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2021年良かった映画~実在感について~

コロナ2年目、と言われる2021年。私にとっては、田んぼを始めた年であり、新たな地域での生活をスタートさせた年でもある。週末は外作業や人を呼ぶ会で忙しくしていたけれど、平日の1人の時間に、今年も「映画」が私の心を豊かに揺さぶってくれた。

2018年から毎年年末に記録している「今年見たベスト映画10」を、少しだけ早いですが書きたいと思います。去年のはこちら。

https://okaka-to-konbu88.hatenablog.com/entry/2020/12/30/122812

ちなみに、1日必ず1本見てるとか全ジャンル網羅してるとかっていう映画好きではないので、感想も見てる種類も偏りだいぶあります。今年は、映画を見た後にポッドキャストで映画の感想を話してるのを聞いて考察を深める、という楽しみ方が増えたのはとてもよかったな。愛用している映画記録アプリ「filmarks」によると、全部で34本の映画を見たようです。では、まずはトップ5から。

トップ5

2021年に見た映画のトップ5はこちら!

1.あのこは貴族(2021)

2.花束みたいな恋をした(2021)

3.his(2020)

4.ドライブ・マイ・カー(2021)

5.すばらしき世界(2021)

洋画も見ているはずなのだけど、順位をつけると好きだなと思えるのはいつも邦画ばかり。3以外はどれも映画館で見たもので、長岡のTジョイが生活圏内にあるありがたさはすごい。

「あのこは貴族」は、地方の一般家庭で育った女の子と東京の上流階級で育った女の子のそれぞれの生きづらさと希望の物語。本人たちが流されたり違和感を抱いたりしながら、同世代の女の子たちとの出会いの中でなんとか生きていく様が絶妙にリアルだった。「現代」が詰まっている「小さな違和感」を忘れずに拾っておいてくれたと思った。誰が悪いとか不幸じゃなくて、すべて環境なのかもしれない。全体のトーンや演技が好き。

「花束みたいな恋をした」通称「花恋」は一大ムーブを巻き起こしたと言っても過言ではないほど、多くの人が見ていたし賛否両論さまざまな意見・感想を目にした。サブカル視点での辛口評価や、主人公2人の青くさい言動に対する「恋愛とは」論など、いろんな考察を見たけど、こういうふうにたくさん考察してもらえるってそれだけみんなの心の中に入ってきた映画ということでもあると思う。個人的に地元である東京の調布市がばんばん出てきたのは嬉しかった&どんぴしゃ同学年設定だったのもあるけど、やっぱり坂本祐二さんの繊細で等身大な描写が光っていたし、これは「思い出したくなる恋があるって、すばらしいこと」というメッセージだと私は受け取った。

「his」は同性愛者である2人の物語。ビジュアルとキャッチコピーから、「恋愛」の映画だと思っていたけど違った。「親と子の関係」や「偏見と差別」「田舎とコミュニティ」などさまざまなテーマを網羅していて唸ってしまった。「自分だけ辛いと思っていたんです」というセリフがものすごく良いメッセージというか、はっとさせられた。

「ドライブ・マイ・カー」は話題になっていたときには見れず、12月にぎりぎりすべりこみで見た。3時間という長さを忘れさせる面白さ。村上春樹の原作は読んでいなかったけれど、「村上春樹っぽさ」は全面に出ていた。さまざまな言語で演劇をするという状況も最高だし、1人1人の演者の演技の間がたっぷりとられていて、音楽と映像も良くて、個人的にはこれぞ映画!という感じの満足感だった。

「すばらしき世界」は、5位に入れるか迷った。というのも、見終わった直後は、私には精神的にきつい描写が多かった・・・と思っていたから。簡単にいうと、刑務所から出所したある男の更生物語であり、そこでの人との出会いや苦悩が描かれている。このタイトルにしたのは皮肉的に問いをつきつけているとしか思えないほど、こんな社会でいいのだろうか、と絶望する。かすかな希望として人との関係性を描いていることは良かった。役所広司の演技がリアルすぎて怖いくらいだった。

