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フェアフェア活動レポート(ARTISTS` FAIR KYOTO 2020)

活動レポート

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、2020年2月29日から開催予定だったアートフェアイベントARTISTS` FAIR KYOTO2020(以降AFK2020と記す)は中止を決定しました。イベントは搬入設営のみ行い、記録とオンライン販売へ移行する方針を発表します。ここで、対話型のパフォーマンスを行う予定だったフェアフェアは、別会場に移動してパフォーマンスを決行しました。

この記事では、リサーチプログラムMIMICとして、アートフェアイベント参加作家の一グループであるフェアフェアの活動に加わっていた岡本から、その活動レポートを行います。

フェアフェアについて

フェアフェアは、陶芸作家の宇野湧と現代美術家の黒木結、そしてアーティストリサーチプログラムMIMIC(岡本秀、熊野陽平)4名によって、AFK2020のために一時的に発足したグループです。
フェアフェアでは、作家が作品購入者と相談しながら制作する「テーブルパフォーマンス」を行います。
その内容は、宇野、黒木が相談者の食生活や暮らしについて話を聞き、一緒に相談しながら料理のメニューと器のプランを制作するというものです。
料理と器を実際につくるかどうかは、プランニング後に相談者が改めて決定します。さらに、プランニングの様子などをMIMICが記録します。
この一連の流れを、フェアフェアでは「テーブルパフォーマンス」と呼んでいます。

パフォーマンスについて

文化博物館では、記録用に舞台の搬入と設営を行いました。
正式なパフォーマンスはここでは行っていませんが、相談者にはまず、ドア横のスコアを読んで、インターホンを鳴らしてもらいます。ドアを通って部屋の中に入った時点で、プランニングが始まります。
プランニング料は3000円で、実際に制作を行う場合は別途料金がかかります。

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この作家と購入者が一緒に制作する作品販売のスタイルは、そもそもアートフェアイベントに対する批判的な実践として考案されたものでした。
アートフェアではしばしば、作品購入者が作品を品定めし、作家が一生懸命売り込むという販売プロセスの中で、上下関係が生じます。作家にはセルフブランディングと営業が求められ、作品購入者はほとんどなんの自己開示もせずに接客を享受するシステムが一般化している売買の関係は、美術作品の評価にも少なくない影響を与えています。
フェアフェアの活動には、この非対称な関係性を解体し、作品購入者と作家の相互協力のもとで作品を制作することで、別な提案を行う目的がありました。
しかし、AFK2020の開催中止によって、アートフェアに対するカウンターとしての側面は機能不全に陥ったため、会場移動後からは、このテーマを一旦手放し、コロナ自粛という困難な状況に対する応答として、パフォーマンスを行うことになりました。
プランニング料金も、BnAでは特別に1000円となっています。

フェアフェア パフォーマンス

29日、AFK2020サテライト会場の一つであるアートホテルBnAに場を移し、11時から18時の間で、4組パフォーマンスを行いました。
対話の内容は(大まかですが)飼い猫の毛が入ったり、ごはんを食べてしまわないための蓋つきの器と、一口コンロでも作りやすい煮込み料理のプランニング。キッチンが無く料理することが難しい住まいでもしやすい料理のプランニングと器の販売。仕事終わりに作りやすい食事。展覧会のオープニングで出すケータリングのプランニングなどです。

黒木と宇野が、相談者の話を元にプランニングシートにドローイングやメモなどを記入していきます。(左側は問診表になっています。)
このシートが、プランニングの作品証明書となります。
MIMICは360度カメラ、オズモポケット、スマートフォンなどを利用して撮影者やパフォーマンスに入るノイズも含めた記録を行っています。

テーブル・パフォーマンス

これからのパフォーマンス

3月はじめでは、開催中止への活動場所の移動と決行が「前向きな対応」になり得ましたが、京都でのクラスターが発生し、緊急事態宣言が発令された4月初旬では、実際の場所に集まって何かを行うことはもはや困難なものに変わっていました。
5月に至っての「思い立ったが吉日」展では、フェアフェアはチャットツールでのプランニングとライブ配信を行います。
(またアートフェアからは離れているので、フェアフェアではなく、各個人名義での活動になっています。)
コロナ禍によって、コンセプトの一部を手放さなくてはいけなくなる一方、不測の事態に対し状況を捉え、形に変えて応答することは、必ずしも後ろ向きなことではないかもしれません。
9、10日のオンラインチケットは絶賛発売中です!
ライブの配信も含め、ぜひよろしくお願いします。

                           (MIMIC 岡本)  


大まかな流れ

AFK2020〜思吉展まで
2月26日 21時ごろ 開催中止
 アートフェア開催中止が決定。(文博搬入前日/新聞社搬入完了後) 
 その後別会場(BnA)でパフォーマンスすることを決める。
2月27日 搬入設営
 記録撮影用に、文化博物館での搬入設営を予定通り行う。
2月28日 別会場に搬入
 記録撮影後、セットを一部解体し、別会場に搬入、設営
2月29日 11時〜18時 テーブルパフォーマンス実施
3月1日  黒川岳鴨川パフォーマンス、作品解体搬出
3月2日  搬出、積み込み
      ヴォイスギャラリーでの発表が決まる
3月10日、11日 クニモチユリ参加展「ひとなみとぼうせん(0)」
3月17日 ヴォイス第一回打ち合わせ(宇野、熊野、黒川、松尾、米村)
4月7日  前田耕平、米村優人「田園Live」配信開始
4月12日 「思い立ったが吉日」オンライン会議
      以降オンラインでのやりとりにシフト

政府公式発表など
2月20日 自粛検討の声明
 「イベント等の主催者においては、感染拡大の防止という観点から、感染の広がり、会場の状況等を踏まえ、開催の必要性を改めて検討していただくようお願いします。なお、イベント等の開催については、現時点で政府として一律の自粛要請を行うものではありません。」
2月26日 2週間のスポーツ、文化イベント自粛要請
 「政府といたしましては、この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請することといたします。」
3月10日 要請の延期
3月20日 3密の重なる場を避けるよう呼びかけ
3月29日 京都でクラスターが発生する
4月7日  緊急事態宣言発令

Note

アートフェアイベント中止が決定されたのは2月26日、2会場あるうち京都新聞ビル地下会場の方は既に設営を終えて、フェアフェアの参加会場である京都文化博物館の設営を翌日に控えている状況でした。
この直前での中止判断になったのは、26日夕方ごろに、政府から公式なイベント自粛要請が発布されたことが原因だと思われます。
夜に開催中止のメールがきてから、フェアフェアで対応を話し合っている間に、アートホテルのBnAから会場をお貸しいただけるという厚意を得て、別会場でのパフォーマンス開催が決まりました。
27日、マスクやアルコールを用いて、感染対策をしつつ、予定通り搬入設営を行います。
28日、一部正式にではありませんがVIPの来場がありました。記録撮影後、BnAへの搬入を行います。
29日 11時から18時の間で、4組パフォーマンスを行いました。
◉ここでは思吉展関係者に絞って書いていますが、スプリングバレーブルワリー京都で開催していたサテライト展「Allscape in a Hall」が3日で会期を終了するなどの動きもありました。
◉黒川岳による鴨川パフォーマンスについては、金田金太郎のアートウォッチメン!【番外編】に詳しいです。中止前後の話も詳しく書かれています。
ちなみに筆者は、運営のメールよりも先に椿昇氏のFacebookポストで開催中止を知りました。


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