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【ゲーム】Radio the Universeという怪異【インディー】

これ

Radio the Universeとは、退廃、混沌、廃墟、アングラ、オカルト、ホラー、サイケ、ノイズ、サイバーパンク、90'、オールドスクールウェブ……それらを内包したアクションRPGだ。

どんなゲームか?

平たくいうと「超気味が悪いゼルダ(トラフォや夢をみる島)」見下ろし視点で、剣と銃を使い分けてときには戦いときにはパズルを解く。

アクションはスキルツリー解放によりカスタマイズでき、すでに体験版の時点でビルドの幅を2、3パターンほど確認できる。

現在SteamNEXTフェスにおいて体験版が配信中。プレイ時間はだいたい50~60分ほどで序盤のボスまでたどり着けてけっこうボリュームある。

とまあここまでは普通の話。

重要なのはこのゲームを形作っている世界観とビジュアル、そして何よりすこし奇妙な歴史で、正直いってこの記事もそれを語りたいために書いた。

このゲームが放つ重力を感じてもらうためには、歴史やぼくがこのゲームを見つけて今日まで追ってきた流れもふくめて知ってもらう必要があると判断した。

なのでこれより先はそうした場外の話も混ぜた内容となる。ゲームだけに興味がある人はこの先は無視していいです。


このゲームのすこし奇妙な歴史

開発期間10年超え

ぼくがこのゲームと出会ったのは2020年頃で、なにかの動画で見たのが最初だが異様なビジュアルに心を打たれすぐさまSteamでウィッシュリスト登録をした。

その後Steamの製品ページにおいてリリース日が”2020 Winter”と表記された。当時はすぐ遊べると思ってかなり喜んだが、10月、11月、12月、そして2021年になってもリリースの兆しはなかった。

気がつけばリリース日は未定に改められた。時期を考えてみると色々と事情があったことが伺えるが、それでも残念だったのは間違いない。

ぼくは我慢できなかったのでゲームの情報を追いかけて開発者のTwitteアカウントとYoutubeチャンネルを発見した。

開発者のYoutubeチャンネルを覗くとゲームのビルド動画が公開されていた。驚くべきことに最初期の動画は9年前に投稿されたものだった。

(当時で9年前なので、現在2023年で11年前となる。実際にその動画の投稿日は2012/02/24であると確認できる)

どうやらこのゲームは長大な開発期間を得ている。インディーゲーは開発期間の長期化が珍しくないとはいえ、11年ものはさすがに少数だ。

また、この開発期間の長さは開発者およびゲーム関係者も承知しているようで、ゲームメディアのAutomatonにてこんな記事が書かれたりもした。

それからもぼくはいちおうこのゲームを頭の片隅に置いていたが、Twitterの更新は1年に1回あるかないかで、Youtubeチャンネルは音沙汰がなく、発売するのかさえ不安視される日々が続いた。

この日々はゲーム自体の怪しい世界観やビジュアルもあいまって、自分の中に独特の印象を練り上げていった。

2023年の2月に転機は訪れた。SteamNEXTフェスにともない製品ページにて体験版が配信されたのだ。

体験版に触れたとき、ぼくはこのゲームを忘れずにいたことを心の底から嬉しく思った。

世界観とビジュアル

ぼくがこのゲームに執着するようになった一番の理由は、やはり世界観とビジュアルに尽きる。

Radio the Universeの世界観を説明するのは難しい。

一見するとサイバーパンクとポストアポカリプスの混合だが、ノスタルジックなダウンタウンや工業地帯の要素も加えられている。さらにオカルト的・サイケデリック的な構造物や概念まで見受けられる。

開発者の国籍は知らないが、この世界観はおそらくアメリカの街並みや光景への哀愁があるのだと思う。The Backroomsというコンテンツが流行っているが、根底に流れる感情はそれに類するものかもしれない。

また他にはギーグ文化面でのノスタルジーも感じ取れる。トレイラーや体験版を見てもらうと分かるが、随所に挟まれる意味深な、オカルトや宗教を想像させるアイコンたちのことだ。

90'のインターネット黎明期への懐古もビジュアルに感じ取れる。

こちらはことさら強烈で、ゲームのUIレベルで古臭さとアングラ感にこだわりが見られる。あの昔懐かしいダイヤルアップ接続音を真似たような効果音が使われていたりする。

正直なところUIが見づらくテキストの可読性は低いが、この不親切さは間違いなくゲームの味わいのひとつだ。

(一応言っておくとこのインターネット黎明期的アングラ感の再現は、最近は至る所でリバイバル気味。このゲームに限ったものではない。ある意味では正しく流行に沿ったゲームといえる)

それにしてもこのゲームを支配しているアングラ感の正体は掴みどころがない。強いて挙げるならLainが近いか。特に英語圏のLain文化はオカルトやサイケと強く結びついて、同じ匂いがする。

という具合に、このゲームを形作る世界観やビジュアルはとにかく不気味でサイケデリックで混沌としている。

オカルトやネットワークのアングラ面、その原液をゲームそのものに成形できたとしたら、それでいてエモい雰囲気でオブラートに包むことができたとしたら、ちょうどRadio the Universeになるのかもしれない。

(などと言いつつ、やっぱりぼくは作者の素性を知らないので、したり顔で書いてきたことはすべてズレている可能性があると留意されたし)

また、体験版を触った限りでは音の面でも評価したい。

まずBGMはノイズミュージック・ダークアンビエント系で、ゲーム音楽として聴ける範囲ではありつつ割りと容赦がないライン。サイレントヒル1作目のサントラを聴ける人には好物かも。

効果音にもこだわりが感じ取れる。この手の2D型見下ろしゲームでは珍しく足音に種類があるのがよい例か。鉄板のうえを歩くときと木板のうえを歩くときとで音が違うのだ。

とりあえず雰囲気が伝わるトレイラーを貼っておく(現時点の最新トレイラーでさえ3年前なのだから本当に長かった)


締めに入る。

気味の悪い世界観とビジュアル。ゲームに出会ってから数年も待たされたこと、ゲーム自体が11年もののサクラダ・ファミリアだったこと。

それら自他と内外の情報が絡み合ったときこのゲームは単なるゲーム以上の情報量を表したように思える。

見かけ上のアングラ感が、本当に肌で感じ取れる実在のアングラへと受肉したわけだ。ゲームの形をした怪異あるいはSCPに遭遇したとでも言おうか?そんな奇妙な感覚を数年間味わい続けたのだ。

この体験ができた(まだ続いている)ことに、"2020 Winter"から発売日が未定に変わったことに、今では感謝している。

11年前のKickstarter時代から追いかけている人はどんな感情を抱いているのだろうか?もはや想像すらできない。

余談だが、さすが11年も開発が続いているだけあってゲーム内のグラフィックやUIは何度も変更が行われている。Youtubeチャンネルのビルド動画を見比べてもらうとよく分かる。

ビジュアル面の変遷を見たうえで体験版を触ってみると、これまた感慨深い。

早く製品版を遊びたい。それに尽きる。

改めて製品ページ紹介


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