開発コンサル企業に待ち受ける「緩やかな死」
本日は、国際協力業界における開発コンサルタントに待ち受けるこれからについてお話したいと思います。その前にODAの仕組みについて説明しておきます。
ODAの仕組み
詳しい説明は調べれば出てきますので、簡単に紹介すると、
①日本政府と現地政府の合意
②JICAがプロジェクト化⇒公示
③開発コンサル企業が応札⇒競争⇒1位の企業に業務委託
④現地でのプロジェクト実施
と、こんな感じですね。
JICAがプロジェクトを創る仕事で、開発コンサルがその実働部隊というイメージです。
開発コンサルのお給料
さて、2017年にJICAの調達部が出している「コンサルタント等契約における2019年度直接人件費月額単価(上限)について」を見てみましょう。開発コンサルはたいていJICAの案件に従事していますから、これがほぼ収入の原資に当たります。
格付け(標準年数)【基準月額(円)】
特号(その都度決定)【1,376,000円】
1号(大卒23年以上)【1,270,000円】
2号(大卒18年以上23年未満)【1,076,000円】
3号(大卒13年以上18年未満)【950,000円】
4号(大卒8年以上13年未満)【782,000円】
5号(大卒5年以上8年未満)【640,000円】
6号(大卒2年以上5年未満)【528,000円】
会社に所属していると、うち数十%は会社に持っていかれますので、残りが収入になります。あんまり具体的なこと言うとアレなので、細かい割合なんかは想像に任せますが、そこまでの収入にならないのが、よくわかると思います。まあ、40後半で年間フルで案件に従事して、年収が1,000万円前後くらいじゃないですかね。
開発コンサルは儲からない?
省庁の仕事は大体そうですが、人件費を計上する場合には、その人件費の根拠を示すために、業務日誌を提出する必要があります。以下は、農林水産省のフォーマットですが、こんなのです。省庁間や案件間で人件費がダブルカウントして計上されていないかチェックされます。
人間は1日24時間しかありませんし、就業時間は概ね8時間ですから、年間で大体2085時間程度が仕事に割ける時間となりますが、そうすると コンサルの時給単価×2085時間ですかね。
※実際は人月計算を採用していますが、便宜上、時給単価としています。
本来的に言えば、成果だけを求められるのがコンサルタントなのに、プロセスをJICAに管理されてしまうので、例えば、A案件とB案件の両方に人件費を計上することはできないわけです。省庁コンサルは、いくつの案件を抱えていようとも、きっちり2085時間分しか人件費を請求できないのです。
これは、省庁コンサルの宿命です。クライアントが企業であれば、プロセスなど関係ありません。クライアントとしては、コンサルが成果を出してくれれば良いですし、従事している人間の労務管理もクライアントがすることなんてありません。ですから、個人の能力でいくつも案件を掛け持ちしたら、その分給与が上がります。省庁コンサルは2085時間という制約があるので、給料は青天井ではありません。
省庁コンサルは単価が高い案件に入りたがるので、新規事業開発なんてやらない
2085時間という制約がある中で、どのように収入を上げようかとなれば、当然、時給単価の高い案件に入ろうとします。JICAは金額が指定されていて比較的高いです。そうすると、稼ぎになるかどうかわからないような新規事業なんて、相当のもの好きでないと絶対にやらないわけです。そう遠くない未来でジリ貧になることがわかっているけども、現在の収入を保とうとすればJICAの案件に入ることが最短ルートになる。よく、なんでだろうと笑い話で挙がる、先々まで見据えれば、ぼったくることよりも、適正金額で長らく贔屓にしてもらうことの方が利があるのだとしても、目先の金に目がくらんでしまう途上国のタクシードライバーと同じ構図がそこにはある。
開発コンサル企業が新規事業を始めることは構造上、難しい
JICA一本足打法が厳しくなっていくだろう状況の中で、会社の事業ポートフォリオを最適化する必要がありますが、コンサルタント視点に立てば縮小傾向が明らかであってもJICA案件を取りにいかなければ稼げないというジレンマに陥るのです。これは、新規事業立ち上げに従事する金銭的なインセンティブがないから起こるのですが、かと言って新規事業立ち上げに多額の人件費を付けることはできない。
だから、今後複数年で、開発コンサル業界は業界大手三社程度に集約されると思いますよ。現に今それが起こっています。人口が減り、日本の税収が少なくなり、ODAが縮小する中においては、新たな事業に希望を見出すほかありませんが、構造上なかなか難しい。もはや、ゆでガエル状態ですね(本当はカエルは逃げ出すみたいですけどね)。時代の激しい時代で、柔軟に変化していけないと、死にゆくだけです。
開発コンサルタントを目指す人へ
開発コンサルタントになって、現地で活躍しようと感がえている人たちは、収入面でもキャリア面でも、もう一度考えた方がいい。それは、何も開発コンサルタントになるなというわけではなく、開発コンサルタントとして必要な能力やスキルも身に付けながら、別のキャリアもパラレルで形成する必要があるということが言いたいわけです。
例えば、社会課題をビジネスで解決する能力・スキルですかね。これを持っている人は業界的には、ほとんどいません、ほんとに。途上国でプロジェクトを数十年やってきたからと言って、事業がすぐに構想できるわけではありません。
それでは、アディオス!
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