見出し画像

食通が愛するベトナム料理”チャーカー"をホーチミンで 「Cha Ca Lang Ngon 3B」

初訪 2024.03  更新 2024.06.17


ベトナム北部ハノイの名物鍋、「チャーカー(Cha Ca)」。
日本ではまだあまり知名度が高くないものの、さまざまな国のシェフやメディアが「死ぬまでに食べたい料理○選」に選出するその料理は、ひと言でいうと「白身魚とディルの揚げ焼き」みたいな感じ。
食材はどれもベトナムで一般的なものですが、調理法はなかなかに考え尽くされています。
まずは、ターメリックやレモングラス、米麹のほか、生姜の一種であるガランガル(Rieng)などで漬け込んだ川魚を、炭火で香ばしく焼き、その後多めの油で揚げ焼きにします。薬味のレベルを超えた大量の青ネギとディルを炒めたあ。全体を炒め合わせた後、米麺ブンと一緒に取り分け、そこに好みでパクチーやローストピーナッツ、唐辛子などをトッピング。最後に、クサうまいエビの発酵調味料マムトム(Mam Tom)もしくは、ヌックマムダレをかけていただきます。
そう、鍋とはいっても”油鍋”ともいわれるように、卓上のフライパンで揚げ焼きにした、汁気なしの香ばし系グリル料理。

 ”もし、ハノイでベトナム料理を1食しか食べられないなら、フォーでもブンチャーでもなく、迷わずこの料理を選ぶ”というベトナム通もいるほど、グルメな人が愛する、隠れた逸品です。

そんな逸品を南部ホーチミンで味わうなら、個人的にも過去イチでおいしかったオススメの一軒があります。ハノイ発のこの店の特徴は、鮮度のいい天然のラン魚(ナマズ科の魚)のみを使用していること。柔らかくふっくらとした身と、ディルやガランガルなどのハーブが織りなす味わいは、舌に刻まれるおいしい記憶となること間違いなしです。

"チャーカー" 誕生のストーリー
ハノイ生まれのこの料理ですが、はじまりは、フランス軍侵攻後のハノイに遡ります。ハノイに到着した反フランス勢力であるデタム軍をもてなすため、ドアンさんというある家族が特別に考案したのがこの料理。その出来があまりによかったので、店を開くことを勧められ、1871年にハノイで開店したのが、いまもチャーカー通り14番地にある「チャーカーラボン(Cha Ca La Vong)」といわれています。
表向きは、チャーカーのレストランとして営業しながら、デタム軍の秘密の集会所を兼ねていた当時。その場に置かれていたのが、才能と忍耐強さの象徴でもある「太公望 ※ベトナム語で ラボン(La Vong)」の像でした。それにちなんでお店は「チャーカーラボン」と呼ばれるようになり、そのまま店名になったそう。
そしてこれは、ベトナムあるあるなパターンですが、その後、似たようなチャーカー専門店が同じ通りに続々と出店し、もともとの「ハンソン(Hang Son)通り 」から「チャーカー通り」に通りの名称が変更されるまでになりました。

"チャーカーラボン" の名前で有名
この料理には、発祥店の店名である「チャーカーラボン(Cha Ca La Vong)」や「チャーカー(Cha Ca)」「チャーカーハノイ(Cha Ca Ha Noi)」など、いくつかの名前がありますが、「チャーカーラボン」は店名でもあるため、この記事では「チャーカー」と表記しています。
※ 現地の人に伝えるときは「チャーカーハノイ」もしくは「チャーカーラボン」で伝わるかと思います。「チャーカー」は、ベトナムのさつま揚げの意味でもあるため、要注意です。ややこしいですが…

 

 

アクセス

場所は、ベンタイン市場南側に位置する「グエンタイビン(Nguyen Thai Binh)通り」。ホーチミン市美術館や、人気のチョコレートショップ&カフェ「メゾンマルウ」からも徒歩圏内の場所なので、食後に立ち寄るのもよいかもです。

中央に見える緑のシェードが今回のお店

店名は「Cha Ca Lang Ngon 3B」。
ハノイに2店舗を持つ人気店のサイゴン店です。


店先には炭火のコンロが。注文が入ってからここで炭火焼きにして、香りのいい状態でテーブルまで運ばれます。

店員さんも感じがよく、笑顔で収まってくれています^^

店内は、6卓ほどがならぶ1階とさらに個室を含む2フロアがあるので、グループでもOK。昼と夜の2部構成で、ビアホイなどハノイのお酒もあり、宴会もできそうです。(※料理はラン魚料理数種のみ)

2階の1室

 

 

メニュー

チャーカー専門店ということでメニューは潔く、ラン魚を使った料理数種のみ(下記参照)。ラン魚はハノイから空便で運び、メニューを絞ることで鮮度のよさを常にキープ。おいしさを保っているようです。

