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#詩
【詩】おかえりとただいまを結ぶ場所を私は
それは遠い冬の出来事
誰も知らない私の記憶
誘われるように不意に目覚めた午前3時
あて先知らずの手紙のような、
首輪の持たない子犬のような、
大きな世界の迷子の時間に、
私の色を塗ってやろうと考えた
カバンから畏まった宿題を引っ張り出して、
絡まった毛をほぐすようにちょっとだけ。
縁側に落ち着いて、
外は夜の黒、雪の白。聞こえるのはそれだけ。
生きているのはきっと私だけ、
そんな誇らしさを感じち
【詩】私を続けようと思った私をどうかいつまでもいつまでも
触れる度にこぼれていく鮮やかな貴方よ
夏のような貴方を産み落としたあの日
貴方は幼く煌めいて、形を持たない絶対の勇気
貴方をあの夏の青にそっと仕舞って、ずっと信じていた
貴方に会えたからきっと存在を赦されたよ
「生きてるよ」に疑われる時には貴方をなぞる
貴方はいつだって正しい笑顔だから、
命測る巨大な現実に目を向けたんだ
そんな貴方がこぼれてく、
雨に打たれる子犬のように
勝手に枯れる花のよ
あたたかな陽だまりのなか
あたたかな陽だまりのなか
スロウに眠る老いた犬の
穏やかな春の流れをわすれてしまうなら
ほんとうのやさしさに包まれながら
最後の花束みたいに眠る犬の
夢はいったいどんなだろう
だんだん古びゆく生活にも
1粒のよろこびと一滴のかなしみを
だんだん薄れゆく景色にも
切ない希望ととっておきの絶望を
しずかにねむる月夜を洗う雨の音
しずかにねむる月夜を洗う雨の音
閉じ込められた花の名 響く行方なく
何もかも何もかもぜんぶ赦していない
ずっとずっとこのまま多分きっと
増えて重なり沈みゆく増えて重なり沈みゆく
幽霊みたいないたずら抱えて深く
しずかにねむる月夜を洗う雨の音
闇に揺れる花の影 見ゆる術なく
ゆえんなくおちた底で泣きそうな顔
そばに居た友だちみたいに霞む
赦さずに赦されず赦さずに赦されず
簡単な言葉に身を投
【詩】何千回も繰り返す
──何千回も繰り返す
──ずっとずっと何千回も
きっと今回が無事の舞台ならよかったのに
ほらやっぱり笑顔の裏側のような雨雲が
撫でるように母親のように撫で襲う
だから今回も頽廃、きっとずっと
何でもない石にあからさまに躓いて立ち上がり方など知らなくて
何か壊れたような何か零したような
転がるように転がるように
見えない夜終わらない夜だから
訪う者のない夜だから
あなたにその凍えるあなたに聞こ
【詩】何よりも透明に
何も持たず燃やせず灰になれない私は
せめて透明になりたかった
風より切なくシャボン玉より軽く
光より刹那で雪より儚く
畢竟何者にもなりたくなかった
所詮借りたもので構成された体と心
埋めつくしても歪なまま
埋めつくしても空っぽのまま
元より純粋でいられない
そういう風に作られた
何より悲しいステンドグラスから差し込む灯
その灯に唆され歩くことが生活
生活のなかで得たもの壊れたもの
言葉
せめて