国との国境に近い川まで逃げていく。

果たして家族は脱出できるでしょうか。



今の時代、ホラー映画やサイコサスペンスや戦争映画など怖い映画はいっぱいある。

ただやはりそれらは今の現実とは繋がっていなく、遠い話や空想の話のように思える。

今作はもし海外旅行してクーデターが起こったら、というものすごくリアルにあり得る話で、それが怖い。

それも現地の人が国を破壊した外国人を虐殺していく、そう”人間”が恐ろしい。

たくさんの暴徒が無差別に殺していく恐怖。

ここ最近見た映画の中でも、最も怖い。

どんなシリアルキラーの話や幽霊よりも。

自分が無力で、全く個人的に理由もなく、ただ虐殺されていく。



この題材を多分普通に撮ったら、ふ〜ん怖いね。まあ海外の出来事かなと遠い世界のように見てしまう。

そこはこの監督ジョン・エリック・ドゥードルは、ホラー出身で、

カメラの視点を利用したドキュメンタリー風ホラーの演出を得意としているから
このリアルな”恐怖”を演出できたのではと思います。

このリアルな演出は「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」などが有名ですね。

擬似ドキュメンタリー。

擬似ドキュメンタリーもものすごく進化している。

もう本当にその場にいるような感じがする。




この映画の中でいろいろな怖い演出があるが、やはり印象的なのは

ホテルの中にゲリラが流れ込んできて、次々と宿泊者を殺していく。

屋上へ逃げたが、ヘリからのマシンガンで屋上へ逃げた人々も蜂の巣にされ

主人公の家族は、隣の建物へジャンプして逃げなくてはいけない。

でも幼い娘たちでは絶対飛び越えられない。

そこで母親が先に飛び越え、父親が娘を放り投げるシーン。

もうここは心臓がバクバクするほど怖く手に汗を握る。

この映画、本当に演出が凄すぎる。



こういうメジャー映画ではないがピリリと演出が光る独立系の作品は面白い。

もちろん日本映画の何倍もお金はかかっているが、低予算だが独立系で誰も口を挟まず演出に妥協しない作品。

メジャーで大作だと子供を投げるシーンや暴徒が虐殺するシーンは難しい。

プロデューサーや関係者がノーと言って、当たり障りのない演出になってしまう。

今作は妥協がないからこそ、とてもリアルで怖くて面白い。

今日はここまで。




映画の中で親友や家族を演じるのは大変なことさ。出会ったばかりの人が親友なんだ。どうやって親しい空気感を作る? ドゥードル兄弟は、家族のキャストを早めに集めてリハーサルを重ね、一緒に過ごさせてくれた。撮影が始まる前に、みんなで遊びに出掛けたり、ゾウを見にタイの自然公園へ行ったりもした。そういうささやかなことが積み重なって、居心地の良さや親しみが生まれるんだと思う。
/オーウェン・ウィルソン













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