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記事コメ:3回目でつく「基礎免疫」?

今日は、たまたま下記の様な記事を目にしたので、コメントをしておきたい。

先に言っておくと、この記事は非科学的な内容にあふれた非常に愚かな記事である。よくもまあここまで酷い記事が書けると思う。

まず専門用語についての話からしたい。以前「免疫力」という用語の使い方についての論説を紹介し、専門的には「免疫力」という用語は無いという記事を書いた。紹介した記事は「免疫力」という用語は無いからその様な言葉を使う言説は全て嘘だという意味不明な批判をする記事である。

今回の記事ではワクチン3回接種で「基礎免疫」が付くという事を言っている。だが、免疫学を長年学んできて、「免疫力」という用語以上に、「基礎免疫」などという言葉は聞いた事が無い。というか、実際にその様な専門用語は存在しない。調べてみると某医師が勝手に使い出した造語らしい。それを恰も専門的な用語かの様に記事タイトルで使っているのだから驚きである。専門用語ではないからといって「免疫力」という言葉遣いに噛み付いた意識高い系の医師には是非とも批判してもらいたいものだ。

さて、調べたところ、この基礎免疫という概念の提唱には「ワクチンを打っていないと感染した後の抗体価が低い」「ワクチンを3回打つと、抗体価の量が概ね最大値になる」という事が背景にあるらしい。これらの事象をワクチン推進用の詭弁に用いているのが基礎免疫という概念なのだ。

そもそもパンデミック初期において、「ワクチンを打った人と、打っていない人」という群を「感染後の抗体価」で比較した時に、ワクチンを打った方が高くなるのは当然である。なぜなら、ワクチンを打った人は獲得免疫応答による反応によって早く強い反応が起こるが、ワクチンを打っていない人はそれが初めての免疫応答になるからだ。実際にワクチン1回目だけでは抗体価があまり上がらないという事を考えれば当然の事である。逆に言えば、本当に「基礎免疫」とやらがワクチンでしか獲得できないかどうかは、ウイルスに複数回感染した場合の抗体価上昇を比較しないと無意味なのだ。そういう当たり前の考察が出来ていない。

「3回目で最大抗体価に達する」からそれが基礎免疫の成立というのも意味不明な考えである。そもそもいつも言っている通り、免疫反応というのは強ければいいというものでは決してない。むしろ、それ以降何回投与してもそれ以上の抗体価にはならないという「最大レベルの抗体産生」が起こっている状況というのは、様々な実験をしてきた私にとってはこれ以上ない恐怖である。それだけの強い免疫応答を人為的に引き起こすという事自体正気の沙汰ではない。また、当初2回接種で充分な効果を示した報告が多々ある訳であり、抗体価が最大に達する事が重要な評価点という事がまず間違っている。いつも言っている通り、今の核酸ワクチンは液性免疫だけでなく細胞性免疫も、何なら自然免疫もごちゃごちゃに活性化しているからだ。

また、この記事の中では3回目の接種でウイルス感染の後遺症が大きく減ると書いてあるが、ソースが無い。ワクチン推進派はこういうソースを全く示さずに適当な事を述べる非科学的な集団だという事がよく分かる。一方で、私は全て科学的な情報を基にワクチンが後遺症(特に中枢神経症状)にほぼ無意味だという事を繰り返し訴えている。

Nature Medicineに掲載された1300万人以上を対象とした研究において(Nat Med. 2022 Jul;28(7):1461-1467.)、SARS-CoV-2に対するワクチン接種は感染後のLong-Covidリスクを約15%しか下げないことが示されている。この研究がワクチンがLong-Covidからどの程度保護するかを調べるために使用された最大のコホートであり、これは、より高い予防率を示した過去の小規模な研究とは対照的である。ワクチン推進派は後者の小規模で適当な研究を頑張って紹介する事に必死なのかも知れないが、Nature Medicineの1300万人のデータより信頼できる訳が無いのだ。

さらにこの研究では、SARS-CoV-2陽性と判定された後、最長で6ヶ月間、ワクチン接種者と非接種者のBrain fogや疲労感などの症状を比較している。その結果、ワクチンを接種した人と接種していない人の間で、症状の種類や程度に差は無かった。これは以前から私が引用しているBrain fogに対してはワクチン効果が極めて低い(Lancet Infect Dis. 2022 Jan;22(1):43-55.)という報告とも一致している。一般的に中枢神経系は免疫系が機能を発揮しにくい組織だと知られており、必然的に中枢神経系感染に対してはワクチンの効果が低いのだ。

これが本当の科学的考察であり、3回打てば「基礎免疫(笑)」が付くから何もかも大丈夫というのは全くの間違いである。むしろ科学者ならば「核酸ワクチン」が既存のワクチンとどの様に異なり、それ故にどの様な「特有の免疫反応」や「特有の分子生物学的機序」を誘導するのかをきちんと説明し、それに伴う「既存のワクチンには無い特有のリスク」を説明するべきなのだ。今後もこの様な愚かな記事は徹底して糾弾していきたいと思う。

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