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応募した海外留学助成の一覧と詳細

2020年も残すところあと数日です。

去年の今頃は、博士論文を書いたり、先生のチェックを受けて博士論文を修正したり、その博士論文をブラッシュアップしてました
加えて、留学資金の獲得がうまくいかず、「これ、留学できるんか??無理くね??...orz」という不安を解消するため、ひたすら飲み会🍺をして記憶を飛ばしておりました。

今回は、以前の記事で少し触れた事前準備における海外留学助成金の応募に関しての詳細を書きます。

ちなみに筆者は院生時代に学振は全落ちしてます。DC?何それ、美味しいの?状態でした。

はじめに

現在では、日本学術振興会を含む様々な団体が海外留学の資金援助💰を行っています。

共通する大まかな規定としては以下が挙げられます
・博士号取得済み、または取得見込みである
・長期間の海外留学経験がない
・留学先からの受け入れの承諾を得ている
・若手である(40歳以下・35歳以下、または博士号取得5年以内など)


この他に「医師である」「他から留学資金の援助を受けていない」「〇〇分野の研究を行っている」「〇〇県に在住している」などがあります。

主に5月から10月くらいまでが応募締め切りなので、うっかり期限が過ぎて募集できない!っとならないように定期的な情報収集が必要です。

まずは、自分が応募資格を持つ助成金の一覧(締め切り期限・支給額・応募条件など)を作るっておくとよいと思います。

僕は助成金の応募にあたり、UMIN助成財団センターを利用しました。
UMINは一覧表記により応募可能期限のものがすぐわかるので非常に便利でした。

以下が、僕の応募した団体と結果の一覧です。
10個応募して、補欠採用が3つ、そのうち本採用が2つでした。
(非常に運がよかったです)

・日本学術振興会 海外特別研究員:1次審査突破→面接→補欠採用→〇
・アステラス病態代謝研究会:補欠採用→辞退者がなく×
・持田記念医学薬学振興財団:×
・先進医薬研究振興財団 :×
・第一三共生命科学研究振興財団 :×→繰り上げ補欠採用→〇→辞退
・東洋紡バイオテクノロジー研究財団 :×
・上原記念生命科学財団:期限が過ぎて×
・国際医学研究振興財団:×
・内藤記念科学振興財団 :学内選考×
・日本心臓財団:×

それぞれに関して、応募締め切りが早いものから簡単に紹介していきます。

応募時の業績

一番締め切りが早い海外学振の申請時における業績は以下の通りです。

論文:筆頭5報・共著6報
国際学会:3回
国内学会:シンポジウム1回・口頭4回・ポスター3回
表彰:ポスター賞1回・学会奨励賞1回
その他:給付型奨学金取得
*学振DCは持ってない

公表論文の総インパクトファクター(IF)が重要という噂もあるので、一応記載すると以下の通りでした
筆頭:15 (一番高いIFは5.3)
共著:21 (セカンドで6.0が最高IF)
合計:36

日本学術振興会 海外特別研究員

大学院生ならば必ず聞いたことがあるであろう日本学術振興会(通称:学振)による海外留学助成(海外学振)です。
この海外学振は一説によるとPDやDCなどと比べ、学振の中で最も難易度が高いともいわれているそうで、採択率は毎年約20±2%となります。
支給額は他の助成と比べても高くて最大620万円(留学先によって違う)、二年間にわたります。
申請資格に博士号取得5年未満という縛りや、他の助成金と併用不可という特徴があります。
2月ごろには募集要項が開示され、5月のGWごろまでには所属機関を通して申請を行います。

申請書の様式は、「基本情報+これまでの研究+今後の研究計画+特色&独創性+これまでの研究との関連性+留学の必要性+倫理+業績リスト」「指導者の評価書」でした。

個人的には、ここでしっかりと申請書を作成しておくと後述する他の申請にも転用することができるため、後々が楽になりました。
おそらく、海外学振がこれまでの研究内容や今後のことを一番盛り込んでかける申請書だと思います。

支給額:450~620万円 (留学先によって異なる)
年数:2年
採択:合計150~170件 (20%前後)
募集締め切り:5月下旬
結果:8月に一次審査(書類)の結果発表→9月中旬に二次審査(面接)→10月に二次の結果発表→2月末に補欠採択発表
特徴:他との併用不可・博士号取得5年未満・海外からも応募可能
*必要書類:受け入れ承諾書・推薦書
応募方法:電子

