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ジャズは死なない

  おそらく、ジャズの成り立ちについて正確に知っている人は誰もいないのではないか?

 だが何も問題はない。なぜならこれを書いている俺もよく分かっていないからだ。だがその成立した時期についてはけっこう色々な専門家から正確な特定がなされている。ジャズは、あの悪しき音楽は1910年代以降に生まれたのだ。それは楽器だけで言っても第一次次世界大戦の影響を色濃く取得した音楽だった。彼らはマーチングバンドが払い下げた様々な楽器―ハーモニカ、トランペット、チューバ、コントラバス、テナーやアルトやソプラノのサックス、マリンバに至るまで―の軍払い下げ品を携え、ミシシッピ・デルタという特異点で本来のアメリカーナ音楽として(それにはもちろんインディアンの影響もある)、ヨーロッパの楽隊音楽の残滓、キューバ経由の音楽などが混ざり合いながらジュークなどで演奏をした。これらはジャズをリスナーから遠ざけるかもしれない。でも最後まで読んで欲しい。

 原初のジャズは単なる
ダンス・ミュージックだったのだ。


 初めてビリー・ホリデイを見たマネージャーは「誰がこんなチビの田舎娘を連れてきたんだ?」と彼女を嘲笑ったという。どんなミュージシャンであれ試練はある。そして彼女は歌だけでそれを乗り越えた。俺が当時のコロムビアのプロデューサーなら自分の非礼について泣いて許しを請うだろう。そして不協和音とされた音で始まる彼女の歌によってジャズは加速する。


 単なるダンス・ミュージックから歌謡曲へ、そして純然たる音楽へだ。事実、ブルーズやジャズでは常用される◯7thなどは当時の音楽的には常道を外れた音として、不協和音として扱われていた世界に―その成り立ちだけで本が書けるほどの世界から―誰も全貌が分からないほど新たな可能性をもたらした。それはクラシック的な見地からすれば見るに堪えないものかもしれないが、それでも俺はブルーズやジャズが好きなんだ。墓の中から俺の好みにどうこう言うんじゃねえ。もちろん様々な時代的な背景・要素はあるにせよ、ジャズが音楽の可能性を開拓したのは事実だ。そういったわけで俺は現役のアル中であり音楽ジャンキーだ。俺が飛ぶには酒と音楽があればいいのだ。現時点で自我が危ういのだから、ヤクまでキメたいと思ったことは一度もない。俺は法に触れない程度に踊るぞ。さあダンスの時間だ。


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