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学びのカタチ ナショナル・コスチュームについて考えてみた その3

カナダ人が国を象徴する衣装、広義での「ナショナルコスチューム」をまとうシチュエーションとは?という逆の切り口から見ていきます。オリンピックの開会式、万博の各国パビリオン、ディズニーランドのアトラクション「It's a small world(イッツ・ア・スモールワールド)」、ミスコンのコスチューム審査・・・いくつか挙がってきました。ここでスポーツ選手団の制服では遊びが少ないと思われるので、逆に振り切ってミスコンのコスチュームに注目してみることに。

ビクトリアズ・シークレットの下着ショー、通称「ヴィクシーショー」でさえも多様性のなさが指摘され、視聴者が減少、中止の決定をしたという時代にありながら、どうやらミスコン文化は脈々と続いている様子です。そこでは「カナダ」という国を、誰目線で誰のためにどんな衣装を通じて表現しているのか、嫌な予感がしつつも好奇心が湧きます。第45代アメリカ大統領トランプ氏が2015年まで独占オーナーをしていた事実からだけも、何かが起きそうな期待感高まる「ミスユニバース」の世界を、あえて覗いてみることにしました。
そしてベンチマークしたこのイベントにおいて、カナダのナショナルコスチュームは以下の4タイプに大きく分けられることを悟るのでした。

【 カナダ代表美女達のコスチューム分類 】
タイプ1:雪国から来ました。
タイプ2:国技はアイスホッケーです。
タイプ3:いろいろと寛容な国なんです。
タイプ4:なんかぁ〜、先住民族とかぁ、いるみたいです。

では順に見てきたいと思います。

タイプ1:雪国から来ました。

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パジャマパーティ感覚のカジュアルさながら、切り紙風のテロテロな雪の結晶の背負うことで存在感を示そうとしている、素人っぽさが可愛らしい彼女。ミスコンで勝つために死に物狂いになっているわけではないことがよく伝わる、自然体で素朴な、ホーザー感溢れるコスチュームです。

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星が散りばめられているのでこれは夜空、北極圏で見られるオーロラをイメージしたものでしょう。装飾はジュディオングや錦野旦的構造かと思いきや、腕には連動せず完全に自立しています。代わりに肩には二宮金次郎ばりの背負子。アナ雪エルサのような世界観を見事に醸し出しながら、ボディースーツはくいだおれ太郎の柄。キメ過ぎないところが素敵です。

タイプ2:国技はアイスホッケーです。

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トロントをホームとするMHLアイスホッケーチーム、Toronto Maple Leafs(トロント・メープル・リーフス)ユニフォームのお色気版。"leaf"(葉っぱ)の複数形は"leaves"ですが、敢えて"leafs"とミススペルするところが粋なのです。右手にヘルメット、左手にスティック、そして運動に不向きなピンヒール。アイスホッケーに必須な防具は身に付けず、ボディライン引き立つスパンデックスのみという丸腰な出で立ちです。ホッケーヘルメットでさえも、遠目にはお洒落なハンドバックのように見せられるのは、美人の特権です。

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ホッケーチームのユニフォームではインパクトが弱いと反省したのか、限界まで国技アピールに打って出たのがこちら。スティックを千手観音風に背負い、頭上にはまさかの得点電光掲示板。パニエかと思いきや、スカートはゴールネットの骨組みです。今回は肘パッドや肩パッドもしっかり装着。頭に乗っている噴水のようなものはスタンレー・カップの盃。NHLに興味がない人にはもはや意味不明なカオス、「カナダ=アイスホッケー」であることを全身で表現したコスチュームです。

タイプ3:いろいろと寛容な国なんです。

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2018年10月17日、私が移住して7週間後、カナダでは医療用の大麻だけでなく娯楽用の大麻の所持が合法化されました。全国規模での合法化はウルグアイに次いで2カ国目というで、世界的にも話題に。カナダには「メープルの葉っぱ」だけじゃない、「カンナビス(大麻)の葉っぱ」もあるんだ、というメッセージを全身で力強く発信した、この大麻コスチューム。セントパトリックス・デーにも着回しできそうです。

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推しの葉っぱがメープルリーフだけだった時代のコスチュームが、どこか古めかしく見えます。

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そしてこちら、年間30万人以上の移民を受け入れる、多民族国家カナダを表現したコスチューム。「盛り込む国旗を選ぶのに必死で、肝心のカナダの国旗を入れ忘れてしまいました」という彼女です。

タイプ4:なんかぁ〜、先住民族とかぁ、いるみたいです。

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カナダ西海岸ブリティッシュコロンビア州に居住するハイダ族のアートがモチーフのコスチューム。それになぜか内陸草原地帯に住む先住民族が身に着けるような頭飾りを被って堂々の登場です。トドメにとったのがこのcigar store Indian的なポーズ。かつてアメリカの煙草屋に飾ってあった、木彫りのインディアン人形がしているような腕組みを模し、満面の笑顔です。「これはハイダ族へのオマージュ、なんら問題はない」と正式コメントを出す厚顔ぶりには脱帽、せめて脱頭飾りをしてから発言して欲しいものです。

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更に度肝を抜かれたのがこちら。バンクーバー島北部の先住民、クワキウトル族からのインスパイアなのでしょう。股間にトーテムポール、アキラ100%さんと大差のない姿です。クワキウトル族は土地の所有を表すものとしてトーテムポールを建てる民族ですが、彼女のようにトーテムポールを金隠しには断じて使いません。
伝説の鳥サンダーバードを想像したのもクワキウトル族。彼女がセサミストリートのビッグバードが焼け焦げたかのような格好をしているのは、そのためだと思われます。そしてここでも「先住民族=頭飾り」という浅はかなステレオタイプにより、ビッグバードの身長(249cm)も見事に実現していると思われます。

まとめ

以上、アマチュア囲碁世界大会への参加機会をいただけたことをきっかけに、カナダの歴史、他民族・他人種へのデリカシー、フェミニズムの動きなど、囲碁とは何の関係もないことに大きく脱線した会話を娘達とたくさん持つことができました。本題のコスチューム選びは先延ばしになっていますが、こうした流動的な学びこそがロックダウンにより意図せず再開することとなったホームスクーリング生活の醍醐味の一つだと思っています。

学校のような時間割を組み、「今は社会科の時間だから、カナダ史を勉強しなさい」とテキストに向かわせるのも一つの学習方法なのかもしれません。ですが、いつになったらこれまでのような「日常」が戻るのか、果たして日常には戻るのか、誰にも分からない情勢を生きています。
学校再開を時間割スタイルを再現しながら待つ日々ではなく、子供達とのたわいない会話を、学びに繋がることへ派生・脱線させる、そのタイミングをめざとく見つけるアンテナを立てて子供達と生活するのが、私の育児スタイルです。

「ナショナルコスチューム」というキーワードから、ツッコミどころ満載な画像を見、史実を調べ、知識として吸収し、その知識をもとに思いっきりツッコミを入れ、一緒に笑う。カナダ史から日本史に飛躍し、「大政奉還」という漢字の書き取りもしてみる。私が子供時代一緒暮らした曾祖父は明治生まれであったこと、チョンマゲはしていなかったけれどいつも着物姿だったことを伝え、150年という時間の感覚を感じてもらう。

学びのきっかけとなるタネ(ネタ?)はどこにでも転がっています。それを取りこぼさない感度を持ち、長引くであろうロックダウン生活を送っていきたいと思います。



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