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【AI要約】パンの微生物変敗と制御

パンの微生物変敗と制御といった論説を、AIにより自動要約を行った。
また、専門家によるチェック済です。

1.パンの微生物変敗

パンは容易に微生物変敗を起こしやすい食品である。

変敗の種類は色素生成とロープ現象であり、原因微生物はカビと細菌である。
パンのクラストの水分は32~35%、クラムの水分は40~45%の範囲であり、
風味生成の前駆物質としてアルコール、有機酸、エステル、カルボニル化合物がある。

乳酸菌、大腸菌群による酸発酵が過度に進むと酸度の多い生地となり、不快な風味を生成する。
また、タンパク質分解酵素を産生する細菌が増殖することで、ガス保持力が低下し、粘性ある生地を生み出す可能性がある。

特に、重要な変敗はカビであり、焼き上げ後の冷却工程以降に空中落下菌や器具付着菌により二次汚染される可能性がある。

パンの微生物変敗を防ぐには、パンの水分含量を30~40%の範囲に収め、パンを焼成する前後の工程における衛生管理を徹底して行う必要がある。


2.パンの微生物変敗に関与する細菌

パンの細菌による変敗は主としてBacillus属によるものが多い。
これは極めて高い耐熱性を持ち、220℃の焼成で表皮温度が155℃、中心部は96℃までに達し、10分間維持されるものの、焼成後にパン内部に残存し、ロープ現象を起こすことがある。
原因細菌としてB.subtilis, B.pumilus, B.megaterium, P.macerans, P.polymyxa, B.licheniformis, B.coagulans, B.ceresが挙げられており、高温多湿条件下に一定菌数以上の細菌が存在したり、添加物がなかった場合に起こる可能性がある。

製パン工場ではBacillus属細菌の汚染の少ない原料の使用、添加物に加え乳酸菌、大腸菌の発酵を効率的に行ったりパンの温度や貯蔵条件に注意するなどの対策が必要である。

pH4.0ではB.subtilis、G.stearothermophilus、B.licheniformis、
pH4.5ではP.macerans、P.polymyxa
が増殖可能であり、水分が9%から14%に増加する。

またパンや洋生菓子のソフト化志向に伴い、クラストの焼きが甘くなり微生物変敗が起こり易くなっている。

酵母、細菌、バクテリアを用いたパンの発酵は、酵母発酵によってアルコール、有機酸、エステル、カルボニル化合物を生成し、パン風味を作り出す役割がある。
また、耐熱性の高い特定のバクテリア、特にロープ菌が芽胞を作り、パンの焙焼後も存在し続けるが、アルコール、プロピオン酸塩、パンの焙炉方法、パンの焼却後の冷却などの一定の条件が揃わない限り、ロープ菌による汚染は起こらない。
また、焼却中に糖を生成しないため、パン内部温度は100℃を越えず、芽胞の死滅しない状況が可能になる。

しかし、まれに芽胞の発芽し増殖しロープ現象が起こり、パンが異臭や変色をおこし、ロープや粘りを発生させるということがありうる。


3.パンの微生物変敗に関与するカビ

エタノール系の殺菌剤を多用してきたことにより、耐性の強いカビが優先的に増殖してきており、全くエタノールに殺菌効果のないカビが発生することがある。
そのため、他のカビの生育も抑制するために、エタノールを殺菌に用いないパンの製造で解決策として期待されている。

パン表面に生育するカビは焼成後に付着するもので、汚染源としては空気中の浮遊するカビなどの微生物がある。
そのため、工場での製造・処理時に殺菌剤としてエタノール系の殺菌剤が使われてきたが、近年はアルコールによる殺菌効果のないカビや酵母が出現して大きな問題となっている

カビとしては赤褐色からオレンジ色の菌糸を密生させる耐熱性が弱いもので、82℃、10分、70℃、10分で死滅する。
食パンを冷却する工程でも二次汚染が受ける。
冷却後でも丸ごと食パンとスライス食パンでは発生の差異があり、水分活性の差異も関係している。
なお、汚染の原因としては従業員の手指やスライサーなども挙げられる。


4.パン工場のオゾンとエチルアルコールを併用殺菌

オゾンは食品添加物として安全であることが2001年6月に認定され、その後日本国内での食品への使用も拡大している。
オゾンを殺菌剤として活用することで、エチルアルコールに長期間大量に使用してきたが、それにより資化性菌及び耐性菌の出現が認められていた。

そこで、大きく二つの方法が採用されている。

1つ目は、オゾン水を使用して後に比較的低濃度のエチルアルコール(10~60%)で殺菌する方法であり、食品原材料や環境処理に効果がある。
オゾン水によりグラム陰性菌である大腸菌等が死滅し、有機物が洗浄される上、残留するエチルアルコールにより殺菌力が持続される。

食パン工場の空中浮遊カビの測定結果によると、各工程から検出される菌数や種類は異なっているが、Cladosporiumが最も多く検出された。
生地の中でもCladosporiumが最も多かったことも示された。
検討の結果、オゾン水濃度15ppmで1~10分間処理を行うことで、Cladosporiumを完全に死滅させることができた。

2つ目は、エチルアルコール濃度60~80%にて殺菌を行った後、オゾン水でアルコールを除去した上で、残存する大腸菌等のグラム陰性菌を殺菌する方法である。

以上の結果から、食パン工場におけるカビの微生物管理の方法は、菌の構成や工場の環境微生物等に応じて使い分けられる。

食パン工場におけるカビの微生物管理の方法として、オゾン水での15ppmで1~10分間処理、60~80%のエチルアルコール濃度で殺菌を行わせた後、オゾン水でアルコール臭を洗浄除去し残存する大腸菌等のグラム陰性菌を殺菌する方法があることが示された。
また、検討の結果、Cladosporiumの菌株を15ppmで1~10分間処理を行うことで完全に死滅させることができることも明らかとなった。
空中浮遊カビの検出結果を踏まえ、菌の構成や工場の環境微生物等に応じて使い分けられることが分かった。


1) 内藤茂三、関啓数、水野隆二:食パンから分離したエタノール耐性カビの生育性状と汚染源、日本食品微生物学会誌、17,181-197(2000)
2) 内藤茂三:製パン工場のカビ汚染と食パンのカビ変敗、愛知学泉大学・短期大学紀要 45,33-39(2010)
3) 内藤茂三:『改定増補食品の変敗微生物―その原因菌と制御―』、幸書房(2017)
4) 内藤茂三:『増補食品とオゾンの科学―微生物的原因とその制御』、建帛社(2018)

アサマNEWSパートナー 2018-11 No.187



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