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NPOがコミットしているところはどこかが見えると、怒らなくてすむよ

NPOさんとお仕事していると、例えばホームページ制作のお手伝いや、寄付キャンペーンのお手伝いをすることがあります。こういうお仕事は、ある程度期間がきまっていて、その期間内にご支援をします。

スケジュールを立てたり、WBSという詳細な項目をつくったりしますが、そうしたものが役立つことはあまりありません。プロジェクトが遅れる原因になる作業のことをボトルネックというのですが、そのボトルネックは、団体さん側が制作する文章であったり、作業や意思決定だったりします。いくら、スケジュールやタスクの期限をわりふって、いくらリマインドしても、団体さんがそれを予定通りにできることはまれです。

もちろん、支援している自分のタスクはスケジュール通りにやった上でのことです。そして、団体さんが作業に取り掛かるために必要な前準備や、要求されたことをやり、いわゆる「外堀りを埋めて」も、その期限を守ることへの優先順位は低く、守られることはあまりありません。

これまで、私はこのことが理解できなくて、なんて責任感がない人たちなんだろうかと憤慨していました。でも、一つの団体さんだけでなく、複数の団体さんがそうなので、自分の考え方が違うのかな?と思うようになりました。このことを、周りの人にお話しても、「NPOはリソースがないからですよ」と言われましたが、「そんな次元の話ではない」と思いつつ、答えが出せなくて飲み込んでいました。

最近わかったその答えは、コミットしているところが違うんだなということです。コミットとは、絶対にやりきるために約束することで、優先順位を高く置いてそれに取り組むことを表します。「絶対にやりきる」少し重い約束で、精神的・肉体的にしんどいので、一時期にコミットできることはそんなに多くありません。

業務委託契約をすると、私は、契約に定められた期間や成果物についてコミットするので、制作物の作成やサービス提供をスケジュールに沿ってやっていきます。契約に定められているので、期間とかやることについて、相手も同じところにコミットしているだろうと思い込んでしまいますが、NPOはそんなところにはコミットしていません。

NPOがコミットしているのは、困りごとを抱えている人への支援や、社会問題の解決、状況の改善を長い時間かけてでもやっていくことにコミットしているので、その手段である、細々としたことにはコミットしていないのです。

いやいや、大きな目的にコミットしているということは、それに関連する作業もコミットするのでは?と論理的な思考を持った人は思うでしょうが、コミットは精神的・肉体的にしんどいので、そんな全体の中の細かいことまでやりきれません。そして、論理的なことで世の中がまわっているわけではありません。むしろ非論理的なことでなりたっているのが現実なようです。

簡単にいうと、そのNPOが対象としている困っている人がいたら、ホームページをよくすることや、寄付を募るための準備なんてどうでもいいことで、
困っている人がたまたま少なくて、時間が余っている時に、やっているだけのことです。

なので、途中の定例的な会議で、代表さんが「いいねーいいねー」という言葉を信じてものごとを進めていても、最後のさいごで「誰がこんなレベルでいいと言った?」「どうしてこんなことになったのか説明してくれます?」といって平気に振り出しにもどります。

それは、途中の会議の時は、何か重要なことがあって自分の思考力をかけられる余裕がなかったので、とりあえずいいねといっているだけだったり、いいも・わるいも判断できる状況でないが、プロジェクトの進行をとめるのも非効率だからとか、もしここでとめたら自分が時間をかけて考えないといけないから、そうなったらめんどうだなとか、終盤までとりあえずやらせといて、かたちになってからダメ出ししたら、もっといいものうまれるだろうと思っていたり、いろんなことを思われているわけです。

例えば企業でシステム開発のプロジェクトでは、こうした手戻りは大きな損失を生むのでそれをさけるために、議事録をつくって、言質をとっていったり、プロジェクトの進め方の手順はこうですねと合意をとって、進めていくわけですが、NPOにはそんなのは関係ないです。

社会問題を解決するためにやっているんだから、前例があるわけでなく、予定なんか立てられるはずもない、とりあえずやるしかない、なので、何もわからなかった時の取り決めとか手順とか、議事録で書かれている過去の決定なんでどうでもよくて、これまでやってみて、見えてきてわかってきたことから判断しておかしいと思ったら、それまでの経緯とか一貫性とか無視しておかしいと言うし、変えさせるわけです。

NPOはこうしたわからないことでも、とりあえずやりはじめて、見えてきたもので判断し行動し続けることにコミットしているのです。

それがわかってから、スケジュールをつくったりWBSをつくったり、求められていることは一応やりますが、別にそれを反故されても、なんとも思わないようになりました。

でも、作業者の視点では、とてもやりにくいですよね。いくらやっても終盤にひっくりかえされたり、こちら側に求めることは厳しいのに、自分の作業になると甘くなるわけですから。こうしたモヤモヤを抱えていて働いていたらノイローゼになります。

ノイローゼになりたくないので、私は、こうした環境下で業務委託でお仕事をしているのは、自分の市民活動の一環だという思いで団体さんに向き合っています。つまり、お金をもらっている部分もありますが、ボランティアの部分もあるということです。ボランティアは、参加するのも自由、去るのも自由な主体的な活動です。個人にボランティアを継続してもらうには、団体側のはたらきかけも必要で、ある程度の尊敬や配慮、ビジョンのすり合わせなどがないと継続できません。

なので、ここを理解せず、契約しているんだからやれよとか、こちらからの問いかけを平気で無視したり、不確実の中で作業をしている職員をののしったり、バカ扱いするような団体さんには、ボランティアする気が失せます。

気が失せてまでやりたくはないので、そのモヤモヤを感じたら、その業務委託を終了させて頂くことにしています。参加すること、委託契約を継続することで団体への共感を表しているともいえます。共感できなくなったから去る。ただそれだけです。

業務委託というと、団体の手足になった感じがしますが、市民活動でもあると認識してもらえると、パートナーになれる気がします。

今回は、NPOがコミットしているところはどこかが見えると、怒らなくてすむよというお話でした。

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