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オオルリ流星群(伊与原新)

久々に小説を読みました。僕の好きな伊与原新さんの「オオルリ流星群」です。

高校三年の夏、文化祭の出展のために空き缶で巨大なタペストリーを作った仲間たちは年を重ねて四十五歳の中年になっていた。

その中の一人は国立天文台の研究員を経て、高校時代の地元に戻り天文台を作るという。当時の仲間たちは28年ぶりに再会し、再び高校の時にタペストリーを作った時のように暑い夏の製作が始まる。

私設天文台を作るという夢を持つ彗子、親を後を継ぐ薬局店員の久志、高校教師の千佳、会社を辞めて弁護士になるために司法試験の勉強中の修。この4人が中心で作業は進められるが、もう一人うつ病になって引き籠っている和也の陰の存在・・・
そしてタペストリー製作の途中で抜け出してその後亡くなった恵介の謎。

天文台を作るための場所探し、物件探し、そして費用を抑えるために皆で協力しあい、10月のとある流星群が現れる日までに天文台を開くことを目的に製作は進んでいく。
高校生時代の思い出とともに、もういちど中年たちの青春が描かれる物語。


中年ともなればそれぞれの人生があり、経験を積んでいる。
久しぶりとはいえ、学生時代の熱い思いは心に残っている。大人の友情物語であり青春物語。

今回の伊与原氏の科学の蘊蓄はちょっと物足りないかな。ストーリー重視の長編作でした。(やっぱり伊与原さんの作品は短編集が良いな)

ただ、同じような年齢の者としての面白さはありました。
人生の折り返し地点からこの後の生き方とか皆同じように悩むんだなあと。

“人生90年、100年時代になるからには、四十五歳で一度定年して、職を変えなければならない”という「四十五歳定年制」なんて発想は面白い。

この本の中で一番心に響いた箇所を引用して終わります。

人間は誰しも、一つの星を見つめて歩いている。ある者にとってはそれが叶えたい夢かもしれないし、またある者にとっては到達すべき目標かもしれない。
久志の星は、目的地ではなく、北極星のようなものだ。自力で道を拓くことなどできない自分が、何とか迷子にならずに歩いていくための、道しるべ。つまらない星だと人は言うかもしれないが星は星だ。

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