【ホラー小説】Fall down　７ scrap"E"

　５歳の息子を持つお母さんに聞いた話である。
　ある日、ご飯ができたので息子を呼びに行った時のこと。
　息子は仏間で遊んでいるはずだ。
　仏間の戸を開けると息子は仏壇の前で、おかしな動きを繰り返している。
　両方の手のひらを横に合わせ、何か液体を掬うような形にする。
　そして床近くからその手で何かを掬い上げるようにして、口元まで運び、空の手のひらからごくっごくっと見えない何かを飲み込む。
　息子は自分に気付いていない。
　何してるの、と声をかけたところ
　「ここからおいしいお水が出てるの。だからさっきから飲んでるの」

　息子がそれ以降、一人で仏間に行ってはその動きを繰り返している。
――怪談収集家の実話怪談「湧き水」