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岡崎京子の漫画の中に東京があった。

長野県のWeb制作会社ながらおかげさまで都心部の仕事が増えてきました。とはいえぼくは地元長野の製造系BtoB様の仕事がメインで、それらの案件は年下の同僚たちが受け持っています。同僚のWebディレクターが今どんな案件を担当しているのかを互いに共有する時間があるのですが、そこで登場する顧客企業がぼくから見たら「ザ・東京」なんですよね。すごく今っぽいサービスを提供している企業だったり、六本木のど真ん中にある企業だったり。ぼくなんてその度に「うわあ…東京だ…」と思っちゃうんですけど、年下のWebディレクターたちは「この人は何を言っているんだろう」と不思議な顔をしています。実際にフラットな気分でしっかり仕事できているようです。当たり前なんですけど。

もう、どこにいても仕事ができる時代なんだから長野とか東京とか関係ないじゃんというという指摘もわかるし、都心とか地方とか分けるのダサいじゃんもごもっともだし、そんなことに囚われずにフラットであるべきとは分かっているんですけど。ぼくにとっての東京がいまだに10代20代の頃に夢中になって読んだ岡崎京子の漫画なんですよね。『東京カールズブラボー』とか『pink』とか『ジオラマボーイ パノラマガール』とか。進学して上京して、渋谷の広告代理店に就職もしてしばらく生活したけれど基本的にひきこもりだったぼくは「東京にいる」と思えたことは一度もなく。六畳のボロアパートでギシギシ音を立てるパイプベッドの上で読む岡崎京子の漫画の中に東京があった。

『東京カールズブラボー』岡崎京子

これについては小説家の角田光代さんが『私だけの東京』というミニコラムで書かれていた一説がとても響きました。ぼくのことを書いている!と。きっと多くはないだろうけれど、この気分に共感する70年代生まれの人は全国に散らばっているんじゃないかなと思っています。

というよりも、東京で暮らしながら、私は東京の真ん中にはいないという自覚があった。では東京の真ん中は、当時の私にとってどこにあったかというと、小説ではなくてむしろ漫画のなかにあった。『ハートカクテル』や『東京ラブストーリー』や岡崎京子さんの描く漫画や、そのころ読んだたくさんの漫画のなかにあった。

『私だけの東京』角田光代

長くなりましたが、年下の同僚たちが頼もしいなあと思ったという話でした。みんなすごいよ。


岡崎京子の漫画

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