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SDGsは宗教なのか?【SDGs表現論DIALOG#6】

 こんにちは。2021年度立命館大学教養ゼミナール SDGs表現論・授業アシスタントの北元です。

 「SDGs表現論 -プロジェクト・プラグマティズム・ジブンゴト」書籍化(3/31出版予定)にあたり、SDGsに取り組む大学生・高校生と、書籍の内容をもとに「SDGsに取り組む」ことについて対話する企画が「SDGs表現論DIALOG」です。
 著者である山中 司(立命館大学生命科学部教授)と上田 隼也(一般社団法人SDGs Impact Laboratory 代表理事)とゲストの方々との対話をお届けします。

SDGs表現論は、一人一人が「自分ごと」としてSDGsをどう捉えるべきかについて、考える機会を提示するものです。キーワードは哲学としてのプラグマティズムと、方法としてのプロジェクトです。個々の興味、関心、問題意識は、必ずSDGsにつながるという信念のもと、一人一人がマイプロジェクトを立ち上げ、そこにSDGsを乗せ、まず活動してみることを提案します。戦略的にSDGsの視点を入れ、一人一人が社会を変える主役になるべきことを強く訴えます。2019年度立命館大学教養ゼミナールとして開講され、2020年には大規模オンライン講座JMOOCにて開講し、約5000人に受講されました。

 今回は、「立命館大学教養ゼミナール SDGs表現論」を2019年度に受講された兒玉力哉さん(現立命館大学文学部3回生)をお招きし、SDG表現論から1年たった今活動されていることや、SDGsに対する考え方がどう変わったのかについて対談しました。

経験や行動が興味に繋がった

山中 兒玉くんはSDGs表現論を受講した“その後”どんなことやっているのですか?

兒玉 中国の宗教をベースに、宗教に関して、卒業論文を書きたいと思い研究をしています。書籍SDGs表現論の中で、実社会がベースで学問が後付けという話が印象的でした。
 宗教はもっと実感があってもいいものなのにも関わらず、日本では文字から歴史を知ることのできる教材のようになってしまっています。宗教をもっと一般化して、宗教に触れていくことで社会がよくなることもあるのじゃないかなと考えて研究を進めています。

山中 本に書いているプラグマティズムの話にも繋がりますが、実際に信じて、救われている人が多くいる宗教というものは怪しくもなんともなく、科学だって宗教と言えます。宗教の内容を考えることによって自己理解ができる人が増えればいいことだなと思います。信じる・説得される社会は人間らしく生きるためには大切で、悪いことでないですね。

上田 SDGsも一種の宗教だとは良く言われます(笑)。SDGsといっておけば社会に良いことをしている感はあって、それに縋(すが)っている人は多いなと感じています。

山中 まさに、信仰宗教と言えますね。

上田 (教養ゼミナール)SDGs表現論でも宗教をテーマにしていたのですか?

兒玉 SDGs表現論では履歴書をテーマにしていましたが、自己表現という意味では今の活動テーマと履歴書は、共通する点が多いです。自分が何をするか、他人が何をしてきたか、人はどういった集団を形成してきたのかということに興味がありますね。
 立命館イニシエーションプログラムに参加し、韓国の天道教(独立運動を主導したと言われている)の教会で信者の方に話を聞いた時、日韓関係がよくない状況であっても宗教の教えに基づいて、様々な考え方で世界を見ていたということに興味を持ちました。そこから宗教に関して調べ始め、研究対象が中国の白蓮教にたどり着いた感じです。宗教を実感できたことが大きなきっかけになりました。

山中 行動したが故に興味分野を見つけられたっていうのはとても良いですね。

上田 コミュニティの作り方など宗教から学べることはとても多いと思います。お金ではなく、概念やコンセプトに共感してもらい行動を変えさせるっていうのはとても難しいことでもあります。どこにポイントがあるのかなどは気になります。

山中 宗教に関する話をすると、宗教系の大学は言語教育が強いんですよ。改宗させるためには、相手が信じているものよりも良いものだと訴え、信念を変えてもらわないといけないため、それを伝えるためにもしっかりした言語教育が必要になるんですよ。

宗教から社会を考えてみる

上田 宗教の研究が一般社会で役に立つか疑問に思ったことはありますか?