クリックして拡大できます

メニューはベトナム語と英語表記で、主な料理は写真付きなので指差し注文も可能。

主な料理は下記の5つです。
・チャーカー(Cha Ca Lang Ngon 3B)
・ラン魚の胃の串焼き(Xien Long Ca)
・ラン魚のタイ風サラダ(Ca Lang Bop Thai)
・ラン魚の塩から揚げ(Ca Lang Rang Muoi)
・ラン魚鍋(Lau Ca Lang)

メニューの「チャーカー」の写真が串焼きなので分かりにくいですが、ちゃんとグリル鍋のチャーカーがでてきます。

2名用から4名用までのコンボがあります

裏面は、お得なコンボセット。
2人なら「コンボ1(チャーカー+サラダ)」、3人なら「コンボ2(チャーカー+鍋)」が適量で、単品で頼むよりもお得に楽しめます。
※コンボのチャーカーは「ラン魚の胃の炭火焼き(Xien Long Ca)」入り

 

 

料理

今回は名物のチャーカーと、ラン魚の胃の炭火焼きを頼んでみました。

まずは薬味などが登場。
丼に入った青ネギとディル、キンカンとチリ、パクチー&ミント、ローストしたピーナッツに、米麺ブンが並びます。

外のコンロで炭火焼きにした、ラン魚とラン魚の胃も到着。
上にのっている黄色いものは、アジアンな香りが立つショウガ科のスパイス「ガランガル」です。

具材が揃ったら、店員さんがネギとディルを卓上のフライパンで炒めてくれるので、パチパチという音と香りによだれを垂らしながら、しばし待機。


そして、炒めたディル&ネギの上にラン魚と胃を投入。ぷにぷにとしたホルモン特有の食感を楽しめるラン魚の胃も、同じ調理法で一緒にいただきます。

手早く完成。チャーカーは油鍋とも表現されますが、このお店は油控えめで食べやすく、辛さを自分で調節できるので、子どもや辛いものが苦手な人でも食べられそう。

食べ方は、卓上の紙に書かれている通りです。
① 茶碗に米麺ブンを入れる
② その上にラン魚と魚の胃、ディルとネギをのせる
③ タレのマムトムもしくはヌックマムをかけ、ブンをほぐしながら食べる
です。

ローストピーナッツは入れた方が美味

好みでパクチーやローストピーナッツを入れて、味の変化を楽しむのも一興。ここのブンは団子のように固まっているのでほぐすのが大変ですが、タレをかけながらほぐしていただきます。

外国人にはヌックマムのみ出されるかも

タレはヌックマム? マムトム?
チャーカーに合わせるタレといえば、王道はエビの発酵調味料「マムトム(Mam Tom)」なのですが、ベトナム人でも苦手な人が一定数いるほどクセ強めの匂いがする調味料なので、まずはヌックマムで食べるのが安心かも。ただし、マムトムもそのままでは食べにくいものの、キンカンを絞り入れ、砂糖を加えてかき混ぜると案外食べやすい味になるので、少量で確かめながらいけそうならぜひ挑戦を。


スパイスの香りをまとった柔らかな白身魚に、鼻を抜けるディルやピーナッツの香り。香る系の料理が好きな人にはきっとたまらない奥行きのある味は、「死ぬまでに食べたい料理」といわれるのも納得のおいしさ。

そして特筆すべきは、ごろっと厚みのある白身魚のふっくら感。鮮度のよさが伝わる舌触りに、人気店たる所以を感じます。



魚の臭みもなくさっぱりと食べられるタイ風サラダ

別の日に食べた
「ラン魚のタイ風サラダ(Ca Lang Bop Thai)」も美味。ラン魚の薄切りにシャキシャキのタマネギ、ノコギリコリアンダーなどのハーブを和えたヌックマム風味のピリ辛サラダは、箸休めにぴったりです。


あと、写真はありませんが、
「ラン魚の塩から揚げ(Ca Lang Rang Muoi)」もビールに合う絶妙な味付け。コラーゲン質や骨が多く、若干食べにくさはありますが、ここはもう手づかみで。少人数でもうっかりビアホイのボトルを頼んでしまいそうな、やみつきになる味付けです。

酒好きなら冷蔵庫もチェックを。
メニューには書かれていませんが、ハノイから仕入れた庶民派生ビール「ビアホイ(ボトル大14万9000vnd/約920円)」や、ビアハノイ、梅酒(Ruou Mo)など現地のお酒も揃っているので、ぷらっとハノイ旅行気分でほろ酔ってみるのもいいかもしれません。




Cha Ca Lang Ngon 3B / チャーカーラン ゴンバーベー
 97 Nguyen Thai Binh, Q.1, HCMC
 9:00〜14:00、17:00〜21:00
 0858・088・800
 なし(祝日は休みの場合有)
HP
FB


もし、記事の内容がいいなと思われたら、サポートしていただけたら嬉しいです。いただいたサポートは大切に、リサーチや移動費として使わせていただきます。