アステラス病態代謝研究会

臨床医学・生命科学・創薬科学の三つの分野から選択し、1年間で200~400万円の支給となり、採択率は毎年250件中11の4%と非常に狭き門です。

「留学先での研究内容+これまでの研究+業績+αを含めて2ページ以内におさめる」「図表は別紙のA4一枚以内」という規定があり、自身の研究をシンプルにまとめて伝える能力が求められていると感じました。
全体的に書ける文章量は少ないなぁという印象。

支給額:200~400万円
年数:1年
採択:10または11件 (4%)
募集締め切り:5月末
結果:10月に結果発表→12月末に補欠採択発表
特徴:200万円以上の助成金と併用不可・1年以上の海外留学経験なし・推薦書不要
応募方法:電子

持田記念医学薬学振興財団

満45歳未満の研究者を対象に1年間の留学を補助してくれます。
支給額は50万円で、バイオ・創薬・免疫・循環器などの医学薬学系の研究を助成してくれます。全体で20件程度が採択されます。

申請書の様式は、「研究内容を800字+最近の業績1000字」でした。
図は入れるとこなかったです。

支給額:50万円
年数:1年
採択:20件
募集締め切り:5月上旬
結果:9月に結果発表
特徴:かける内容が少ない
*必要書類:推薦書1通必要
応募方法:電子

先進医薬研究振興財団

「精神薬療」「循環医学」「血液医学」が対象となり、39歳以下で日本に在住していることが資格条件となります。
1年間で500万円支給されます。上記の分野のどれか1つのみしか応募することができず、推薦書も必要となります。
また採択は各分野2件なので、最も狭き門の印象でした。

申請書の様式は、「研究目的250字+研究内容2000字+留学での期待と夢250字+業績10編」でした。

支給額:500万円
年数:1年
採択:2件
募集締め切り:6月中旬
結果:11月に結果発表
*必要書類:推薦書1通必要
応募方法:電子

第一三共生命科学研究振興財団

生命科学特に疾病の予防と治療に関する分野の研究行う35歳以下の研究者を対象としており、「基礎的生命科学分野」「臨床的生命科学分野」「創薬生命科学分野」から選択し、550万円を2年間にわたり支給してくれます。
採択は毎年5件(うち1件は女性で確定)となっており、すでに留学している場合は助成対象外となります。
申請には財団が指定した推薦書への記入が必要なため、大学や研究所が指定団体に入ってない場合はそもそもの申請資格がありません
(僕は大学の掲示板に掲示されたポスターを見て存在を知りました)

一度補欠採用はない旨をメールでもらう→電話で枠が開いたことを知る→面談を行う(留学の意思確認)という流れでした。
学振が後に採択されたので辞退させていただきました。
(担当の方非常に親身になってくださり、採択後の準備があるにも関わらず、学振の結果通知次第で返答してくれればいいという猶予をくれました、感謝です)

申請書の様式は、「これまでの研究+留学の研究目的+研究内容を3ページ以内」でした。

支給額:最大550万円
年数:2年
採択:5件
募集締め切り:7月末
結果:12月に結果発表→面談の後に採用決定
*必要書類:指定の推薦書必要・受け入れ承諾書必要
応募方法:書類郵送(今は電子らしい)

東洋紡バイオテクノロジー研究財団

バイオ系、特に技術的なもの(細胞培養・酵母・組み換えDNAなど)の研究を行う39歳以下の研究者を対象に550万円を1年間支給してくれます。

申請書の様式は、「留学の研究目的+研究計画+これまでの研究+推薦書・帰国後の教育や活動予定+履歴書+業績」でした。

支給額:550万円
年数:1年
採択:3~7件
募集締め切り:8月末
結果:11月~12月に結果発表
*必要書類:指定の推薦書必要・受け入れ承諾書必要
応募方法:書類郵送

上原記念生命科学財団

リサーチフェローシップとポストドクトラルフェローシップがあり、年収や年齢に応じて資格が異なり、37歳または33歳以下が対象です。
分野は「東洋医学、体力医学、社会医学、栄養学、薬学一般」「基礎医学(上記以外)」「臨床医学」の3つで、所属機関からの推薦が必要となります。
1年間で最大450万円を支給してくれ、採択件数も60件80件と他と比べると多いです。
しかし、所属機関の推薦をもらえるかどうかがネックです。
(僕は学内にめちゃくちゃ強い敵がいたのでコスパが悪いと思い、提出はやめました)
また、通算2年以上研究留学の経験がある者は対象外となります。

