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気候変動と心理変化

 オーストラリアの山火事やベネチアの高潮、各地の土砂災害、記録的豪雨など、最近ニュースを見るたび温暖化の影響を感じることが多くなった。それと同時に異常気象が当たり前になりつつあることに大きな危機感を覚える。気候変動問題の主な原因としては、「森林破壊」、「海洋汚染」、「モノの過剰生産」、「ゴミの廃棄」が挙げられる。これらにより環境が破壊され、結果として気温の上昇や災害の多発、生態系の崩壊などの問題を引き起こし、地球を悪循環へと導いている。地球が温暖化していることは、気温の上昇など肌身を通して実感しているだろう。私たち人間による環境汚染の影響が目に見えてきているのにも関わらず、なぜ人々は気候変動問題に無関心なのだろうか。環境汚染の原因の一つとして、ここでは「ゴミの廃棄」に焦点を当てて述べていこうと思う。

verisk maplecroft

1) 環境問題の主な原因
 はじめに、「ゴミの廃棄」がどのように環境汚染をしているのか述べようと思う。日本ではゴミを基本的に焼却処理しており、焼却時に排出されるダイオキシンやCO2によって温暖化が進んでいる。2020年の時点で、日本では1人1日当たり約918グラムの家庭ゴミを排出している。政府は1人1日当たり約500 グラムの排出量を目標としているため、現段階で個人のゴミの排出を通して環境汚染をしていることは明白である。Verisk Maplecroft が2019年に発表したデータによると、世界中で毎年21億トンの廃棄物が発生しており、その中でリサイクルされているのはわずか16% (約3億2300万トン) で、49% (9億5000万トン) が持続不可能な形で処分されているのである。

2) バーモント州の取り組み
 アメリカのバーモント州では ACT148 という法で、全米で初めて「コンポスト」を義務化した。「コンポスト」とは、生ごみなどの有機物を微生物の働きを活用して堆肥化することである。コンポストをすることで、焼却されるはずだった生ゴミが堆肥となり、CO2などの排出を抑えることができるため、非常にエコな循環系を作り上げることができる。バーモント州では法の制定後、州全体の食品リサイクル・堆肥化率が、30%から60%に向上した。このような結果に繋がったのは、人々の意欲・関心が高いことが理由であると考えられる。一人一人が現状を理解し、自分たちにできることから行動した結果、環境の改善に繋がっているのだ。州のホームページを見ると、自然環境について現状の説明と、それぞれができることについての詳しい概要が載っているため、誰でもはじめやすそうであった。現状を知る機会が多くあり、その上で具体策を詳しく知れるため、誰でも参加しやすく、リサイクルを習慣化しやすいのだ。

3) 上勝町のゼロウェイスト運動
 日本にも「ゼロウェイスト宣言」を掲げ活動している人々がいる。ゼロウェイストとは、“無駄・ごみ・浪費をなくす”という意味で、徳島県の上勝町では、「出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもゴミを出さないようにしよう」という考えのもと、「WHY」という疑問符を持って、生産者と消費者が日々のごみから学び合い、ごみのない社会を目指し、町全体で活動している。ゼロウェイストな社会を実現するため徹底したリサイクルに取り組んでおり、現在のごみ分別は13種類45分別となっている。細かく分別することで焼却・埋め立てごみから資源を救い、処理費用も大幅に抑えることができるのだ。しかし日本のゴミ箱は基本的に「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」の二択しかない。そのため、ゴミ処理に莫大なコストがかかり、まだ使える資源がゴミとなってしまうのだ。日本のリサイクル率が低い理由には、ゴミ箱の種類の無さも挙げられると思う。上勝町では分別のほかに、3Rの推進も積極的に行っている。ゼロウェイストセンター内のくるくるショップでは、再利用可能なものを無料で提供しており、訪問者は好きなものを自由に持ちこみ、持ち帰ることができる。物を大切に使うなど、暮らしの中のゼロウェイストの実践や、ごみ削減に一人一人が努めた結果、2018年にリサイクル率80%以上を達成した。上勝町の人々はゼロウェイストを行なう上で「ごみから学ぶ」ことや、「楽しむ」ことを大切にしている。ゼロウェイストの活動を負担とせず、新たなサイクルとして定着させた背景には、このような考えが大きな軸となっているのだろう。

