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サウナで"整う"を初体験したけど、香水のせいで心を乱された話

サウナにリベンジしたくなった。

リベンジという言い方をしているのは、一度失敗したから。その理由は、少し前のnoteで書いた。水風呂に入るのを忘れたのだ。

僕は、どうでもいいことをいろいろと考えてしまうクセがある。そのせいで、水風呂という「サウナーのご褒美」を忘れて帰ってしまった。

今回は、「ぐるぐる考えないようにしよう」と決意し、前回とは違う銭湯へ向かった。前回と同じ場所だと、フラッシュバックするかもしれないしな。

今回の銭湯は、だいぶ広い。施設に「良い悪い」はないと思うけど、前回いった銭湯よりも、設備はかなり整っている。僕が”整う”前に、設備が整っていた。

服を脱ぎ、タオルをもち、戦闘態勢になった。銭湯態勢か。今日はサウナと水風呂と戦うんだ。いざ。

「何も考えないようにしよう」とは決意してきたものの、僕の性格上、なにか面白いことが起きないかどうかを探してしまう。

周囲を見渡すと、腕に黒いぶっといタオルを巻いた、「龍が如く」に出てきそうなおじさんがいた。こんなの、どうしたって気になってしまう。

背中に桜吹雪が舞っていなかったので確定ではないが、たぶんあちらの組合の人だと思う。正直こわい。

体はゴリゴリに鍛えられていて、顔が険しい。

この人は、サウナに入るんだろうか。仲間と来たんだろうか。一人なんだろうか…あ、湯舟に入った。

シャンプーをしながら、シャワーの隙間からチラチラ見てしまう。

僕が体を洗い終わったとき、彼を見失ってしまった。そうかそうか、あがったんだな。安心した。なんか安心した。

お湯につかって、あたたまる。ポカポカしてきたところで、いよいよリベンジタイム。さあ、サウナにいくんだ。

颯爽と、かつ優雅に、サウナのドアを開けようとしたそのとき、
「おい、お前はガキだからまだダメだ」
と、後ろから声をかけられた。

振り返るのが怖い。なんという声の圧力。サウナに入る前に汗をかきそうだ。

恐る恐る振り返ると、腕に黒いぶっといタオルを巻いた、「龍が如く」に出てきそうなおじさんがいた。

けれど、その目線は僕の方に向いていない。僕のそばを走っていた4歳くらいの子に向けて言っていた。

そうか、息子がいたのか。息子がサウナに入っていこうとしたから止めたんだ。

子供と風呂にきているとわかると、あの黒いタオルがケガを隠しているだけのようにも見えてくる。(にしちゃあ、デカすぎるけども)

あぶなかった。「ガキだからまだダメだ」という理由でサウナリベンジを阻止されるところだった。

気を取り直して、サウナに入る。

テレビでは、相撲を放送していた。
「白鵬(はくほう) VS 阿武咲(おうのしょう)」
どう見ても「おうのしょう」と読めないじゃないか。脳が拒否するぞ。こんなの。

"扁桃"と書いて"アーモンド"かよ。"万寿果"と書いて"パパイヤ"かよ。

「阿武咲(あぶさき)」だろ。ほぼ相武紗季だけど。いや、武に咲ときたら、武井咲(たけいえみ)か。

関取の名前を当てるまで帰れない企画があったとして、「阿武咲」を出題されたら、二度と家に帰れなくなってしまいそうだ。
なんてことを考えていたら、あっという間に7分経った。

サウナを1度出る。

シャワーをして、恐る恐る水風呂に腰を落とす。
正座をするような動きで、太ももに力を入れながらゆっくりと入っていく。
1回目は、お腹ぐらいまでしか浸かれなかった。限界を感じた。

まだまだガキだなあ、と黒タオルおじさんに言われてる気がした。

2回目のサウナに入る。

不思議と、1回目の息苦しさが薄れている感じがする。もうテレビは見ない。目をつぶる。

目をつぶると、隣にいる学生らしき2人の会話がダイレクトに耳に入ってくる。

「でさあ、どこまでいったのよ、あの子とさ(ヘラヘラ笑いながら)」

「破局(ボソッと)」

いや、気まずい…サウナ全体の温度が下がっていく。がんばれ、サウナストーン!盛り上げてくれ!

というか、「どこまでいった?」に対して「破局」の2文字って。申し訳ないけど、返しがうますぎる。

「そっか。」「そうなんだよ。」「・・・」「・・・」

あまりに気まずいので、2回目のサウナターンは5分で終了した。

汗を流し、水風呂へ。あれ、全然入れた。

水か?これ、さっきと同じ液体か?体を動かしたら冷たいけど、黙っていたらひんやりしてこない。皮膚が無敵になった感じ。

サウナは3回目で整うらしいので、もう一度サウナに入る。

3回目は完全に集中状態に入り、砂時計のかすかな音までちゃんと聞こえた。

おじさんたちの呼吸の音も、自分から出ていく汗の流れも、すべてを感じ取れる。まさか、これがいま流行りの全集中?大人気漫画「鬼滅のサウナ」のあれだよね?

3回目の水風呂へ。もはや、水の温度が全然こわくない。余裕で肩まで入った。皮膚の表面が水と一体化したような感覚。

タコが、地面の模様と擬態した様子を思い出した。僕はいま、水風呂に擬態している。水になっている。そんな感じがする。

体が少し浮くような、気持ちのいい状態に入った。

水風呂を出て、露天風呂のほうへ歩く。外気を浴びた僕は、なにもかもがどうでもよくなった。いい意味で。

頭がすっきりして、「合法か?これ、合法でキマッちゃってるのか?」と思うほどに、リラックスできた。ハマってしまったかもしれない。サウナをキメるのは中毒性がある。

「は、は…やばい…整えなきゃ…う…ああああああ」と、今後、禁断症状が出るかもしれない。それは覚悟しておかねばならない。

とにかく僕は”整う”ことに成功した。

完璧にキマった僕は、意気揚々と脱衣所へ。満足した顔で服を着る。

髪を乾かそうと、ドライヤーのある場所にいった。

すると、整いたてで敏感になっている僕の鼻に、ツンといやなにおいがきた。「龍が如く」に出てきそうなおじさんがいた。

あの怖いおじさんが、ドライヤーをかけ終わった瞬間に香水を自分にふきかけた。そのにおいが、僕の整った身体を崩壊させた。

僕はここのサウナにくるたびに、このおじさんと、このにおいを思い出してしまうだろう。

「君の なんのブランドか わからな~い その香水のせいだよ」

そう思った。

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