(考察)パパのカレーライスは踊っているか
なぜ、普段は料理などしない父親が作るカレーライスはあんなに美味しいのだろう。妻と子供がクレヨンで絵を描いているのを見ながら、晩秋の日曜の午後にふと頭に浮かんだこの疑問。まさかここまで脳裏にこびりついて離れないトラウマになるとは思わなかった。
洗濯物を取り込むタイミングで「晩ごはんどうする?」と外から顔だけ出して聞かれるだろう。手持ち無沙汰な私はあるもので作ろうかと言う。そうすると野菜一色、肉、カレールウがあるというものだ。切って焼いて煮込んでご飯に盛り付けてできあがり。それでは芸がないので、やれ牛乳だ蜂蜜だと入れるわけで。何か自分の一工夫を混ぜたいと思うのがパパだ。そして食卓に並ぶと子供は喜び妻は特別なカレーだとか隠し味が気になるなどと精一杯称賛する。気を良くして洗い物までする。
しかしこれはなんだ。この違和感は。
晩ごはんどうするとはどういう意味か。晩ごはん何食べたい?なら分かる。どうする?とはなんだ。都合よくカレー材料一式は揃うのか。カレー用の肉はカレー以外に使うことがあるのか。
カレーライスとはなんだ。ほんとに隠し味は効いているのか。何をやっても失敗なんかしない料理だろう。スパイスを油で溶いたカレーというものをTNT爆弾とするなら、小匙の蜂蜜なぞ線香花火の持つところの、あの用途不明なピラピラ程度ではないか。隠し味が隠れ過ぎるだろう。
いや待てよ。
そういえば会社でも〇〇のキャンペーンチラシこれでどうですかと上司に持って行くと「裏面の色、もうちょっと緑のほうがいいかな」とまったくキャンペーンと関係ない内容で、しかも変更したところで集客が増えるわけでもないまったく無意味な指示を出してくることがある。あれだ。あれと同じなんだ。
結論はこうだ。妻は晩ごはんを作るのが面倒だからパパに作らせたい。しかしパパに自由に作らせるのは不安だ。ゴミを食わされる可能性もある。そこでカレー一式を揃える。カレーライスなら何をやってもカレーライスだからだ。失敗は怖いが威張りたい男の心理を逆手に取って誘導する。そして満を持して褒めまくる。それを子供は妻のおべんちゃらだとは気付かず刷り込み効果で何度も聞いて育つ。そしてパパのカレーライスは特別うまいものだと錯覚するのだ。
待てよ、もし子供がこの事に気付いていたとしたら…
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