4) パタゴニア社の取り組み
 アウトドア用品ブランド「パタゴニア」は温暖化対策としていくつかの環境目標を定め、積極的に気候変動問題に取り組んでいる。長期にわたってコットン製品の全てにオーガニックコットンを採用し、それに加え現在は64%のリサイクル原料を使用している。その他にも、自然環境の保護・回復のための寄付活動や、古着回収ボックスの設置、修理の推奨、フェアトレード製品の提供、ホームページ、SNSを通しての情報発信、また、クライメート・アクティビズム・スクールを開催し、若者が環境について学ぶ機会を設けるなど、さまざまな取り組みを行なっている。パタゴニアの製品はどれも価格設定が高いように思えるが、それには理由がある。衣類の寿命をわずか9か月伸ばすことで、炭素排出、水の使用、廃棄物の量を20~30%も削減できるため、パタゴニアでは長持ちする高品質の製品を作り、消費者の消費を抑えつつ、修理のしやすい衣服の提供をしているのだ。「消費を減らす。必要ないものは買わない。まだ使えるものは直して使う。または再利用したり、共同使用する。そしてこれらの選択肢がなくなったとき、リサイクルする。」というパタゴニアのメッセージからは、環境問題に対して本気で取り組む姿勢を感じる。こうした生産者側の取り組みが、消費者を通し、社会全体に向けての大きなメッセージとなっているのだ。近年SDGsを掲げる企業が大幅に増えてきたが、結局利益を優先した結果、大量生産している場合が多く、生産段階で「長く使えるような製品を提供する」という考えが、そもそも失われているように感じる。パタゴニア社のように、本当の意味で人にも環境にも優しい選択のできる企業が増えることを願っている。

 気候変動問題は日常生活に密接に関わる問題だからこそ、消費者・生産者・行政の三位一体の取り組みが必要であり、そのためには一人一人が今できることに取り組まなければならない。まず第一に現状を知ることが必須であり、それから消費者として消費の仕方を見直す。そうすることで、「買う」「捨てる」以外の選択肢が広がり、結果として生産者側の生産方法も変化していくだろう。世界と比較した時に、日本人の環境問題に対する無関心さが浮き彫りになっているように思うが、改めて日本人の「物を大切にする文化」を重要視していくことで、人にも環境にも優しい行動がとれると思う。
 また環境問題を難しいトピックとして遠ざけるのではなく、身近なものとすることが必要だ。「環境問題に取り組んでいる人=意識高い系」と言われがちだが、そこに壁を作らないよう、いかにスムーズに「エコなシステム」を浸透させていくかが今後の大きな課題である。あくまでも環境問題は人間の利益優先などが主要因となり、促進し続けている問題だ。本来根付いていた人間のシンプルな生活に満足できる状態、すなわちマインドフルな状態を保つことができれば、無理なく環境にも人にも優しい暮らしができるのではないかと思う。これを読んだ皆さんは改めて自分の生活スタイルを見直してみてほしい。そこには環境改善へのヒントがたくさんあるはずだ。

SUMMARY
 I often wonder why people were indifferent to climate change when the impact of climate change was clearly understood. As it is one of the causes of environmental pollution, I would like to focus on "disposal of garbage" here.
 In Japan, garbage is basically incinerated. Global warming is progressing due to the dioxins and CO2 emitted during this process. In this way, we can see that we are polluting the environment through the discharge of garbage.
 In Vermont, USA, a law called ACT148 made composting mandatory for the first time in the United States. Also, zero waste activities are being carried out in Kamikatsu, Japan. With the question mark "WHY", they are working throughout the town, aiming for a garbage-free society where producers and consumers learn from daily garbage. Patagonia, an outdoor equipment brand, has set several environmental targets as a measure against global warming and is actively working on climate change issues. For example, they make clothes from earth-friendly materials and donate to the earth. They are improving the global environment in a different way from other companies.
 Climate change is a problem that is closely related to daily life, so it is necessary for consumers, producers, and the government to work together as one. I think each one has to work on what they can do now in order to make a better future.

参考文献
1) verisk maplecroft 廃棄物について(グラフ引用)
https://www.maplecroft.com/insights/analysis/us-tops-list-of-countries-fuelling-the-mounting-waste-crisis/

2) 上勝町 ゼロウェストセンター ホームページ

https://why-kamikatsu.jp

3) バーモント州 ホームページ リサイクル方法について

4) patagonia ホームページ

                


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