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現場は計画が全て・コンセプトとストーリーを表現する「現場デザイン」


 3Kと言われる現場は、きつい・汚い・危険な世界と言われます。
監督は現場を闊歩し、職人を束ねるのが仕事で、デザインなんて言葉からはほど遠いもの。世間からみれば、監督など何をしているのか認知されず、社会的にその価値はまだまだ低いのです。仕事自体はブラックだと言う印象で、朝早く夜遅い。また、現場監督をやめていく人が多いのも現実です。

 そんな現場監督にデザインなど出来得るのか?

 答えは、出来得るです。

 言うなれば日々、デザインの連続です。

 現場監督は、様々な計画をたてます。物件毎に異なる諸条件をクリアしながら、シュミレーションを繰り返し、何もない原っぱに人工物を構構築します。どんな雨にも風にも負けず、実現可能な方法を模索し、突き詰めていきます。

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 例えば、延べ床面積25,000m2、工期2年の病院建設プロジェクトでは、成熟した技術者がいない状況下で、平均年齢20代の若手で現場を廻す必要がありました。若手中心のチームでこの大現場を、いかにこなすかが課題でした。

 ここでのコンセプトは、「物量をいかにこなすか」

 良い仮設は、全ての問題を解決してくれます。
 以下は、仮設の考え方の一部です。

 搬入ゲートはひとつ。
 道をつくり橋をつくり、そこに街区をつくります。
 建屋をぐるっと一周できるように、ロータリーにしておきます。
 どこからでも建屋にアプローチできるように。
 そこに移動式のクローラークレーンを配置します。
 場所を限定することなく、フラットな環境をつくります。
 どんどん資材を投入していきます。

 定置式クレーンであればコストは抑えられるが、旋回範囲の関係で建屋内にクレーンを配置せざるをえなかったりします。また、基礎を築造する必要があリます。建物への影響と、クレーン解体後に仕事が残るなどの面倒な作業があリます。一方、クローラークレーンであれば移動ができ、旋回範囲の制限はなく、基礎も必要ありません。フットワークは断然軽いのです。


 ここでのポイントはお金は掛かるが(お金は他の工事で稼げばよい)、時間を買うです。圧倒的な物量をクリアするために、余計な手間は省略します。シンプルでわかりやすい仮設計画となっています。


 ここで、注意なのはこれはあくまで自分が担当したことによって、その時に関わった人たちによって生まれた計画です。同じ物件を他の人が担当すれば、また違う計画となり、つくり方が代わり、出来上がった建築は違った空気を、持つことになります。答えはひとつではなく、同じ事象から、人は全く違うものを得るものです。

 これらの計画は「ただやればいい」ではなく、「何のためにやるのか?」「誰にメリットがあるのか?」目的意識を持って、スタディを繰り返し、発見に近い解答を導き出した結果です。 

これは、もうデザインではないでしょうか?

 表現の話であれば、現場では工程表を描きます。その工程表は白黒の単線でも描けますが、それでは各工事の取り合いが、わかりにくかったりします。工程表は、現場全体の道しるべです。ぱっと見で、工事の流れが伝わなければなりません。ただ描けばいいではなく、いかに現場を進めるかを考え、伝え、それをカタチにしたいものです。各エリアごとや業者別に色分けをしたり、吹き出しをつけて注意ポイントを、強調表現するなどして、自分の思いや考えをカタチにします。現場の進め方をデザインし、工程表で表現する。

 これも現場を進めるデザインなのです。

 現場はマニュアル通りにいきません。マニュアルにない部分の楽しみがあります。イレギュラーに対応するには、現場を進める前段階で、さまざまな状況を想定し、シュミレーションを繰り返します。イレギュラーを想定しておきます。その過程で可能性や選択肢を増やし、最適解を選びとっていく作業が必要です。その作業で得た結果が、計画であり、デザインすることなのです。その過程と結果が楽しみなのです。

 現場監督は、「現場をデザインすること」が仕事なのです。


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