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【「やる気」と「不安」のはざまで -大人でも不安を乗り越えるのは大変です-】

Stayhomeで学校の課題を見守っていると、いろいろディテールが気になってきますね。

今どうしても気になるのが「鉛筆の持ち方」。
次男の鉛筆の持ち方が個性的で、それが原因でどうも字が乱雑で細かく書けないと思われるのです。なぜか、鉛筆を持つ手の手首が浮いていて、手首が若干外側向きなのです。見るからに書きづらそうなのですが、本人はしっくりくるとのことで直す気がありません。

実は長男とも鉛筆の持ち方では一悶着あり、個人的に国語の先生についてみたり、習字を習ったりしました。が、効果はなく、結局最後は懸賞金というにんじんを目の前にぶら下げたところ、ようやくやる気スイッチが入り、あっという間に直りました。その効果には、夫も私も唖然とした次第です。

つい先日、学校再開のお知らせが来たところで、もうこれは本気出して直さないと間に合わないと、私の中に焦りが出てきました。いつもなら見守ろうとぐっと堪えるところですが、1年間の外国生活もあり、字が早く書けないハンデは大きいはずと今回ばかりは見過ごせません。

やはり、奥の手しかないか……と昨日、次男に「手首を下ろして書けるようになったら、お小遣いが出るというのはどうかな?」と持ちかけてみました。すると、かなり乗り気になって。「お兄ちゃんの時に5,000円だったから、同じ5,000円ね。」というと、もう5,000円で何を買おうかなと、算段が始まっています。

でも、次男の性格上、一人での挑戦はなかなか続かないと思われるので、長男にも「食事中に口を閉じて物を噛む」というお題をを与えて報奨金も同額にし、一緒に頑張るイベントにしました。期限は1年間。その間に、連続10日以上お題をクリアーできたら報奨金があたるというルールです。

そして、報奨金の協力を得ようと夫に事の次第を話すと、ちょっといたずら心を出してきました。「早くに達成したら金額が高くしよう。今月中なら1万円、そこから千円ずつ減っていく、というのはどうか?。」

金額が高くなったことに子どもたちはさらに目を輝かしています。
「やる、やる!」と。そして次男、「これから10日間、頑張って手首下ろせばいいんでしょ!」

その言葉を聞いて夫が反応しました。
「10日間だけ出来ればいいんじゃないんだよ。もしその後元に戻っていたら、報奨金は返金してもらうからなっ!」

すると「え〜っ!!!返金があるの〜っ? そんなのヤダ〜っ。」と子どもたちは猛反対。夫は「高いお金なんだぞ。ちゃんと直らなきゃ意味ないだろう」と反論します。

それでも長男は闘志を持ち続けましたが、次男は違いました。「そんなのやだ、返金しなきゃいけないのやだ。」と気落ちしてしまいました。お昼ご飯も喉を通らなくなってしまい、半べそになり。

なんとか昼食を終えて、長男と話しているうちにまたやる気が出てきて「よし!10日間頑張って1万円もらうぞ!」と威勢の良い言葉も出ました。ところが、その後、「でも、また戻っちゃったら返金しなきゃいけないんでしょ。本当に直せるかなぁ。直せなかったらどうしよう。」とどんどん弱気になります。そして、ついに安楽椅子にうずくまって泣き出してしまいました。

その不安になる気持ち、私も痛いほどわかりました。本当は出来るようになることを励ますための報奨金だったのに、「出来なかったら返金」ということが「ペナルティ」になってしまったのです。そのペナルティが大きな不安となって先に進めなくなってしまったのです。世の中には、リスクがあっても大きな獲物を狙いに行けるタイプの人がいますが、次男はそういうタイプではなかったのですね。

しかも、一度、大金が入ると夢を見てからの失望は大きいものです。よく考えれば、身銭を切るペナルティではないので、それほどに悲しむ必要も不安になる必要もないはずなのです。でも、もらえるかもという期待とどうしても欲しいという気持ちが先立って、もらえても返さなければならないかもという不安が拭えないのです。

そこで、再び話を戻して、子どもたちに2つのコースを提示しました。
一つは、パパのコース。早ければ早いほど報奨金が高いけど、出来なかったら返金。そしてそこからまたやり直し。
もう一つはママのコース。出来るようになったら5,000円という定額の報奨金。返金ペナルティはなし。だけど、ずっと直したままでいてくださいとお願い。
報奨金に値するかどうかの判断は、どちらのコースでも10日間続けてお題をクリアー出来たらという条件です。

すると長男、「ママのコースにしようっと。」と方針変更しました。次男は答えを出さずにグズグズまだご機嫌斜めです。「ま、気分が乗ったらこの挑戦に参加すれば良いから。ママは、持ち方を直した方が字がきれいに早く書けるようになって、学校の授業で困ることがないと思うけどね」と言って様子を見ることにしました。

夕食の準備をしていると、次男が寄ってきました。まだ少し本調子ではありません。そこで、
「一日だけ頑張ってみる?そして、出来そうだと思ったらもう一日頑張ってみればいいんじゃない?何も、『やらなきゃいけない』ものじゃないんだから。やりたくなったらやればいいんだから。」と伝えてみると、
「明日、やってみようかな?」
と少し前向きな言葉が出てきました。なんだか良い感触です。

夕食後、長男といつも通りに遊んで、機嫌もすっかり直りました。寝る前には「明日からやってみる」とやる気モードになっていました。お昼の不安をしっかりと克服したようです。

そして、今日。宿題が終わると次男が駆け寄ってきて「ちゃんと手首下ろして書けたよ。」と報告がありました。明日も続けるとのこと。

世の中に出たら、不意に襲ってくる不安など山ほど現れますが、自分なりに克服して前向きに進める方法を身につけて欲しいと思っています。

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