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関係構築はインプットの量が大切。

たまに「なんで稲田さんはお客さんと良い関係性を作れるんですか」と聞かれることがあります。

ぼくのやり方がいいのかは分からないけれど、確かにWeb制作やWeb活用支援のお客さんとはある程度本気のチーム感を作れることが多い。仕事を進める上で大いに助かっています。

インプットの量が大切

ぼくが思うにそれは人柄とか喋りが立つといった属人的なスキルではなく、単純にインプットの量じゃないかな…と思っています。

人は意外と目の前で起きていることをそのまま見ません。誰かの話を聞いている時でも頭の中では次の段取りや用意した答えをなぞっていることは往々にしてあります。「今ここ/LIVE」の情報でいったら10%も入れてないんじゃないでしょうか。せっかく目の前にお客さんがいてLIVEな情報があるのに。

情報は話された言葉だけではありません。口調や音量、言葉の選び方、言い淀み方、身体の姿勢、目の動き、周りの人の目配せや反応、それら全てが情報です。ノンバーバル(非言語)コミュニケーションは多くのことを伝えてくれるという指摘に反対する人は少ないと思います。でも、意識している人は少ない。あるとしても「自分が伝える側の時だけ」のケースが多い。それでは片手落ちです。聞くときこそ相手の言葉以上に非言語な情報に意識を向かわせるべきだと思っています。だって目の前で話してくれているんだから。

言質を取るのが仕事じゃない

顧客との会話や打ち合わせはそういう意味を持っています。言質を取るのが仕事ではありません。刑事じゃないんだから。そもそも言質を取ったからといって仕事が問題なく進むわけもない。そうですよね?大切なのは言質なんかより相互理解を経ての関係性の構築です。

クライアントワークで相互理解をするのならまずは自分たちから顧客を知ろうとするのは当然です。顧客と顔をあわせるMTGはその絶好の機会。それなのに仕事の段取りや自分の答え合わせばかり気にして、目の前の豊富な情報をスルーするのは合理的ではありません。

最初から分析したりまとめたりしない

相手を理解するならまずはとにかく相手を知ることだとぼくは思っています。とにかくインプットする。最初から分析したりまとめたりしない。当然ですよね。高校入学して初対面で話すのと一緒です。相手の話に興味も示さないで「つまりこういうこと?」「なるほど。〇〇については?」みたいにしていては仲良くなれるはずがありません。こちらが興味を示すから相手も少しずつ耳を傾けてくれるようになります。人間関係ってそういうことです。馬鹿みたいに当然の話をしていますが。でも、仕事の現場になるとこんな当たり前の話がなぜか蔑ろにされます。

ヒアリングでよくあるのが「つまりこういうことですよね」と相手の話した内容を要約したがる欲です。議事録を作るのには役に立ちますが、顧客理解に利があるとはあまり思いません。気持ちが要約にいってしまい、目の前で起きている情報のインプットが疎かになるからです。

スキルではなくマインド

その場で答え合わせしたいという気持ちは分かりますが、インプットの総量が少ない時点での答え合わせほど当てにならないものはないとぼくは思っています。映画の予告編だけ見て「つまりこういう映画ですよね」と言うようなものです。そんなことするくらいなら黙って映画をちゃんと観た方がいいに決まっています。観た後にあれこれ感想を言い合うから仲良くなる訳で。少なくとも予告編で要約してくるような人とぼくは仲良くなりたくありません。笑

長々と書きましたが、「顧客との関係構築をするならまずはインプットが大事」だとぼくは思っています。それはマインドの話であり属人的なスキルではないはずです。目の前の人に興味をもつ。耳を傾ける。最初から分析しない。人間関係の構築なんだから当たり前ですよね。

「その人らしさ」の中心を把握する

Web制作や活用支援をしていると、「この企画はどう経営層に通すか?」と先方担当者と打ち合わせするケースがあります。先日も担当者から「社長に○○だから○○したいとプレゼンしようと思います」と相談される場面がありました。

間違いないではないけれど、先方社長のパーソナリティを鑑みると少し的を外していたので、「御社の社長は自分の意志での挑戦を重視している方じゃないですか。課題を自分事にした上でのチャレンジだったら文句をいう人じゃない。でも、さっきの説明だと腰が引けてると思われるかもしれません。内容は同じでも○○と伝えた方がご理解いただけると思います」とお返事しました。

「それは確かに!そうします!稲田さん、うちの社員より社長の性格を理解してますよね!」と喜んで頂けました。それは大げさですが、顧客理解とはそういうことだと思っています。「その人らしさ」の中心を把握すること。ヒアリングシートや議事録を埋めることではないし、それだけでは掴めません。

先方の社長とは提案時のプレゼンやインタビュー取材での数回しかお会いしていませんが、社長から発せられる言語/非言語の情報をまるっと全て受け止めておけば「何を重視しているか/何はダメだと思っているか」の輪郭くらいは掴めます。ディテールは後でいいので、その人らしさを形成している核を自分なりに把握することが大切です。

人間理解への興味が欠かせない仕事

そんなのWeb制作者の仕事じゃない/属人的なスキルだと言われそうですがぼくは逆だと思っています。Webは人の行動変容を促すためのプロダクトでありサービスです。他者について興味を持てない/理解を深められない/観察できない人がWeb制作に向いているとは思えません。つまり、スキルの話ではなく適性の話なんですよね。Webディレクターや活用支援者は特に。

顧客のオーダー通りにWebを作って納品するという旧来のやり方であれば関係ないかもしれませんが、もう制作会社には「成果に貢献するWebサイト」が求められるようになってしまいました。Webで成果を出すにはユーザーの行動変容が必須であり、そのためには「人間理解」への興味と実践が欠かせません。人間理解への興味も薄く、シートを埋めることだけを重視して目の前の担当者の話にもフルコミットできていないのに「成果に貢献するWebサイトを作る」なんてまあ無理ですよね。少なくともぼくはできません。

これまで書いたことをまとめると下記の項目になるかと思います。

  • 成果に貢献するWebサイトが求められている

  • それには人間理解が欠かせない

  • 顧客との協働体制も欠かせない

  • 日々のMTGが顧客理解に役立つ

  • シートを埋めれば完了ではない

  • 言語/非言語でまるっと受け入れる

  • 目の前に興味を持つ

  • 大体は見ていない。聞いていない

  • インプットの量が足りない

まとめ

ポイントは人間理解とそれへの興味です。それは属人的なスキルではなく業務適正だと思っています。Webは人間を対象にしたプロダクトであり、行動変容を促すことが目的なので。定石はあっても、対象とする市場や製品、顧客側のリソースで選択肢は変わります。そこに最適な文脈を選び付与するのがWeb制作者の仕事です。特にディレクターや戦略策定、Web活用支援者においては。

どのみち答えなんてない領域なんだから、使えるものは全部使った方がいいに決まっています。目の前の顧客の言語/非言語、今起きていること、それらを全てインプットすることが大切だしあなたの大切な土台になります。

長くなりましたが、「なんで稲田さんはお客さんと良い関係性を作れるんですか」へのお返事は下記になるかもです。

  • 自分の都合や正解を押し付けない

  • まずは相手を見る

  • 言語/非言語を全てインプットする

  • 最初から分析しない。まとめない

それが大切だし、スタートラインだと思っています。


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