兒玉 高校の同級生に宗教の研究をしているというと少し「おお」と変わった反応になることもあります。その反応を自分で納得できている時点で宗教に対しての偏見を捨てきれず、まだまだだなと考えさせられます。
なにかの宗教を信じさせるとかではなく、宗教という考え方を教えて、宗教はおもしろいということを伝えていきたいですね。

山中 宗教に関しての一番の問題は、神学部の学習が宗教を相対的に考えるのではなく、どうやって該当宗教を広げるかなどがメインになってしまっているところだと思います。宗教教育を神学部に閉じておくのは本当にもったいないです。
 今、不安定な時代で、人が何かに縋りたいのは当然なので、人間の心の在り方を考える意味で宗教はよい入口になりますよね。
 また、宗教に関して「異端は異教より憎し」という言葉があります。同じ宗教の他の宗派の方が他宗教より憎いということです。実際に、多くの場所で宗派による争いが起きていますよね。これには、宗教が伝わり広がり、コンセプト(原理)がそれぞれで変化したことも関係していると思っています。兒玉くんはもともとのコンセプト(原理)って宗教においてどれくらい大切にされるべきと思いますか?
 上田くんが創設した 立命館大学Sustainable Week実行委員会(以下 SW)も4年が経ち変化していきそうな様子ですよね。

兒玉 不安定な時期などで、元からあった原理の過剰解釈による革命は過去に起こっています。それが成功し、国が豊かになったという歴史も実際にあります。結局、成功したら異端児ではなくなり、失敗したら批判される。そういうものなので、変化はあってもよいのかなと思っています。しかし、変化が怖いからこそ、絶対的な宗教に縋っているという側面あるので、当事者はとても不安なのかもしれません。

上田 宗教をSWに例えるのはおもしろいですね。
ある和菓子屋は、新入社員に会社のバイブルを勉強してもらう時間を設けているみたいです。そこで会社への帰属意識を高めています。バイブルやコンセプトをしっかりと考える機会は一般的な企業も含めて増えていくのかなと思っています。
 社会的な危機で、何かに縋りたい人が増えている今、 SWや学生団体などでもやったほうがいいのか、逆に染めない方がいいのか悩みどころです。

山中 今、何かを言いきってくれるものやよりどころに人々は飢えていて、それを求めています。自分の語るものがないというのは情けないといえば情けないかもしれませんが、何かに縋るというのも良いのではないでしょうか。
 とりあえず動けと私たちはSDGs表現論で言っている反面、人はこういったコンセプトを求めてしまうというのは皮肉な話ですね。

山中 兒玉くん、宗教でもやはりわかりやすさは大切になりますか?

兒玉 宗教において、究極は死ぬか生きるかですね。生物としての唯一の自覚は死ぬとき(死ぬかもしれないとき)です。自己実現はあくまでも手段であって、最後は死ぬに繋がっているのではないでしょうか。死ぬことをもっと自覚していれば自分の行動はもっとわかりやすくなるのではないだろうかと思っています。

上田 「生き死に」を考える、それこそ生命科学を人はもっと学ぶべきなのかなと思います。

山中 生き方を考えるのは高齢化社会が進んでいる今こそ、大切になっていきますね。

宗教とSDGs

上田 ずばり、兒玉さんは宗教の研究をしていて、SDGsは宗教だとおもいますか?

兒玉 宗教はルールが細かく決まっていますが、SDGsは17の目標があり、そこにジブンゴト化して当てはめていく、つまり積極的に自発的にやっていけるのが特徴だと思います。スタートは自由で、それが結果的にゴールに近くなるという点は、宗教と大きく異なるなと思います。
 SDGs表現論を受ける前はSDGsがありきのSDGsの活動かと思っていたのですが、受講後には、自己発信がベースとなり、ここにかすったなどで話が進んでいくことがわかりました。不自由な拘束がないというところで、宗教とは言いにくいものだなと思います。


さいごに

 当初は教養ゼミナール SDGs表現論の感想などをお聞きする予定が、宗教を通して社会やSDGsを考えてみるという貴重な機会になりました。少し嫌煙してしまいがちな宗教ですが、見方を変えれば社会生活の参考になる部分は多いのではないでしょうか。

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 「立命館大学教養ゼミナール SDGs表現論」は2021年度春セメスターを大阪いばらきキャンパスで開講いたします。(立命館大学の対象学部学生のみの受講となります。)ご興味がある学生の方はぜひシラバスをご確認ください。


 最後までお読みいただきありがとうございました。インパクトラボでは、SDGs表現論などSDGsと教育に関する講演やセミナーを実施しております。気になる方は、インパクトラボの公式HPから活動をご覧ください。


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