映画の「実在感」について

今年初めて知った「映画雑談」というポッドキャストで、映画感想家の方が映画には「実在感」を意識してつくられたものとそうでないものがあるという話をしていた。ここでいう実在感とは、「この世界のどこかにこの人たちが本当に生きていそう」(=めちゃくちゃリアル)と思えること。

これに私はものすごく納得してしまった。この人たちが例にあげていた「実在感」のある映画が、どれも私の好きな映画だったのだ。私の「好き」と思うひとつの軸がこれなのかもしれない。

「実在感」をもたせるためには、「本当の人間ぽく」なる必要がある。そのため、登場人物たちは内面・性格を多面的に描かれる。「わかりやすいキャラ」ではなく、「こんな部分もあってあんな部分もある、でもそれが人間」というような。それがセリフひとつひとつの丁寧さにつながるので、良い言いまわし・表現に出会えることが多い気がする。

「実在感」の高い映画は、「展開」自体はそこまで激しくない。事件、みたいなことはほとんど何も起こっていない映画も多い。その代わり、「俳優の表情が変わる時間」をたっぷりとったり、「なんでもない日常のささいなシーン」を丁寧に映したり、小道具や衣装、音楽にこだわったりする。そういうところがたまらなく好きだ。

もちろん「theフィクション」みたいな映画も別のおもしろさがあるし、フィクション的だけれど好きな映画もたくさんある。現実世界の映画だけどエンタメ要素が強かったり伝えたいことがメインだったりして、実在感を特に意識していないだけの映画も多いし、そこに優劣はない。

6位~10位の映画

続いて、6位~10位だった映画も書いておく。

6.七人の侍(1954)

7.私をくいとめて(2020)

8.街の上で(2021)

9.誰も知らない(2004)

10.窮鼠はチーズの夢を見る(2020)

「七人の侍」は、巨匠黒澤明の有名な作品だけど、見たことはなかった。207分という長さの映画を、白黒で、70年近く前の技術で、ここまで登場人物たちのドラマや戦いの臨場感を描けるなんてと度肝を抜かれた。セリフが早口で最初何言ってるかわからなかったけど、しばらく我慢して見てるとすぐ面白くなってくる。

「私をくいとめて」は、30歳の独身女性の心情がリアルに描かれていて、のんがとてもかわいくて好き。ところどころ、感情移入してしまうシーンがあった。

「街の上で」は、それこそまさに「実在感」映画で、めちゃくちゃ長回しのけだるいリアルな会話がずっと続く、下北沢が舞台の映画。こういう映画にぴったりなんだよな、若葉竜也さん。仲野太賀もそうだけど、「かっこいいけど身近な雰囲気で近くにいそう」な役者さんがたくさん出て来る。

「誰も知らない」は怖くて見れていなかった映画。やっぱり辛かったけど、見て良かったと思った。子どもたちのまなざしや表情が胸がしめつけられるような自然さで、こういう事件のニュースの裏に、こんなにもはかなく淡々と美しくも見える日常があるのかもしれないと、いろんなことを考える映画。

「窮鼠はチーズの夢を見る」は、「his」とは違って「恋愛」が主題の同性愛を描いた映画。これは、なかなか好みが分かれるかもしれないけど、私は成田陵と大倉忠義の2人の演技が色っぽくて本当に「惚れている」感じが出ていて好きだった。すごくきゅんとした。

以上、3000字を超えてしまいましたが、わたしの2021年ベスト映画10でした!映画はたった2~3時間でいろーんな要素が詰まった「総合芸術」を体験できるものだと思う。「時代」をまるごと切り取って映し出しているものも多く、考えるきっかけをくれる。

ドラマもたくさん見た今年。ちょくちょく「はらっぱラジオ」やtwitterでも共有できるのが楽しかったです。来年もどんな作品に出会えるか楽しみだ!




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