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教えない先生による中学理科クラス③ 「真冬にテラリウムを作る - その1」

中学理科クラス「教えない先生」シリーズ。①「課題も自分も『映え』重視」②「至急子宮を作る」に続き、早くも3本目です。

ストライキにより他の先生方も多くを教えられない状況下ですが、それを補うべく計画的に宿題を出したり、要点を端的に教えようとする先生方とは対照的に、相変わらずな彼。限りある授業時間だというのにジョナサン・ヴァンネス(Jonathan van Ness ↓)ばりに突如授業中ポージングを始めたり、生徒達が地球温暖化に関するシビアなドキュメンタリーを観ている間、自分はスマホでおもしろ動画を見て静寂の教室内で突然笑い出したり。そしてスト連休前には、思いつきで前夜に決めたのではと中学生すら疑わずにはいられないアバウトさで課題が出されました。

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ストライキ中のミッション : テラリウムを作れ

テラリウムとは、密閉されたガラス器、または小口のガラス瓶などの中に小型の植物を寄せ植えし、インテリア装飾として観賞栽培する技術のこと。イギリスの医師で園芸家のナタニエル・ウォード (1791~1886) が考案した、ガラス製の植物輸送容器「ウォードの箱 (Wardian Case)」が原形となっていると言われています。密閉状態の容器内では、土や葉の表面から水分が蒸発して飽和状態になると水滴になって用土に吸収され、再び植物の根から吸い上げられる循環が繰り返されます。よって、この空間サイズと環境に適する植物を入れ、適切な水分量を見定め環境条件が安定させられたところで密閉すれば、理論上密閉瓶の中で植物が生き続けられるのです。

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水について学んでいたようなので、テーマとしては非常に興味深いのですが、残念なのは先生のテラリウムへの理解と準備がとにかくテキトーであること。
「テラリウムに水を張れば、お魚ちゃんも飼えるのよ!」と言う彼に、「先生、それはテラリウムでなくアクアリウムだと思います。」と冷静に突っ込む中学生達。

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密閉瓶の中に水の循環系を作ることが目的だと最初に自分で言っておきながら、参考に見させられたYouTube動画の完成テラリウムは蓋がないタイプ。「先生、このテラリウム、蓋がないと思うんですけど?」と、もはや苦笑する生徒達。

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「テラリウム」とキーワード入力し、その場で適当に選んだYouTube動画を観せている感バレバレな中、次はイギリス人小学生がテラリウム風のものを作ろうとする動画をチョイス。「子供もテラリウム作ってるわよ!」と観せ始めたこの動画で、少年は制作過程を説明しながら庭の土や草を昆虫飼育箱のような容器へ雑に投入。普通にダンゴムシや小さなカタツムリも紛れている、曇り空の下での少年の地味な泥仕事。さらにはその少年のイギリスアクセントが強過ぎて、何を言っているのかよく理解できないカナダ人中学生達。そして彼のテラリウムもどきも、またして密閉されていないというクライマックスを迎えたのでした。

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的を得た動画が観られないまま鑑賞タイムは終了。「では皆さーん、これらを参考に計画表を作りましょう!」と無茶振りする彼なのでした。

そして彼が教室に持ち込んだのは、学校の備品庫で見つけたという、大きな直方体の容器3つ。娘の描写からするに、それは明らかに水槽。蓋のような役割を果たせるアクリル板も付いていたようですが、それで密閉できるかは微妙です。この水槽を複数人で使ってグループプロジェクトとするも、自分で容器を用意して個人プロジェクトにしてもいいという緩いルール。

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休校中に数人と連絡を取りあって役割分担をし、期日までに一つのものを作りあげるなど、このクラスメート達とでは無理だろうと秒速で悟った娘は、個人プロジェクトを選択。実際に参考になる資料を自分でオンライン上に見つけて読み込み、必要なものリストを作成して帰宅しました。

密閉容器に加え、下から順に小石活性炭、(土がすり抜けない程度に目の細かい)植物が欲しいとのこと。

ここで家族会議。すべてお金を出せば手に入るものだし、何なら出来合いのテラリウムを何十ドルか出して買えば一瞬で済む話。どのくらいの時間とお金をかけてこのプロジェクトをやるつもりなのか聞きました。すると「先生の付け焼き刃の思いつきでやらされてるこのプロジェクトのために、大金はかけたくない。身の回りにあるものを利用し、限りなくタダで仕上げたい。」とのこと。
ここからストライキ休校中の日中に材料探しをする日々が始まりました。 → その2へ続く。

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