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【ホラー小説】Fall down 16 scrap"J"
神隠し
我が国において人間が忽然と消え失せることを言う。
古来から使われてきた言葉であるが、不可解な行方不明のことについて、現代でも用いられる。
かつて行方不明者は山や森等人里離れた異界、神域へ連れ去られたと考えられた。柳田國男が著した「遠野物語」、鎌倉時代に成立した「吾妻鏡」などにも記録が見られる。
連れ去ったものは神だけではなく、天狗や山神、鬼、狐等異界の存在達が関わっていることが示唆されている。
また、日本各地に神隠しにあった者を連れ戻す呪術が存在し、太鼓を打ち鳴らしたり、屋根の上に昇ってその者の名を叫んだりする方法が伝えられている。
不可解な失踪事例
大正12年に現在の東京都青梅市内の山道で、一人の少女が保護された。
少女は泣きじゃくっており、まともに話をすることが出来ない状態であった。
少女を駅まで連れて行き、調べたところ、岩手県盛岡市内で行方不明になった少女であったことが判明した。
少女によると、鬼ごっこをして遊んでいたところ突然行方不明となり翌日に東京で発見されている。
一夜にして数百キロを移動していることから、神隠しであるとされた。
少女については、その時のことについては何も覚えていないという。
岩手県雫石村の農家で、嫁入りに向かう娘を馬に乗せていて、ふと目を離したところ、忽然と馬を残し姿を消した。
いくら捜し歩いても見つからなかった。
半年ほどたったある冬の夜、消えたはずの花嫁がその時の姿のまま、商店へ酒を買いにやってきた。
驚いて何もできないままいると、彼女はさっさと買い物を済ませると店を出た。
すぐに追いかけたが、店に入ってきた足跡はあるものの、店から出た足跡が全く見つからなかったという。
村では酒を買った娘が、店を出た瞬間天に引き上げられたのだろうと語り継がれている。
現在の福島県田村郡内の山村で、近所の子供たちが3人で遊んでいた。親たちが庭先で遊ぶ彼らを見て、昼食を用意しようとして台所へ行き、戻ったところ3人とも忽然と姿を消していた。
彼らがつい先ほどまで遊んでいたかのように、使っていたゴムボールがまだ庭先で弾んでいた。
その後懸命に捜索するも一向に発見されず、5年が経過した。
ある冬の夜、派出所に一人の男が駆け込んできた。
彼によると神社の鳥居の上に笑いながら並んで座る子供たちを見たという。恐ろしくなって逃げだしたが、思い返すと行方不明になった3人の子供たちであった。
警官と確認に戻ったが、そこには誰もいなかった。
しかし、鳥居の上にはつい先程まで人が座っていたかのように、中心付近だけ雪が積もっていなかったという。
三重県内において一人の少女が妹と学校から帰る途中に行方不明となった。
妹に学校に忘れ物を取りに戻ると告げてから、数時間たっても家に戻らない。
学校に確認したところ、正門に設置された防犯カメラに彼女が学校内に入る姿が記録されてる。
しかし、正門の防犯カメラ映像から見切れて校舎に入った姿を最後に、学校内に10台以上設置されている防犯カメラ映像のどれにも彼女の姿が全く映っていない。
数日後、母親の携帯電話に「さむい、さむい」と繰り返す少女の留守電が記録されていた。
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