支給額:最大450万円
年数:1年
採択:60 & 80件
募集締め切り:9月頭
結果:11月~12月に結果発表
*必要書類:所属機関の推薦書必要・受け入れ承諾書必要
応募方法:電子

国際医学研究振興財団

医学系の研究を行う満40歳未満の研究者が対象で、2年間にわたり最大250万円を支給してくれます。
年収制限や海外留学経験による制限などがあり、採択数も5件と厳しめです。

申請書の様式は、「留学先での役割+研究テーマ&帰国後のビジョンなどを2ページ・論文や学会発表などの業績を別紙」でした。
割とさっぱりした申請書の印象でした。

支給額:最大250万円
年数:2年
採択:5件
募集締め切り:9月上旬
結果:11月に結果発表
*必要書類:所属機関の推薦書必要・受け入れ承諾書必要
応募方法:電子

内藤記念科学振興財団

自然科学の基礎的研究を行う40歳までの研究者を対象にしており、450万円を1年間支給してくれます。
採択数は10件で、所属機関からの推薦が必要なため、所属機関での戦い+それを勝ち向いてきた猛者たちとの戦いに勝ち残らなければなりません。

申請書の様式は、「略歴一枚・指導者のコメント+留学の必要性+研究計画+業績大要+論文&学会発表リスト」でした。

ちなみにこの助成も学内選考で負けました。

支給額:450万円
年数:1年
採択:10件
募集締め切り:9月末
結果:12月に結果発表
*必要書類:所属機関の推薦書必要・受け入れ承諾書必要
応募方法:電子+郵送

日本心臓財団

心臓病・脳卒中・高血圧・動脈硬化症等の循環器疾患を研究する40歳未満を対象としており、1年間で300万円を支給してくれます。
採択数は毎年10件(2020年は32件中10件の31%)となります。

申請書の様式は、「略歴・指導者のコメント・研究計画+特色&独創性+留学の必要性+留学期間の特徴+これまでの業績大要+論文リスト」「代表論文3篇のコピー」でした。

支給額:300万円
年数:1年
採択:10件
募集締め切り:11月末
結果:2月に結果発表
*必要書類:所属機関の推薦書必要・受け入れ承諾書必要
応募方法:電子+郵送

まとめ

10個の支援団体に応募してみて感じたことは、

・受け入れ承諾書は早めに用意する
・所属機関の推薦書は基本1枠であるため、事前に所属機関内の優秀な方の動向は確認しておく(学内選考で落ちるとショックです、また作成時間も無駄になり、荒れます)
・図表が使えない申請書もあるため、文章だけでシンプルに説明できるように準備しておく
・自身の研究内容だけでなく、留学の必要性やPIの著名な業績などは文章化しておく(著名なラボを選ぶほうが獲得しやすいとかなんとか、、)
・留学後のビジョン(教育や夢)を考える
・業績を積む(関連性があるとなおヨシ)

申請の際に戦う相手は、助教や准教授などの大学の教員、研究所のポスドク、すでに留学している海外ポスドクなどで大学院生上がりだと業績面ではおそらく敵わないかもしれません。
そのため、「期間内に実現できる」「臨床や人間社会への影響・メリットが大きい」「余人が思いつかない斬新さ・新規性をもつ」など申請書をブラッシュアップする必要があります。(最初の以外は難しい、、、)

ちなみに僕に内藤の学内選考で勝った相手は、出した助成金(上原・内藤・海外学振・PD)のすべてに採択されてました。
優秀な方はすべてをかっさらっていきます。

コツでもなんでもなくよく言われている手法ですが、申請書を他分野(少なくとも他疾患)の研究者に読んでもらうことが重要だと思います。

僕は研究室の先生3人(主に講師の先生)・脳外科医の先生3人・卒業してアカデミアに行った先輩1人・博士の時の同期2人・他疾患を研究する後輩2人の計11人にチェックしてもらいました。

自身の申請書を振り返ってみると、新規性は薄かったものの、実現可能性や臨床的意義は高かった気がします。
様々な人の協力と色々なめぐりあわせのおかげで、2つ補欠採用していただきました。

申請書の作成に慣れていない場合、ついつい独りよがりで自分にしかわからない「それ何の意味があるの?」的な申請書を作成しがちです。
そのため、無能はいろんな人の力を借りて少なくとも客観的でわかりやすい申請書を作ることを心掛けましょう!


長くなりましたが、以上が僕の応募した海外留学助成に関する全てです。
もし質問などありましたら、Twitterなどから連絡してください。

では!
(^▽^)ノシ

研究生活の糧にさせていただきます。