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怪物【極私的感想】

今や「世界のコレエダ」と呼ばれる映画監督の是枝裕和が今回は脚本家の坂元裕二とタッグ組んだ作品ということもあり、配信でじっくり二度観た。

三部構成になっていて、一つの問題点を三人の視点から描かれていて、多くの伏線が仕掛けてあった。
モノを見る角度が違えば、まったく違う世界が存在するのを一本の作品に閉じ込めた力作だった。

子役の二人の男児が映画の主役としており、その脇を固める安藤サクラ、永山瑛太ら実力のある俳優二人がこの物語を描いている。

内容はともかく、この映画が様々な映画祭で高い評価を得ているのだが、少し腑に落ちないところがあるのだ。

日本アカデミー賞では主演女優賞を安藤サクラが受賞したのだが、安藤同様に迫真の演技を見せた永山瑛太はノミネートすらされていなかった。
登場シーンの数からしても安藤サクラよりも永山瑛太の方が多く、過酷なシーンを演じていたはずなのに。

また推理映画並みの伏線を張り巡らせた坂元裕二によるシナリオも十分に評価に値するのにも関わらず、脚本賞のノミネートにも入っていない。

これが同じ東宝関係作品である「ゴジラ-1.0」にフォーカスを当てたいという東宝の狙いだったとすれば、日本アカデミー賞という映画の祭典にはガッカリする。

話を映画に戻すが、
この怪物という映画に登場した俳優の中で1番爪痕を残したのは校長先生役の田中裕子ではないだろうか?
無気力で無機質で無責任な人格を無表情で演じていた気持ちの悪さは後を引くものがあった。
そういう意味で田中裕子がこの映画の助演女優賞だったと思う。

そして是枝裕和ならではのテクニカルな描写は5年前の「万引き家族」から格段に進化しており、逆にこれ以上進化されると個人的には寂しいかもしれない。

とりあえず面白いテーマを描いた映画だった。


87点

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