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なわとび 一人芝居 戯曲



データ↑
あらすじ↓
うっかりとさよならの話
本文↓

なわとび

場所は公園 ベンチに翔子と翔太が座っている 
翔子の膝の上には学生鞄

「へー、翔太君のクラスでは限定じゃんけんていうのが流行ってるんだ。どんな遊びなの?じゃんけんをするんだ。それで、勝った方が相手の出せる手を一つに限定する?だから限定じゃんけん。え、例えば私と翔太君が限定じゃんけんをするとするよ。まずじゃんけんをする。例えば、翔太君が勝ったとすると、私がじゃんけんで出す手は、翔太君が決めるんだね?それで、例えば、グーって言われたら、私はグーしか出せない。翔太君は、そうだよね、パーを出すよね」

「これ、最初のじゃんけんで勝敗決まってない?だって、限定される側って、ん、いや不利どころか、確実に負けるでしょ?翔太君はさ、限定される側になって、勝ったことあるの?あるんだ……。小学生って面白いね。え、限定じゃんけん?やらないよ。普通のじゃんけんならまだしも、と言うか普通のじゃんけんと同じじゃん。普通のじゃんけんに、消化試合がついてるだけじゃん。えー、本当に?普通のじゃんけんよりも面白いの?一回だけだよ?」

「じゃあ、この縄跳び外してくれない?」

翔子は翔太に縄跳びを突き出す

「ダメって、じゃあ限定じゃんけんできないよ?あーあ、楽しそうだと思ったのにな。翔太君とやりたいなー。はー」

翔子はべんちに座る

「縛らなくたって、いつも通り、お母さんが迎えに来るまで、私も公園にいるから。どうしたの今日は、なんかあったの?ほら、お姉さんには話してごらん?」

翔太はベンチから立ち上がる

「無視しないでよ。じゃあ、分かった、じゃんけんで私が勝ったら教えて?わかってる、解かなくていいから。私は顔でやるから。はい!最初はグー!じゃんけんポン」

「あいこでしょ!」

「あいこでしょ!」

「やったー!勝った!翔太君は弱いなあ!え、チョキがこっちで、パーがっこっち。わかんないって?でも、最初はグーで、グーは定義されたでしょ?それで、私がグー出して、翔太君がパー出したんだから、反則ではないよ。ほら、教えて」

翔太がベンチに座る

「転校?そっか。どこに行くの?オーストラリア。ん、オーストリア?全然違うよ、オーストラリアと、オーストリアは。方や、音楽の都で、方や、カンガルーの都だよ。遠くに行っちゃうんだね。いつ?明日!ななんで教えてくれなかったの」

「寂しくなるなー。そっか、こうやって翔太君と夕方の公園で遊ぶのも最後か。今まで、ありがとうね。私だって嫌だよ。なんだかんだ言って、楽しい時間だったし。でも、しょうがないでしょ。親御さんの転勤?そっか?今までありがとうね」

翔太は翔子の手を引っ張る

「ちょっと、何?連れていくって、無理に決まってるでしょ?私にもせ生活があるんだから」

翔子は翔太を振り払う

「もう。ちょっと泣かないの」

翔子はポケットからハンカチを取り出して翔太の涙を拭く

「もー、かわいいな。そうだ」

翔子は鞄からメモを取り出して住所と電話番号を書く

「ほら、住所と電話番号。向こうに行っても、これなら寂しくないでしょ?良い時代だよね。だから、ほら、泣かないの」

SE ほたるのひかり

「あ、お母さん迎えに来たよ?無くさないでしょ、そのメモ。連絡、待ってるからね。うん、またね、バイバーイ」

翔子はハンカチで目を抑える

「はー」

翔子は自分の縄跳びに気が付く
翔子は縄跳びを外そうとする

「あれ、結構頑丈。解けないかも、やば、翔太君!これ、解いてから、オーストラリア行って!オーストリアだっけ?どっちでもいいけど、翔太君!」

END

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