「広島焼き」という呼称について、余所者が真剣に考えてみる　④広島県民の生の声が聞きたい

Twitterで情報収集

自分の感覚を確認し終えたところで私は、これ以上想像だけを巡らせても埒が開くまいと、人々の（特に広島県民の）生の声を聞くべく情報収集を開始した。

こういう時、Twitterは便利である。偏りがちではあるけど、この場合の偏りはこの「広島焼き問題」に対しても、感情的でもなく決めつけでもなく、ロジカルな分析が集まるであろう偏りなので、むしろ望ましい。

じつはちょっと煽るような投稿で軽く炎上させたら、より多くのビビッドな反応が得られそうな気もして心が揺れたが、その増分は結局ノイズにしかならないものがほとんどだろうと判断してやめておいた。第一、私の弱メンタルはそれらを処理しきれないかもしれないし。


「『広島焼き』の何がそんなに嫌なんだろう」という問いかけに対し、まずは非広島県民の方からの面白い見解があった。


推測ですが、お好み焼きの本流ではなく傍流というイメージを嫌ったんじゃないでしょうか？

ローカルなお好み焼きではなく本来のお好み焼きがコレだ！という。

明白に外からもたらされたという認識が無い限り、自分たちが本物、本流という自負があるのは当然じゃないかと思うんですよ。特にお好み焼きにおいては大阪というもう一つの勢力があるので、自分たちは広島焼き、大阪はお好み焼きでは、「負け」という認識になるのが普通ではないでしょうか。
https://twitter.com/eyeofthera/status/1450416617393844226?s=21


ここには何らかの真理が含まれてそうな気はしたが、しかし今より情報伝播が困難な時代だったとはいえ、広島県民があれを「本流」と捉えていたとはちょっと考えられないと思ったのも事実だ。

それに、彼らに「お好み焼きナショナリズム」的なものがあるとするならば、それはむしろ

「そんじょそこらの『混ぜて焼くだけ』の普通のお好み焼きと一緒にするな。ここのは『特別』だ。」

という方向に向かいそうな気もしたのだ。

「主流」の平凡なお好み焼きに対する「スペシャル」なもの、という意味で。

大阪との関係性？

しばらく経ってついに広島県民からの冷静な分析が届いた。


広島出身です。やはり大阪との関係ですね。

「お好み焼き」では得体が知れないから「広島焼き」という固有名詞をつけるならいいんですが、すでに別の「お好み焼き」が定着している中での名付けなら「ジャナイ方」感が強くなる感じがします。

ちなみに素朴な感覚として、広島が発祥とか本流とかいう意識はなかったけれど、大阪からの派生ではないというのも妙に確信めいたものがありました。

お互い共通祖先からの分化というか。

https://twitter.com/naotani/status/1450604200891539462?s=21


こちらは先ほどとは違い

「発祥とか本流という意識はなく、（大阪も広島も）共通祖先からの分化」

とある。

この「共通祖先からの分化」というのは、もちろん私も同じ認識である。

しかしそれでありながら「ジャナイ方」と思われるわけにはいかない、という強い（過剰な？）警戒心。これはどういうことなのか？　なぜそこまで警戒する必要があるのか。ていうかそもそもなぜ「ジャナイ方」ではいけないのか。それは「特別な存在」と同義ではないのか。


もうひとかた、広島県人より。


ここで重要なのは関西風に対する対抗心(劣等感)だと思うんです

厳密には「広島焼」という呼称が気に入らないのではなく、「関西焼」という呼称が無いことが不愉快ということだと思われます。

広島焼という呼称を使う人の中では、関西風のアレは「お好み焼き」と呼ばれているので…

自分たちが「お好み焼き」だと思っていたモノが、「亜流」として関西人から見下される(ように感じる)要素の一つになっていることが気に入らないというわけです。

そこまでオリジナルを主張したいワケではなく、なんか関西方面から格下あつかいされてる気がするのがキツいということです

https://twitter.com/skebenkei/status/1450645553117728771?s=21


先程に引き続いてこちらでも

「関西（大阪）に対する対抗意識」

が最も大きなファクターとして言及されている。

大阪はたしかにお好み焼き界の最大勢力ではあるけれども、なぜ大阪だけをそこまで意識しなければいかないのか。なぜ「俺たちは特別である」というプライドではなく「見下されてはならぬ」という警戒心が先に立つのか。

そこまで考えて、私は

「あっ！」

と気付いた。

彼らと私では、お好み焼き文化に対する歴史認識の差異があるのではないだろうか。
「怒っている人たち」はもしかすると「広島風ではないお好み焼きは全て関西風」という認識なのだろうか。そうであれば「対抗意識」というのもなんとなくはわからなくもないのだが……。

次回はこの点をもう少し掘り下げてみたい。