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不便の益というものがあるらしい
「不便益」という考え方があるらしい。
「不・便益ではありません。不便の益 (benefit of inconvenience) です。
不便で良かったこと、ありませんか? 」
「便利とは、手間がかからず,頭を使わなくても良いことだとします。そうすると、不便で良かった事や、不便じゃなくちゃダメなことが、色々と見えてきます。 」
不便益システム研究所 川上浩司
工事写真の不便益
建設現場では工事写真を撮ります。適正な施工がなされたことをエビデンス(証拠)として、写真に記録します。
今でこそデジタル写真ですが、昔はフィルムでした。現像屋さんにわざわざ依頼して、数日待って、写真を持ってきてもらいます。
写真の現像に時間がかかるものだから、一枚一枚の写真をちゃんと撮らなければ、取り返しがつかないことになります。
写真を撮るときはカメラを構え、鉄筋の本数を数えたり、黒板の文字が見えるかなど、現像した写真をイメージしてファインダーごしに、確かなものであることを確信してシャッターを切っていました。また写真を撮るために品質基準を暗記したり、アンチョコをポッケに入れて、現場が適正かどうか確認することが仕事だといい聞かせていたものです。
ですが、今は、デジタルで何回も取り直しが可能です。品質管理としての作業ではなく、「ただ撮ればいい」と単純作業となり、品質管理どころか要求品質を満たした証拠もままならず、挙句の果てに品質的にNGな写真も残そうという始末です。当然、ダメな時は是正しますが、撮り直しという二度手間となり生産性は落ちるという結末です。
ここでの不便益は写真を現像しなければいけない不便のなかで、品質の勉強をし、現場がその通りになっているかの品質をチェックする。
結果的に技術力と品質向上の益を得ていたわけです。
指示書の不便益
職人への指示も同じです。口頭で指示するのは簡単で楽かもしれません。ただ口頭であれば「言った言わない」問題や間違った伝わり方をしてしまうことなど、リスクの高い情報伝達です。現場は、何もないところに何かを創造する場です。口頭だけではなく、面倒だけれどもビジュアルで、伝える努力が必要です。視覚で訴えるのです。図面やスケッチ、表だと伝えやすいビジュアル表現はいくらでもあります。手間はかかるけども、ビジュアルで間違いのリスクを軽減し、職人の理解力を上げ、またそのビジュアルが他の職人や業者へも転用可能であるなど、現場へのプラスの効果は大きいのです。
不便益を得るためにあえて、ビジュアルで表現する.
対物確認の不便益
現場では、働き方改革、ICTなどといわれる中で、膨大な仕事量に対応しiPadやBIMなどを導入し道具を準備します。一般的に一番ダメなのはその道具を駆使して情報共有を目指すが、結局見ていなかったや気づかなかったなどと言って、知らず知らずのうちに大問題に発展していたなどよくある話です。そうならないために大事にしていることがあります。
一に朝礼、二に昼礼と声をあげチームの結束力や注意ポイントをクラウドにあげた情報で、iPadを使いながら大型モニター(ビッグパッド)に向かって生の声で確認し合うこと。またBIMで作った3D画像をスクリーンショットしそこに工程を書き加え、4D化し進捗確認をわかりやすく情報共有していくなど、BIMスキルを上げることに苦戦しながら、その活用方法を手書きで少しづつ悩みながら模索する。そして、複雑な納まりや2Dで表現しにくい納まりをBIMを使い3Dのビジュアルで確認し、それをちゃんと現地に行って、そのものを生で対物確認し触診する。
結果、安全や品質、工程なども新たに気づきを現地現物で発見する。
つまりわざわざ口頭で確認したり、現地に行くのは面倒だけど、そこで新たな発見という益を得ています。
便利=手間がかからず、頭を使わなくてもいいこと
不便=手間がかかり、頭を使うこと
何か、現場で問題が起きている。うまくいかない。なにをしてもダメなときは不便をあえて取り入れてみる。世間は自動化やリモートなど便利さを追求する方向ではありますが、別のところでまた、問題が起きているのではと感じます。立ち止まって冷静に考えて、本来の目的を再確認する。そして得られる益を探して積極的に、「不便」を取り入れてみるのもいいのかもしれません。
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