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漫画というもの

 俺に最初に漫画というものを認識させ読ませたものは何なのだろう?あるいはちばてつやかもしれないし手塚治虫の火の鳥だったかもしれない。これは幸運なことだと思うのだが、近所に図書館があり、そこには手塚治虫全集も収められていたために俺の性的嗜好はずいぶん歪んだように思う。でも何しろゴッドが下さったものだ。ダメなら最初から禁書にしときな。俺は何というかこう、色々拗らせた感じでいくぜ。
 そういった感じで始まった漫画読みとしての半生だが、高校生の頃にまともに弐瓶勉著「BLAME!」を食らってしまい、俺の自由帳はほとんど真っ黒になる。真っ黒にしようという意図は一切働いていなかった。ただ好きなものが黒でしか現せなかっただけだ。
 俺は大学進学後も隙間時間と言うか、そういった少し持て余すくらいの時間があればお絵描きをしていた。だが何しろフォーマットが「とにかく画面の半分以上は黒く塗り潰さないといけない」というような状況でお絵描きを始めたために絵の大半は目標に到達できずに翌朝の紙クズの一部になった。俺にとって重要なのは過程であり結果ではなかった。要は描いている間気持ちよければその成果物はどうでもよかった。そういった過程を経て「やっぱ目標地点ないとダメなんじゃねえの?」と思い始めたが後の祭だ。めっちゃ練習すればその癖も克服できるとは思った。だが何しろスタート地点が、そもそものスタート地点が一般的な漫画とは別の次元にあった。俺はスタートラインにさえ立っていなかったのだ。
 別にそれが不幸なことだとは思っていない。実際に俺でも考えうるようなストーリーラインで連載デビューしたやつは何人もいた。だが彼らは実際に筆を動かしていて俺が想像もできないようなレベルまで話を膨らませていた。
 もちろん俺が彼らに勝っている点など何もないのだがそれでもたまに思ったりする。「その話だけでいいから俺に描かしてくんねえか?」と。

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